海老芋

京野菜【海老芋の栽培方法】秀・4Lを作るための夏期管理

この記事では、高単価な海老芋の規格(秀・4L)を作るために必要な、7つの夏期管理について説明します。(海老芋23)

 京都府では今年も海老芋栽培に適した天候となり、3年連続で高単収が見込めます。夏の管理作業を励行し、良い海老芋を作ってください。

『健』熱中症に気をつけて

 夏期の栽培管理は、海老芋栽培の中でも負荷が高い作業になりますから、体調を良好に保つことが大切です。中でも熱中症対策は最も注意をはらってください。

●高温期の作業となるので熱中症対策を怠らないでください。
●水筒を携行し小まめに水分補給を行いましょう。
 塩分補給は飴よりラムネの方が速効性を期待できます。
●体調の悪化を感じたらすぐに日陰で休憩しましょう。
 黒球式熱中症指数計を携帯するとより安全です。

『土』土寄せは7月で終了

 芋は空中にはできません。芋を大きくするには土で覆われている必要があります。

●8月はえびいもの発達に最適な気象条件です。
 この機を逃さないため7月に土寄せを終了しておきましょう。
●9月からは、孫芋・ひ孫芋(こえびちゃん)を成長させます。
 そのためには、子芋(海老芋)を9月までに十分肥大させておく必要があります。

『水』積極的にうね間潅水

 海老芋栽培において圃場乾燥は厳禁です。特に夏期は減収に直結する様々なリスクが高まってしまうので、一時でも乾燥させないよう積極的な潅水が必須となります。

●潅水方法は「うね間潅水」です。
 これは栽培期間をとおして共通の潅水方法です。
●梅雨が明けると真夏日が続くと予想されるため、潅水頻度は毎日実施を基本とします。
 毎日が無理でも、通路まで乾かしてしまうのは厳禁です。通路にひび割れは論外です。
夕方に潅水して一晩放置し、朝にまだたまっていたら排水します。
 日中に湛水するとお湯になり、根が煮えてしまいます。
●潅水量は「うねの法面に湿りラインが付く」程度でかまいません。
 ただし、回数を多く(できれば毎日)するのが生育を止めないコツです。
●潅水間隔を空けすぎると、「葉枯れ」により生育が停止します。
 さらに、孫芋に「芽つぶれ症(Ca欠乏)」が発生しやすくなります。
●ハダニは梅雨に発生を始めており、乾燥状態が続くと大量に増殖します。
 うね間潅水により圃場湿度を高め、増殖リスクを下げましょう。

『根』管理機は入れない

 海老芋はたくさん水を吸いますが、これは根の吸水力が高いのではなく、根が広く張っているからです。質ではなく量です。
 生育前期の色々な管理作業の多くは、根を広く張らせることを目的としています。これにより、真夏の強日射を受け止めることができ、地上部の旺盛な生育につなげることができます。(猛暑・残暑がが豊作につながる理由です)

●根が通路まで伸びてきているので、8月からは管理機を入れないでください。
 断根すると水や肥料が吸えません。
●管理機でもダメなので、トラクターは論外です。
●土寄せ・追肥は7月末までに終えておきましょう。
●臨時の追肥が必要な時は、根にダメージを与えない方法で行いましょう。

『肥』肥切れさせない

 8月に肥効が低下すると、葉の黄化などにより生育が停止するだけでなく、病害の発生にもつながります。そのため、良好な肥効が続くよう注意を怠らないでください。

●肥切れの兆候(葉色が薄い等)が見られたら、早急に化成肥料による臨時追肥を実施しましょう。
 化成肥料を通路に散布し、うね間潅水を行って溶かし、液肥として吸わせましょう。
 断根するので、管理機で肥料をすき込まないでください。
 降雨が期待できないため、うねの上や株元に肥料を散布しないでください。
●肥切れは子芋の肥大を抑制するだけでなく、汚斑病の発生を誘発し減収に直結します。
 海老芋は晩生なので、9月に激発すると芋の肥大が停止します。
 肥効の低下は圃場全体で発生するため、大きく減収してしまいます。

『光』摘葉で子芋に光を

 真夏の太陽を浴びせて生育を旺盛にするのは、親ではなく子です。土寄せが終わった時点では、子芋の地上部は親芋の日陰になってますから、親芋の葉を取り除く必要があります。

●土寄せ後に子芋を肥大させるため、親芋の葉を「摘葉」し子芋の葉に光を当てましょう。
●「摘葉」は土寄せ後から開始します。
 最初の10日~2週間は2枚、以後は0枚で管理し、9月上旬まで続けましょう。
●「摘葉」は、葉だけを切除し茎を残すことで風対策が期待できます。
 残した茎は、葉を失ったため自然に枯れます。
●「摘葉」で親芋は勢いが弱まり、さらに子芋の葉で日陰となり萎縮していきます。
 そのため、親茎の切除は必要ありません。
●8月に入っても子茎が発生しますが、親芋の衰えとともに萎縮するので放置してかまいません。
 いわゆる「芽ぞろえ」は必要ありません。

『防』発生前提で予防防除

 8月は特に虫害が盛んになるので、増える前の予防防除を心がけましょう。

「ハダニ」は梅雨に発生し、高温乾燥が続くと被害が拡大します。
 8月に増殖させないため、梅雨明けの予防防除が効果的です。
猛暑日が多いと「ハスモンヨトウの幼虫」が多発しやすくなります。
 1枚の葉に密集する初発段階で防除しましょう。株から圃場へ分散してしまうと厄介です。
「スズメガの幼虫」は捕殺しましょう。薬剤防除もできますがコスパが悪いです。
 スズメガの幼虫は大食漢なので、定期的に圃場内を巡回し早期発見に努めましょう。
「疫病」は涼しくなると再発します。
 この時は「軟腐病」が併発しやすいので、農薬選定に注意しましょう。
●孫芋(こえびちゃん)を順調に生育させるため、9月に入っても子芋の葉を健全に保ちましょう。
 「汚班病」は薬剤防除ではなく臨時追肥で防いでください。

まとめ

 大きく高品質な海老芋を作るためには、夏の栽培管理が大切です。中でも、次の7つの管理作業は必須のものです。
①熱中症に気をつけ健康に作業する。
②土寄せは7月末までに行っておく。
③積極的にうね間潅水を行う。
④8月からは圃場に管理機を入れない。
⑤肥料の効果を切らさない。
⑥「摘葉」により子芋の葉に光を当てる。
⑦害虫は予防防除により多発を防ぐ。

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Essential Summer Management Practices for Producing Large, High-Quality Ebi-imo Taro

To cultivate large and high-quality Ebi-imo taro, summer management is crucial. The following seven practices are essential:
1.Work safely and stay hydrated to prevent heatstroke. Protect your health during fieldwork in hot and humid conditions
2.Complete earthing-up by the end of July. This helps shape the tubers properly and prevents sun damage.
3.Actively irrigate between ridges. Maintain soil moisture and reduce heat stress on the roots.
4.Avoid using machinery in the field from August onward. Prevent root damage and soil compaction during the critical growth period.
5.Ensure continuous nutrient availability. Apply fertilizers appropriately to support tuber development without interruption.
6.Expose the leaves of the daughter tubers to sunlight through selective leaf pruning. Promote healthy growth by improving light penetration.
7.Prevent pest outbreaks through proactive control measures. Use preventive treatments to avoid damage from common pests.