この記事では、「万願寺甘とう」の名称ができるまでの動きを紹介します。

料亭からの支援
「見たことない大きさのトウガラシ」「トウガラシなのに全然辛くない」「シシトウと違って肉厚で甘くて美味しい」「京都の特別な野菜なんだって」
こんな感じで生鮮野菜としての売れ行きが伸びつつありました。特に「美味しい」と言ってもらえる方が増えているのがいい感じでした。
この頃、京都の料理屋などが集まる「京都料理芽生会」が「復活させよう京の伝統野菜!」をテーマにシンポジウムを開催するなど、京都の食文化を担う方々からの支援も始まりました。
またこの会では「京の伝統野菜」を「実際に使う食材」として見ていましたが、このとき京都府の研究機関がすべての「京の伝統野菜」を展示用に栽培していたので、現物を使用した実践的な勉強会が開催できました。
こうして、さまざまな伝統料理が復活したり新しい料理が生み出されました。
ここで「料亭は京野菜を使い続けていたのでは?」と思うかもしれませんが、戦後の農業変化により使いたくても供給ルートがほぼ全滅状態になったため、じつは「若手料理人は京野菜を触ったことがない」状況だったのです。
料亭からの苦情
このように「京野菜」復活の段階から「実際に食べることができた」ことは重要で、宣伝を行う時に「レシピとして京料理を活用」できたことで「京野菜は美味しいですよ」に大きな説得力が備わりました。
そして、この頃は「京の伝統野菜に準じるもの」というくくりがなかったため、異論もなく「万願寺とうがらし」も「京料理の食材の一つ」としてあつかわれることになりました。
ところが、ある料亭からクレームが出ているとの情報が入ってきました。「辛味果」については伝わっているはずです。いまさらでは困ります。
それで直接聞いてみると、クレームというより困ったことになったということでした。
それは
こんな大きなトウガラシは使ったことがないがとても美味しい
↓
このおいしさを味わう一番良い料理は素焼きだな一品料理として出そう
↓
困ったぞこんな大きなトウガラシに合う皿がない
つまり乗せる皿がないという悩みだったのです。皿を買ってくればいいじゃないかというのは料亭には当てはまりません。
「万願寺とうがらし」の素焼きに似合う皿を焼いてもらう必要があるため1枚200万円くらいだそうです。確かに困るわけですね。
まとめ
「京都料理芽生会」の料理人さんたちの支援により、生鮮野菜として売り込むと同時に「レシピとして京料理を活用」できました。
このとき「万願寺とうがらし」も同列であつかってもらえましたが、料理人側に「大きなトウガラシ」をあつかったことがなく苦労されたようです。
The path to “Manganji Amato” (3): Complaints from restaurants—”There are no plates!” (Manganji tōgarashi 07)
“With the support of chefs from the ‘Kyoto Cuisine Meikai Association,’ Manganji pepper was promoted as a fresh vegetable while also being incorporated into Kyoto cuisine recipes.
At the time, Manganji pepper was treated on par with other vegetables, but chefs struggled as they had never worked with such a large pepper before.”