この記事では、海老芋の初期生育を促進する鶏糞施用について説明します。(海老芋01)

定植後の海老芋はリン酸が欲しい
もう海老芋を定植しましたか。5月後半では遅いので早めることをおすすめします。さて、この記事では海老芋の基肥に「鶏糞」を加えて初期生育を促進する技術について紹介します。
海老芋は品種が伝統ではなく「栽培法が伝統」です。その伝統技術では、生育初期にリン酸を効かせると根の張りが良くなるので、基肥に「鶏糞」をほどこすと良いとされています。
一般的なマニュアルでは、基肥は「うね立て時に緩効性肥料をうね中央に筋状に施用(株元局所施用)」することとなっています。
ところがこれだけでは活着促進には役立ちますが、活着後の根域拡大に対しては役不足となります。活着というのは苗の根鉢から根が外へ伸びだすことなので、そこにリン酸が見当たらないのは困るわけです。
おすすめは「鶏糞」
そこで「鶏糞」の登場です。「鶏糞」に含まれるリン酸の多くは水に溶けにくいものですが、根が近寄ってくれば「根が出す酸で溶かされ」吸えるようになります。速効性はありませんが、施用量を増やし「土中の存在密度を高める」こことで「根と出会う確立を上げる」ようにします。
また「水に溶けやすいリン酸」も少し含まれているため、少しですが速効性も期待できます。
注意点は、株から離れたところでリン酸の効果を出したいので、うね立て前の圃場に「全層施肥」しておくことです。つまり圃場全体にまんべんなくまき、耕耘しておくわけです。
こうすれば、うねの中に伸び始めた根の目の前にリン酸があるため、さらに根を伸ばせるようになり初期生育が旺盛になります。
鶏糞の肥料には3種類ありますが、
おすすめは「普通の鶏糞」です。なんといってもとても安価です。大量に施用するのでこれはたすかります。ただし、匂いがきついですから「まいたらすぐ耕耘」してください。近所から苦情がきます。肥料当りしやすいですが、土作りと同時に施用するので問題ありません。
2つ目は、使いやすい「発酵鶏糞」です。「鶏糞堆肥」ともいいます。ただし高価なので大量使用には向きません。でも「小面積だから使いたい」という方には、HACCPに取り組む下記の商品が高品質なのでおすすめです。
*参考「鬼に金棒 醗酵鶏糞」グリーンファームソーゴ
3つ目は、さらに安価な「鶏糞灰」です。「炭化鶏糞」ともいいます。ただしアルカリ性がきつく使いづらいので野菜づくりには向きません。
BMようりんでは役不足
ここで疑問がある方もいそうです。うちは「BMようりん」を全層施用してるけど、それではダメなの?
はい、高額なのに効果的ではありません。「BMようりん」は「土づくり資材」ですから、根が吸い始めるのがすごく遅くなります。そのころには追肥が始ります。なので基肥用には向きません。
その理由は、「リン酸の全量が水に溶けにくい」だけでなく「施用量が少ないので粒の土中密度が低い」からです。
土中密度が低いと「根と肥料の出会う確立が低くなる」からです。根を伸ばしたい時に「根が伸びて触らないと効かない」のでは意味がありません。微生物の働きで水に溶けるようになりますが、地温の低い春では期待できません。
どうしても「ようりん」系資材を使いたい場合は「粒状タイプ」ではなく「砂状タイプ」にしてください。以前京都のマリーゴールド苗(リン酸が大好き)でリン酸欠乏が大発生したことがあり、調べてみたらその年から全員が「粒状タイプ」に変更してしまっていました。それくらい形状で違いが出る資材です。
もう遅い場合は「亜リン酸」かな
「もう土作り作業は終わってしまった」のに「でも鶏糞使ってみたいなあ」という方には、代替品として「亜リン酸」資材が使えそうです。といっても「栄養ドリンク」的なものですが。
「亜リン酸」は根の張りを促進する効果が期待できるので、色々な野菜で使う方もおられます。これで海老芋の根を伸ばしてやろうというわけです。
おすすめするとしたら、OATアグリオの「亜りん酸粒状2号」でしょうか。施用方法は、定植後に株元にパラパラっとふるだけです。ただしこれは個人の感想です。高価だし。
*参考「亜りん酸粒状肥料」OATアグリオ株式会社
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まとめ
基肥を「うね立て前」と「うね立て時」の2回に分けておこないます。「鶏糞」は圃場全体でリン酸供給できるようにするため「うね立て前」に「全層施用」します。「うね立て時」は緩効性肥料の局所施用です。
「鶏糞」によるリン酸供給は、活着後の根の張りを促進し初期生育を旺盛にしてくれます。
Boost growth with chicken manure—phosphate fertilizer is unnecessary. (Ebiimo 01)
The base fertilization is carried out in two stages: “before ridge formation” and “at the time of ridge formation.”
To ensure phosphate supply throughout the entire field, “chicken manure” is applied as a full-layer treatment before ridge formation. At the time of ridge formation, a slow-release fertilizer is applied locally.
The phosphate supply from “chicken manure” promotes root development after establishment, leading to vigorous initial growth.