この記事では、「海老芋」に使用する2つの系統「赤茎」「青茎」の良否について紹介します。(海老芋16)

「赤茎」と「青茎」
「唐の芋」には2つの系統「赤茎」「青茎」があり、青茎は「女芋」とも呼ばれて厳密に区別されてきました。
しかし、海老芋として使用する場合は「赤茎」が良いとされ、ずっと守られてきています。
そのため、京都府では現在でも採種を行うのは「赤茎」の株のみとし、「青茎」の株が出てきた時は抜き取るか自家用としています。もちろん出荷はしていません。
なおブランド専用品種「京都えびいも2号」は完全な「赤茎」品種として育成されているため、変異が起こらない限り「青茎」株は発生しません。
かつては、この茎の色による取り決めを京都府と大阪府だけで行っていて、大産地の静岡県などでは「青茎」が主流のようでしたが、現在ではどの産地でも「赤茎」系統で出荷されているようです。(昭和の静岡産イメージは、茎が青・形が寸胴・芋色が紫でした)
しかし、このような文脈を学ぶ機会がない農家が通販で販売する時、ブログや商品説明の写真で「青茎」を写しているのを時々見かけます。
多分「海老芋は唐の芋で作る」だけの情報で種芋を購入しているのではないでしょうか。有名種苗会社なら「海老芋(唐の芋)」と表記しているのでわかりやすいのですが。
「れんげ」と「ほっかい」
京野菜に詳しい方なら、茎の色とは別に2つの系統「れんげ」と「ほっかい」があることをご存じかもしれません。
これは「種芋にする芋の形」についての分類で、「れんげ」とは「丸みのある芋」、「ほっかい」は「長細い芋」のことで、「ほっかい」の方が種芋に良いとされていました。
この頃の「種芋は子芋」だったので、親芋に付いていた時の「子芋の形」を重視したと考えられます。そのため「長く伸びた子芋」を種芋にすれば「良く伸びて海老芋にしやすい」と考えられたからでしょう。
しかし、この分類による「ほっかい」良い説は、現在使用されていません。
一番の理由は、その後の研究で「細くなるのは特性ではなく物理的な要因」とわかったからです。土寄せ後に発生した子芋は「親芋近くのひび割れに沿って直立しやすい」ため細長い子芋となるようです。
もう一つの理由は、現在の種芋は「子芋ではなく孫芋・ひ孫芋」を使用するからです。孫芋・ひ孫芋はすべて「れんげ」なので「ほっかい」になりませんから。
なぜ子芋を種芋にしないかというと、子芋の大きさが小ぶりだった在来系統の頃と違い、現在は肥大に優れる品種を使用するため「子芋が大きすぎて種芋にできない」からです。
「こえびちゃん」に救われた小さい子芋
なお、かつての「小ぶり」の痕跡は、今も出荷規格の「小:30~70g未満、L:70~120g未満」として残っています。
これは専用品種が使えない一般の京野菜農家のためのものかと思いますが、こんな規格では低い単価しかつないので消えていく運命かもしれません。
では、ブランド出荷しない農家はもうからないかというと、実は新たな規格ができた時に対策が打たれています。その規格とは「こえびちゃん」です。
「こえびちゃん」の規格は「3S~S:30~70g未満、M:70~120g未満」ですが、これは子芋の「小とL」規格をカバーしています。
これにより、子芋としては低単価ですが「こえびちゃん」に変更すれば高単価の規格となり、一般京野菜農家でももうかるよう配慮されています。
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まとめ
「唐の芋」には「赤茎」と「青茎」の2系統があります。現在では、全国的に、「海老芋」に最適なのは「赤茎」とされています。
なお、昭和のころは、種芋の形で「れんげ」と「ほっかい」に分けることも行われ、海老芋に最適なのは「ほっかい」とされていました。しかし、現在では、逆に「れんげ」を用いることとなっています。
he Kyoto vegetable Ebiimo—the increasingly vague issue of red-stemmed vs. blue-stemmed varieties.
There are two main varieties of Tō no Imo (Tang Yam): the red-stemmed and blue-stemmed types. Today, across Japan, the red-stemmed variety is generally considered the best for producing Ebiimo (shrimp-shaped taro).
In the Showa era, seed potatoes were also classified by shape into Renge and Hokkai. Back then, Hokkai was regarded as the optimal choice for cultivating Ebiimo. However, in modern times, the preference has reversed, and Renge is now used instead.