海老芋

やってはいけない「葉かき」・百害あって一利なしとはこのこと(海老芋13)

この記事では、いつのまにか定番管理になったらしい「葉かき」が、収量と品質向上に関係ないだけでなく、病害リスクを高めることについて説明します。

定番化した謎技術

 今では定番となっている謎技術に「葉かき」があります。京都府内だけならある程度想像がつきますが、他県にも広まっているのは意味がわかりません。

 どんな技術かというと「子イモの芽が伸びやすいよう外側の葉柄を根元から除去」さらに「ズルケた葉も除去」するというものです。

 秀品率を上げる技術らしいのですが、重量ベースで秀品率が50%以上の産地ではやっていないので、嫌な見方ですが「そんなことしてるから取れない&もうからない」ように思ってしまいますね。

 伝統技術に無い技術を思いつくのは悪いことではありませんが、広めるのは「たくさん良いものが取れてもうかる」実績を出してからにしてほしいです。

 なお似たような作業に「わき芽かき」がありますが別物です。これは「種芋から発生した側芽(わき芽)を除去」すること。なお京都府の丹後地方では「側芽が出ない種芋」を使用しているため「わき芽かき」はほとんど行いません。

 ではどんなことが謎なのか、3つの理由で反論したいと思います。

   ①芽が伸びるのに外の葉柄がじゃまだから → じゃましない
   ②芽が横ではなく上に伸びセミになってしまうから → 遅く出る芽はセミ
   ③茎の「ズルケ」が初夏から出るので廃棄の意味もある → あなたのせい

①芽は茎を突き破って出ますけど・・・

 「芽が葉柄に邪魔されて横に伸びない」なんてことはありません。よく観察していれば「葉柄を押し開けて出てきている」のがわかるはず。

 葉柄の繊維は縦方向なので「カーテンを開けて顔をのぞかせる」ように出てきますよ。

下の写真は「茎を突き破って」出てきた子芋の芽。

②その子芋の芽、何番目ですか?

 親芋から発生した子芋の芽は「まず横に伸びてから上に曲がる」ことで「秀」(写真でよく見る海老芋)になります。
 しかし「まず横」に伸びず「まず上」に伸びてしまうと、親芋に接近しすぎてしまい片側が平らな「セミ」という規格になり単価急落です。

 たしかにそうなのですが、たぶん2種類のセミをごっちゃにしてませんか。(下の区分のⒸは今回除外)

  Ⓐ親芋に張り付いたままの子芋(販売不可)
  Ⓑ親芋と子芋が肥大時に接触(「セミ」規格品)
  Ⓒ孫芋同士が肥大時に接触(ブランド外こえびちゃん)

 Ⓑを防ぐため「葉かき」が必用といいつつ「対象にした芽はⒶ」みたいですね。「それセミになる芽ですよ」というわけです。
 なお②を防ぐ作業を「第2回土寄せ」といいます。

 では、セミになる芽の見分け方はというと、すごく単純「遅い芽はセミになりやすい」です。「そんなに後の芽じゃない」と思う方、株元をやさしく掘ってみてください。すでにたくさんの「秀」候補の芽が出てきているのがわかるはず。

 なぜ早くから子イモの芽が出てきているかというと「秀になりやすい芽を持つ葉は3枚目~7枚目」が基本です。定植時の苗は葉3枚ですから「その時から出始めている」ことになり、トンネル除去時は葉7枚なので「第1回土寄せ」頃にはもう出そろっています。

 「葉かき」作業はこれ以降なので、セミになる芽を対象にしているとしか思えません。ムダなのでやめましょう。

 「いや<セミになりやすいとしても、手間はかかるが押し倒して土寄せすれば秀になるぞ」という方もいました。
 不可能とまでは言いませんが8枚目以降の芽のはなしですよね?すでに5個の芋がスタンバイしています。いったい何個取るつもりですか?

 おそらく「葉かきの後から子芋ができてくる」と勘違いしているのでしょう。親芋に残された「子芋が付いていた跡」を見たことがないのでしょうか。ムダなのでやめましょう。

③疫病が止まらないのはあなたのせい!

 これが一番の反対理由です。①と②はくたびれ損で済みますが③は深刻なリスクを招きます。

 「全ての株」の地際部に「生育早期に」「積極的に」傷をつけて良いわけありません。すべての株が夏の前から「土壌病害」リスクにさらされます。特に近年広がっている「疫病」にかかると「収穫後の子芋や孫芋が腐敗」しやすくなります。

 「疫病」は初夏と初秋の年2回発生ピークがありますが、そうそう出る病気ではありません。しかし初夏に発病した株は初秋に再発し「軟腐病」を併発しやすくなります。これが問題で「出荷後のクレーム」と「種芋不足」を招きます。

 「疫病」は地際部を腐敗させるだけで芋は腐敗させません。しかし「軟腐病」は芋も腐敗させるため、出荷後に腐敗が拡大してクレームが来たり、貯蔵中の種芋がたくさん腐敗して翌年足りなくなったりするからです。

 実例を紹介します。
 京都府でも初夏に「疫病」の発生が見られましたが、これには別の理由がありました。種子消毒の方法が「土付きの種芋に種子分衣」だったためです。
 「疫病」菌は種芋にはおらず付着土壌にいるため、この土付き状態に農薬をまぶしても効きません。そのため「菌密度が低い」圃場に「わざわざ菌を持ち込み」初夏に発病していたのです。

 しかし今は「洗浄した種芋を浸漬処理」に変わり、初夏に発生しないはずだったのですが、やっぱり出る圃場がありました。種子消毒はちゃんとしたとのことでしたが、出た株をよく見ると「葉かき」が行われていました。
 苗による持ち込みはなくなったものの「葉かきにより株元に傷」ができたため「初夏に発病」していたのです。

 なお、似たような作業に「わき芽かき」がありますが別物です。これは「種芋から発生した側芽(わき芽)を除去」すること。なお京都府の丹後地方では「側芽が出ない種芋」を使用しているため「わき芽かき」はほとんど行いません。

まとめ

 最近新たに定番化した「葉かき」をしてはいけません。効果が無いだけでなく、「疫病」の発生を促すためです。

Forbidden leaf removal – a hundred harms and not a single benefit (Ebi-imo 13).

You should not perform the recently popularized ‘leaf removal.’ Not only is it ineffective, but it also promotes the occurrence of ‘blight.