この記事では、「万願寺とうがらし」のハウス栽培で取り組むべき高温対策について紹介します。第3回は、ビニールマルチによるうね内地温の上昇を防ぐ方法について紹介します。(万願寺とうがらし21)
マルチ被覆のかん違い
うねを「ビニールマルチ」で被覆すると、定植前から地温が高まり活着が促進されます。また、マルチ内に潅水チューブを設置することで、好適な土壌水分も維持できます。「ビニールマルチ」はとても省力で効果的な栽培技術とです。
しかし、「稲わらマルチ」に比べて良くなったと思っている方を時々見かけますが、それは間違いです。「ビニールマルチ」は「稲わらマルチ」の進化形と考えてしまうとミスリードにつながります。正しくは「稲わらマルチはビニールマルチの追加オプション」です。
「ビニールマルチ」だけで夏を迎えてしまうとどうなるでしょう。うねの中は乾きにくいかもしれませんが、もう地温を上げたい春ではありません。
夏は地温を下げたいのに、マルチしかも黒マルチでうねを密封しているので「地温は爆上がり」してしまいます。こんな状況で根がうまく働くわけがありません。
では、これに対する高温対策はあるのでしょうか。あります。それが「稲わらマルチ」です。
稲わら被覆に変わる技術は
「稲わらマルチ」の特徴は、光を反射しやすく、ストロー状で断熱効果が高いため「地温を上げにくい」です。そのため春は地温が上がる「ビニールマルチ」で被覆しますが、夏になれば地温を下げなければいけないので出番がやってきます。
稲わらの使用方法は「ビニールマルチの上に稲わらを置いていく」です。うねの中が高温になりにくいよう、「ビニールマルチ」を覆ってしまおうというわけです。
この方法は昔から「京なす」では定番で行われていたので、当然「万願寺とうがらし」でも推奨されていたはずなのですが最近しない方が増えているようです。
では「わかった」といってもらえれば問題解決かというと、話はそう簡単ではありません。現在の稲刈りは自脱型コンバインで行われるので「特に指定しないと稲わらが細断されてしまう」ため「稲わらの確保が困難」となっています。稲わらがないのに「稲わらマルチ」はできません。
では、「黒マルチ」を「反射マルチ」に変えればいいのかというと、今度は定植後の地温が上がらなくなってしまいます。他の方法が必要です。
さらに、この困った状況を悪化させていることがあります。それは今はやりの栽培技術です。慣行の「V字整枝」なら「葉の茂りでうねに影ができる」ので夏秋栽培に有利なのですが、いま人気なのは「株元まで光が届きやすい」ので低温期に有利な「平面整枝」です。
こんな栽培方法では「うねに直射日光が降り注ぐ」ので地温対策は必須でしょう。稲わらがないとか言っている場合ではないです。
まずするべきは「稲わらを探す」ではなく「マルチをめくる」です。日光が直接地温を高めているのはしょうがないとしても、マルチ内にこもった熱も地温を高めています。
この熱を逃がし、再びこもらせないようにするには被覆をやめればよいのです。通路側からビニールを潅水チューブの所までめくりあげ「かすがい型のマルチ押さえ」でとめましょう。潅水チューブの上に被せることで、潅水時に水が飛びあがることを防げます。
なお昔のていねいな農家は「マルチを株元までめくった後、うね全体に稲わらを敷きつめる」ところまで行いましたが、稲わらがないのではできませんね。
もう一つ、お金に余裕があればですが、よい資材があります。それは「日光が当たっても地温を上げにくいマルチ」の導入です。
まだ舞鶴市だけで栽培されていた頃ですが、「炎天下のハウスの中」で講習会がありました。やってきた農家は大騒ぎでしたが、暴動も起きず講習会は無事行われました。感想を聞くと「外よりいいね」という方も。
そのハウスは、天面に「遮熱ネット」うねと通路に「遮熱マルチ」が使用されていたからです。
まあ高価なのでお勧めはしにくいですが、最近は高温対策の補助金もできていますから「耐久性が高い資材」なら導入を考えてみることもありかと思います。
*参考:プロ向け遮光ネット「ダイオクールホワイト」(イノベックス)
かぶせ茶の資材として有名な「ダイオネット」のメーカーです。
*参考:デュポンタイベック野菜用マルチ(旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社)
農業用環境コントロールシートの定番で、万願寺とうがらしでも推奨されている資材です。
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まとめ
ビニールマルチは初期生育には有効ですが、夏期には地温を上昇させ生育を阻害してしまいます。これを防ぐには、マルチをめくりあげ、うねを露出させることが効果的です。資金に余裕があれば「遮熱マルチ」の導入を検討しましょう。
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