京丹後市網野町の「丹後砂丘」で作られるサトイモは、高い品質が認められ高額で取引されています。その特徴は、砂地栽培だけで生まれるのではなく、特別な潅水方法がコツとなっています。(海の京都11)

「浜詰里芋」は日本一かな
京丹後市網野町の「丹後砂丘」で作られるサトイモは、高い品質が認められ高額(2000円/kg以上)で取引されています。
特に浜詰(はまづめ)地区のものが一番とされ、「浜詰里芋」の名称で東京へも出荷されています。
その美味しさは、きめ細かな質感、甘みを感じる旨さ、真っ白な仕上がり等の特徴が絶妙に合わさることで、一度食べたら忘れられないと評されています。
*参考:『砂丘里芋』 京都府産 Mサイズ 1kg ※冷蔵 政義(豊洲市場ドットコムブログ)
ただし、産地ができたのはそんなに昔ではなく、戦後の1954年になってからです。旧網野町(現京丹後市網野町)浜詰のYさんの父親が島根県へ視察に行った時、宍道湖近くで栽培されていたサトイモに感心し「うちでも作ってやろう、そうだ息子にやらせてみよう」と考えたのが最初と言われています。
その後栽培仲間が増えて6名となり、1971年頃には市場で高い評価が得られるようになったと言います。
その後は、高い評価を得たものの、圃場が砂丘に限定されること、さらに潅水設備が整っていること等がネックとなり「もうかるからもっと作ろう」とはならず、3名程度にまで減ってしまいました。
しかし最近になって、砂丘圃場を引き継いだ若手農家により少しづつ生産量が増えているようです。話を聞いてみると「大規模経営による雇用労力をうまく回すにはもってこい、なにしろ単価高いし」とのことでした。
砂地を活かした潅水方法がひみつ
その特徴は、砂地で栽培するだけで生まれるのではありません。排水の良い砂丘だからこそできる潅水方法が美味しさのひみつとなっています。
この潅水技術を開発したのが、京都府の研究機関・京都府府立農事試験場丹後支場です。この機関の砂丘試験地が旧網野町にあったため、サトイモづくりへの支援に乗り出しました。1956年のことです。
まず取り組んだのは好適品種の導入でした。当初は、自家採種していた在来系統でしたが、砂丘に合う品種を検討した結果「石川早生」が最も適しているとわかりました。
この「石川早生」は、現在最も一般的な極早生品種として知られています。
しかし、水をたくさん欲しがるサトイモを作るには、砂丘は水はけが良すぎて水を溜めた栽培ができません。その頃の水源は井戸水が主で、潅がい整備(俵野潅水工事)はやっと始まったばかりでした。
そこで、品種の次には、生育に影響しない程度に節水する技術の開発が行われました。今では当たり前に見かけるスプリンクラーの導入です。
スプリンクラーをむやみに稼働させるのではなく、その動作パターンをサトイモに最適化させるのがコツでした。
この支援技術により収量が安定化しましたが、砂丘の特性により乾湿のメリハリをつけたことで、驚いたことにとんでもなく品質も向上する結果になりました。
こうして、大阪万博(前の)の後くらいから「丹後には美味しいサトイモがあるぞ」との評判が聞かれるようになったのです。
<Sea of Kyoto>Amino-grown taro ranks among the highest nationwide
The taro cultivated in Amino Town, Kyotango City, within the famed Tango Sand Dunes, is recognized for its outstanding quality and commands high prices in the marketplace. Its distinctive character does not arise from sandy soil cultivation alone; rather, it is the result of a special irrigation method that plays a crucial role in enhancing both flavor and texture.

