この記事では、海老芋の収量に関わる「早期定植」について説明します。
海老芋は「晩生品種」です
里芋の栽培技術で、里芋イコール「石川早生」と想定した意見がたまにあります。しかし海老芋栽培では困ったことになる場合が多くあります。理由は、「石川早生」はその名のとおり「早生品種」ですが「海老芋=唐の芋」は「晩生品種」だからです。
たとえば、「汚斑病」の記述でたまにあるのは「発生するのは9月からなので収量に影響ない」です。そりゃあ「石川早生」は9月に収穫するので影響しませんよね。
でも晩生品種の海老芋は「収穫は11月からなので葉がボロボロになると減収」します。なので予防対策は必須になります。
海老芋には180日が必用
海老芋のような晩生品種の収量確保に一番必要なのは「生育期間を長く取る」です。晩生品種は、早生品種と同じ時に定植しても、収穫適期は1か月以上遅くなるようです。
そして、海老芋の収量を最大化させるには「180日以上の生育期間が必用」とされています。つまり定植から収穫まで半年かかるわけです。
「遅取り」は無理「早植え」はOK
では、海老芋で半年の生育期間をもうけるにはどうすれば良いのでしょうか。2つ方法があります。収穫をさらに遅らせる「遅取り」と定植を早める「早植え」です。
ところが「遅取り」には「肥大停止」と「降霜」が障害になります。
「肥大停止」とは一定の気温を下回ると芋が太らなくなることです。京都府なら、まず9月後半になると子芋(海老芋)の肥大が止まり、10月後半には孫芋・ひ孫芋(こえびちゃん)が休眠を始め、全ての芋の肥大が止まります。
そのため11月に入れば芋は肥大しなくなるので収穫適期となります。
よく行われている「5月後半定植では日数不足」ですから1か月たりません。芋の肩の張りが少ない「長」規格が多い人は結構これが原因です。
でも「最近は地球温暖化」とか「遅くまで残暑が厳しい」とかいう方がいるかもしれません。たしかに11月に入っても肥大が続く可能性はあるでしょう。
しかし11月に入れば晩秋です。11月後半に「降霜」リスクが高まるのはさけられません。海老芋は寒さには強くても、霜に当たるとけっこう芋が痛みます。
傷んだ子芋を年内に売り抜けることができたとしても、種芋はそうはいきません。貯蔵中に腐ったり、頂芽が痛んで側芽が出しゃばりやすくなると育苗時の「わき芽かき」がすごく手間です。
というわけで、おすすめは「早植え」となります。つまり、11月から出荷するため4月後半に定植するわけです。
「早植え」の障害は「降霜」ですが、この時期なら定植したばかりなので株が小さく降霜対策は簡単です。その方法として京都府で一般的なのが「不織布によるトンネル被覆」です。
「早植え+トンネル被覆」で増収しましょう
不織布とは「繊維を編まずシート状にした布」です。その程度の保温では心配と思うかもしれませんが、海老芋は「霜には弱いが低温に強い」ため霜が直接当たらなければどうということはありません。
*参考「早植えトンネル栽培によるエビイモの増収技術」京都府農業総合研究所(現農林センター)
ビニールの方が保温性が高そうですが、密閉するので朝夕の開け閉めがめんどうです。不織布なら通気性があるため「かけっぱなしでOK」です。どう考えてもこっちの方が楽ですね。
おすすめの不織布は、MKVアドバンスの「パオパオ90」です。2004年の発売以来現場での実績があり安心して使用できます。この資材の特徴は名称についている「90」です。これは太陽光を90%通すという意味ですから徒長することもありません。
ただし、この資材はシリーズものなので、他の製品をまちがって使用しないでください。「青パオパオ」は日射量が多い時用、「パオパオM-6」は3割遮光の苗代用です。けっこう間違う方がいます。
*参考「農業用不織布パオパオ90」MKVアドバンス

まとめ
海老芋の肥大確保のため「早植え」しましょう。ただし定植後の霜対策は必須なので「不織布トンネル被覆」を行います。
Let’s strive for early planting—May transplanting is out of the question. (Ebiimo 07)
For ensuring the proper enlargement of Ebiimo, “early planting” is recommended. However, frost protection after transplanting is essential, so “non-woven fabric tunnel covering” should be used.