京の伝統野菜

京野菜って何??・実はややこしい設定(伝統野菜01)

 この記事では、京野菜に対する4つの見方について紹介します。

京野菜にまつわる4つの区分

 京野菜と聞いてイメージするのはどんな野菜でしょうか。AIに聞いてもなにかもやっとした答えが返ってきますよね。どうも京野菜=伝統野菜ではないようです。
 こうなるのは、異なる京野菜の区分が主に4つもあり、複雑に関係しあっているため整理して答えにくいからです。この記事ではこれらを整理し説明しますので、もやもやをすっきりさせてください。

 4つの区分とは次のものです。
  ・京の伝統野菜
  ・京の伝統野菜に準ずるもの
  ・京のブランド産品
  ・京の旬野菜
 そして、これらの関係を図に描くと下の図のようになります。

 ごちゃごちゃとからみあっていますね。それでは、この区分を1つずつ説明しますのですっきりしてください。

京都府が認定する「京の伝統野菜」

 「京の伝統野菜」は、京都府により京都市内だけでなく京都府内全域の野菜から認定されます。「京野菜」の代名詞ともいえるのが「京の伝統野菜」です。

 「京の伝統野菜」は、まず「絶滅したもの」と「現存するもの」の2つに分かれます。絶滅してしまっていても、文献などに詳しい記録があれば伝統野菜に認定されるわけです。
 「現存する」とは、現在栽培されているものはもちろん、種子が保存されているものも含みます。たとえば「佐波賀かぶ」は栽培されていませんが、種子が府と国の研究機関に保管されているので認定されています。

 次に「現存するもの」が、来歴により「京都市」と「京都市以外」の2つに分かれます。「京都市以外」を言いかえると「京都府内ただし京都市以外」となります。つまり「京の」は京都市ではなく京都府を指しています。
 これは、1960年に京都府の研究機関が京都府内の伝統野菜を収集したのがはじまりなので、京都市内だけの野菜とはかぎらないわけです。なお京都市による市内の伝統野菜の収集は1962年から始まりました。

*参考「京の伝統野菜・京のブランド産品」京都府流通・ブランド戦略課
*参考「京の伝統野菜について」京都市情報館

京都市が認定する「京の旬野菜」

 京都市内産の野菜に対して京都市が独自に認定しているのが「京の旬野菜」です。伝統野菜に限らず、京都市内で作られている優秀な野菜が認定されています。また、名前にあるとおり旬にこだわっているのも特徴で、旬の時期以外で出荷されたものは認定されません。

 京都市内で作られている「京の伝統野菜」と「独自に定めた野菜」を合わせたものが「京の旬野菜」といえます。ただし、全ての伝統野菜が認定されているわけではありません。

 京都市がややこしくしてるかというと、そうでもありません。昭和の頃は「京都市で消費される野菜の8割は市内産」といわれるほど、京都市はとびぬけた野菜産地をかかえていました。
 そんな状況ですから、市内から出荷される野菜には「京の野菜」などの文言が添えられることが多くありました。京都市内でとれる良い野菜が「京野菜」と言う方がいても、まったくの間違いではないと思います。

*参考「京の旬野菜推奨事業」京都市情報館

明治以降に現れたら「京の伝統野菜に準じるもの」

 「京の伝統野菜」に付属する野菜に「京の伝統野菜に準じるもの」があります。なぜ「準じる」のかというと、「京の伝統野菜」の定義のひとつ「明治以前に導入されたもの」にひっかかるからです。
 言い方を変えれば、地域の食文化に大きくかかわる伝統的な野菜だけれど「明治以降に作られた野菜」となります。なお「準じる」区分であっても京都府の認証が必要です。

 代表的なものに「万願寺とうがらし」があります。舞鶴市で昔から食べられている野菜ですが、明確な伝聞が大正時代までしかさかのぼれないため「準じる」という位置づけになりました。

野菜だけじゃない「京のブランド産品」

 種子と栽培技術の保存から始まった「京の伝統野菜」でしたが、これをブランド化して京都府内の野菜産地を広げようという動きがおこりました。しかし、農業県でさえ「一村一品」とか「嬬恋キャベツ」とかブランド名には地域名を冠して言っている時代です。
 ではどうしたかと言えば、京都府全体を産地とし「京野菜」ブランドをつけて共同販売するというプロジェクトを展開しました。これが「京のブランド産品」の始まりです。

 この方法なら、1つの産地は小さくても「京野菜」として合体させ、まとまった量を市場に送れます。しかも「京野菜」として出荷するのは「京の伝統野菜」ですから、よそから同じ野菜が出てきて競争になる心配がありません。種子は京都府が保管してますから。

 この作戦はうまくいき東京の市場開拓も成功しました。こうなると欲が出てきます。「京野菜」のイメージに乗っかるかたちで京都府産の良いものを売り込もうというわけです。
 まず「京の伝統野菜に準じるもの」の一部が認証され、次いで京都のイメージを感じる野菜(紫ずきん等)が加わり、現在では農産物にとどまらず海産物や加工品にまで認証が拡大しています。

*参考「おいしくて信頼できる「京のブランド産品(京マーク)」」京のふるさと産品協会

まとめ

 というわけで「京野菜」って何?の答えは、4つの区分をたしたものから「京のブランド産品の野菜以外を引いたもの」となります。
 式で表すと「京の伝統野菜」+「京の伝統野菜に準じるもの」+「京の旬野菜」+「京のブランド産品の内の野菜」となります。
 どうでしょう、すっきりしたでしょうか。しなかった方いたら、ごめんなさい。

What are “Kyoto vegetables”?? In reality, the definition is quite complicated. (Traditional vegetables 01)

The answer to “What are Kyoto Vegetables?” is derived by adding four categories together and subtracting non-vegetable items from Kyoto brand products.
Expressed as a formula, it is:
“Kyoto’s Traditional Vegetables” + “Vegetables Equivalent to Kyoto’s Traditional Vegetables” + “Kyoto Seasonal Vegetables” + “Vegetables from Kyoto Brand Products.”