この記事では、2回目の土寄せ方法と、トラクターを使用してはいけない理由を説明します。(海老芋19)

6月下旬~7月初旬は「第2回土寄せ」の適期です
第1回土寄せから1か月たった頃に2回目を行います。1回目は、「秀・4L」にする子イモの芽を5個出させるための作業でしたが、2回目は「セミになるのを防ぐ」ことが目的です。
子芋の芽は「始めは真横に伸びる」のですが「すぐに上を向いて伸びる」性質を持っています。なので、ちょっと詳しい方が「芽は土の重さがなくても横に伸びる」といっているのは半分しか正しくありません。
2回目はこの「上向きに伸びる」のを邪魔するために行います。親茎の近くを伸びてしまった場合、親芋の肥大と子芋の肥大が重なった時「大きいけれど安物のセミ」のできあがりとなります。
「第2回土寄せ」の方法は「親茎の周辺だけにうず高く土を盛る」です。こうすることで「上に伸び難くして斜め上に軌道をそらす」ことができます。
ただし、親茎から離れた所にまで土を寄せないでください。子イモの芽がモグラのように真横へ進んで行くわけないので、一番伸びやすい「親茎の横」を登って行ってしまいます。
なお「土入れ」という言い方が主流になってきているようですが、謎技術をミスリードしがちなのでやめた方がよいと思いますよ。
実施する目安には「子芋の芽の出方」を判断材料とします。
開始の合図となるのは「子芋の芽2~3本が横に伸びてきた」状態です。目標の5本には足りませんが土の中では伸び始めています。(写真上)
なお、株元をよく見てもらうと、子芋の芽が葉柄を突き破って出てきているのがわかると思うので「葉かき」が必要ないことがわかりますね。
では、これ以降はダメの合図は「子イモの芽が上向きに曲がってきた」状態です。このまま放置してしまうと、せっかくの作業がムダ働きになってしまいます。(写真下)
なお、「次の土寄せで子茎を倒す」という方もいるようですが、海老芋ができる理屈をかん違いしていませんか。なぜなら伝統技術に「そんな作業はありません」から。


土寄せ作業の流れ
「第2回土寄せ」の行程は、次の4つの作業からなります。
①追肥
通路とうねの肩に追肥を施用します。1回目と同じく、大量の有機質肥料(お勧めは油粕)を施しましょう。
うねの上には行わないでください。通路ならうね間潅水で溶けますが、そんなところにやってしまうと「雨が降るまで溶けない」からです。なお、株元や株間は葉が茂っていて「雨が降っても溶けない」ので論外です。
②中耕培土
管理機に培土板をつけて「通路だけを走らせ」中耕培土します。
培土板で通路脇に盛り土ができますから、この土で土寄せを行います。そのため、2回目は土を飛ばすのは厳禁なので「ラセンずき」は使用しません。
さらに、追肥を通路周辺に混和し、うね間潅水との合わせ技で海老芋の根をおびき寄せて「根域拡大」を図ります。
③土寄せ
通路脇の盛り土をすくい「親茎めがけて放り投げ」てください。普通のクワだとすくえる土が少ないので「ステンレス製のジョレン」(写真)がおすすめです。
しんどい作業ですがひとつ救いがあります。それは「親茎の周りだけ盛ればよい」ことです。
④うね間潅水
土寄せが終わったら、その日のうちにうね間潅水を行います。せっかく追肥を行ったんですから、一刻も早く溶かして肥効を発生させましょう。

トラクターを使うと生育停止します
管理機でさえ通路しか走ってはダメなのですから、トラクターの使用は禁止です。最近は幅の狭いトラクターもありますがダメです。
最近は使う方が増えているとも聞きますが、そんなに根を切りたい理由がわかりません。
海老芋に限らずサトイモは、吸水力が強いといわれますが「根の吸う力が飛びぬけて強い」わけではありません。普通の根です。
ではどうやってたくさんの水を吸うのかというと、たくさんの根で吸うからです。サトイモの根は下には伸びず、20cmくらいの深さを平面的に広がっていきます。(隣のうねまで伸びていく現象をワタリと呼ぶ方もいるくらいです)
こうやって広がっていった根を切ってしまうのが、うねまで耕耘するという行為です。その結果はというと「激減した根量で吸う」ことになり「水だけでなく肥料も吸えず生育が停止」してしまいます。
生育停止が土寄せのたびに起こっていたのでは、まともな海老芋がとれるわけがありません。さらに悪いことに、海老芋の根は切れた所でおしまいなので、親芋や子芋から次が伸びてくるまで回復は困難です。(うねの上に追肥する派の方は結果的にこの回復を助けているのかもしれませんが)
まとめ
「第1回土寄せ」の1か月後が「第2回土寄せ」の適期となります。子芋の芽が上向きに伸びてしまう前に行いましょう。トラクターは、根を切断するため使わないでください。
Kyoto Vegetables: [Cultivation Method for Ebiimo Taro] – Part 2: Earthing-Up and Tractor Use Prohibited
The optimal time for the second earthing-up is about one month after the first. Be sure to perform it before the buds of the daughter tubers begin to grow upward. Do not use a tractor, as it may sever the roots.