この記事では、「万願寺とうがらし」のハウス栽培で取り組むべき高温対策について紹介します。第4回は、うねの土壌水分を急速満タンにする方法と、果実の日焼けを防ぐ超簡単な方法について紹介します。(万願寺とうがらし22)
うねを濡らすには水をかければいいじゃないか
「万願寺とうがらし」などの果菜類を作るコツは「乾いた圃場で栽培する」ことです。水はいらないの?という方がいるかもしれませんが、もちろん水は必要です。
でも、京野菜を作ろうというのに潅水に不自由な圃場は選ばないはずですから、潅水しやすいことは前提条件です。
なので、言いかえると「潅水により生育をコントロールする」となります。水を与えて大きくしたり、水をひかえて味を良くしたりするわけです。
ところが露地栽培では、降雨により水分コントロールが破綻し過湿状態が発生しやすくなります。そこで必須な圃場づくり技術が「排水対策」となるわけです。暦に書いてある、うねの形を背の高いカマボコ型にしたり、排水経路の整備などがこれに当たります。
しかし、いくら排水を良くしても梅雨などで降雨が続くと「うねが常時潅水状態」となり、根に湿害が発生してしまいます。
そこで登場したのが「うねのマルチ被覆」なのです。うねをビニールで覆ってしまえば、雨に当たらず過湿を回避しやすくなりますから。
というわけで、「うねのマルチ被覆」は、うねの保湿ではなく乾燥が目的の技術なのです。
この「乾かして作る」をさらに進めたのが「ハウス栽培」です。なにしろハウス内には雨が降りませんし、マルチ内には潅水チューブを入れていますから、思いどおりの水分コントロールができます。
ところが、青枯れ症や青枯れ病でもないのに、潅水していても時々しおれた株があらわれてきます。これは、潅水チューブの穴が詰まった、潅水間隔を開けすぎた等による「うねの乾燥が原因」というのはよくあることです。
こんな時は、マルチで覆われているため株がしおれるまで気が付かないことが多く、緊急に潅水をしなければなりません。
しかし、もっと危険な原因があります。それは「うねの中に水路ができてしまう」ことです。こうなってしまうと、いくら潅水チューブで水をやっても、水はすぐに通路へ排水されてしまうため、通路がびしゃびしゃなのにうねは乾いたまま。
これでは株のしおれは止まりません。ではどうすればいいのかというと、潅水チューブは使わず「マルチをめくって、うねに直接散水」しましょう。こうすれば「うね全体をたっぷり湿らせる」ことができます。ついでに地温も下がりますから一石二鳥ですね。
日焼けを防ぐには光を遮ればいいじゃないか
困ったことに、最近は「平面整枝」が広まってきています。さらに、この整枝法に併せて「強剪定」と「主枝切り戻し」も推奨されつつあります。
「強剪定」は「側枝3節目の着果を確認したら3節残して摘心、収穫の終わった側枝は分枝より1節(1葉)残して切り戻す」です。「主枝切り戻し」は「主枝3本のうち2本を70cmの高さで切り新しく出た枝を主枝にする」です。
「葉の枚数を最適化する」ことや「徒長をリセットする」ためのようですが、夏にこんなことをしてしまうと、葉が少なくなり果実に日光が当たりやすくなるので「日焼け果」激増です。また、葉からの蒸散量が減り「尻腐れ果」も爆増です。
この状況の対処方法はただ一つ「剪定しない、切り戻さない」です。弱性台木に接いでいるので過繁茂なんてしませんし、徒長したのは平面整枝のせいなので、この2つの管理作業はやめてもかまいません。
では、やめてしまうとどうなるのでしょうか。着果後の果実はだんだん重くなるので側枝ごと垂れてきます。しかし葉は太陽に向かって広がるので「側枝の上部は葉が茂り、下部では果実が肥大する」ことになり「果実に日傘ができる」わけです。これなら直射日光が当たり難く「日焼け果」が減少します。
また、葉の枚数が多くなるので葉からの蒸散量も増えますから、カルシウムの移動量も増え「尻腐れ果」が減少します。楽したのに一石二鳥ですね。
なお、尻腐れ果対策ならカルシウム剤の葉面散布があるじゃないかと言う方もいますが、それ本気ですか?夏からの散布では手遅れで効果がありませんよ。(やるなら6月からでしょうが経費がとんでもないことに)
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まとめ
うねが渇いてしまうと、潅水チューブでは水分を復活させることは困難です。こんな時は、マルチをめくり、うねに直接散水し、一気に水分を回復させましょう。また、夏の「剪定」と「切り戻し」は、果実の「日焼け」と「尻腐れ」を促進するため、行わないようにしましょう。
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