この記事では、海老芋を長期にわたってを支える土作りについて説明します。(海老芋02)

「1か月前」で土が良くなりますか?
「1か月前までに土作り資材をすき込んで土を良くしておきましょう」
たいていのマニュアルにはこう書かれています。でも、1か月前におこなって定植に間に合っているのでしょうか。
1か月で、堆肥から出る腐植が団粒構造を作れるでしょうか、まとまった雨が降って石灰を溶かしpHを矯正できるでしょうか。難しいと思います。
しかし、この文で大切なところは、1か月前ではなく「1か月前までに」と書かれていることです。 京野菜の栽培基準となる「京都こだわり農法」では、「1か月前まで」の時期を「年内」と「1か月前」の2つに分け、それぞれ異なる作業を指示しています。
今回の記事では、この「まで」が示す2つの土作りについて紹介します。
*参考「京都こだわり農法の定義」JA全農京都
年内に稲わらをすき込み
「年内」というのは、稲刈り後の「稲わらすき込み」のことになります。海老芋の圃場は前の年に水田だったことが多いはずですから、コンバインが落としていった稲わらが散らばっています。
夏の海老芋には、うね間潅水は必須なので水路に隣接する水田は良い候補地になります。また、水田は湛水状態にしておくことが多いため、連作回避期間を短縮することもできるからです。
この作業の目的は、腐植供給というより「物理性の改善」にあります。ストローのような稲わらが土中に入ることで上下左右のトンネルが開通し「水分や空気が広く深くまで行き来できる」ようになるからです。
2週間前に完熟堆肥・石灰資材・鶏糞を施用
「1か月前」というのは、「完熟堆肥」と「石灰資材」の施用のことになります。ただし「間にあうのか」と聞かれれば「間にあいません、でも生育中には間にあいます」が答えです。
海老芋の栽培期間は半年にもおよびますから「その前半に効いてくれば良し」なわけです。つまり「物理性の改善」は期待せず「化学性の改善」を目的とします。
というわけで「1か月」にそれほどこだわる必要はなく、先進地では「1か月~2週間前」と幅をもたせています。これは、2週間前なら前回紹介した「鶏糞」施用と組み合わせることが可能となり省力化できるからです。
完熟堆肥で保肥力向上
「完熟堆肥」からは「腐植」という良い有機物が出てくるので、肥料を土中につなぎとめておく「保肥力」を高めることができます。
夏場に連日うね間潅水を行っても追肥が流亡しにくくなるので、肥料切れで葉が黄化することもなくなり土づくりの効果を実感できます。
石灰資材でカルシウム供給
「石灰資材」は「pH矯正」のイメージが強いですが、海老芋では「カルシウム供給」が第一の目的となります。海老芋は弱酸性土壌で育ちますから、たいていの土壌では中性寄りに矯正する必要はありません。
しかし、カルシウムが欠乏すると「芽つぶれ症」が発生し大変なことになります。「芽つぶれ症」とは孫芋などの芽が痛み、芋の先端が陥没したようになってしまう生理障害です。これが発生すると出荷すると叩かれ、残しても芽がなく種芋にならないので直売所にまわすしかなくなります。
追加でカルシウム補給しようとしても追肥で対応するのは困難なので、土作りの時にたっぷりほどこしておくことが大切なわけです。
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まとめ
土作りは「年内の稲わらすき込み」と「定植2週間前の完熟堆肥・石灰資材・鶏糞施用」の2回実施がベストです。稲わらすき込みができない時は、完熟堆肥を前倒ししてかわりにすき込みましょう。
Is soil preparation sufficient? Compost may not be necessary. (Ebiimo 02)
The best approach to soil preparation involves two stages: “incorporating rice straw into the soil within the year” and “applying fully matured compost, lime materials, and chicken manure two weeks before planting.”
If rice straw incorporation is not possible, advance the application of fully matured compost as a substitute.