この記事では、海老芋肥大に必須な技術「摘葉」について説明します。(海老芋22)

「摘葉」で生育を親芋から子芋へ転換
7月に土寄せを終えると、次は子芋を肥大させる時期となります。子芋を肥大させるためには、子芋の葉に十分な日光を当てる必要があります。
しかし、親芋の葉が上方を広く覆っているため、そのまま放置してしまうと、いつまでたっても子芋が大きくなりません。
そこで行うのが8月から実施する「摘葉」です。これは、親茎の葉を除去し、株元で生育中の子芋地上部に太陽光を届けるための管理作業です。
しかし、いきなり親の葉を無くしてしまうと、まだ子芋へ養分を送っている最中なので、子芋地上部の生育が遅延してしまいます。
そのため「摘葉」は、枚数を段階的に減らしていくひと手間が必要となります。
この「摘葉」により、親芋は養分を作れなくなり衰退していきます。代わって子芋地上部が大きく生長し、逆に株を葉で覆うようになります。
このような株に変化させることで、盛夏期から子芋が自力で肥大できるようになります。これは十分な肥大日数の確保につながり、4Lサイズ(250g以上)の本数が増加します。
3本なら750g以上/株ですから750kg/10aとなり、秀・4Lだけで目標収量(1500kg/10a)の半分を達成できる計算です。
次の写真は、「摘葉」前後の株の状態です。上が8月上旬の摘葉開始時で、親茎の2枚の大きな葉が子茎を覆っています。下が9月上旬の摘葉終了時で、子茎の葉で株が覆われ親茎は見えなくなっています。


「摘葉」作業の実際
「摘葉」作業は、親茎の葉を2段階に分けて除去します。除去の方法は「葉を茎についているところで切除」です。そのため「摘葉後」は茎だけが立っている状態となります。
なお、茎を株元から切除する方を見かけますが、圃場外への持ち出しが重労働になるだけで、葉だけ切除と効果に違いはありません。
理由は、葉を切除された茎は次第にしおれ最後には枯れてしまうため、持ち出さなくてもじゃまにならないからです。
むしろ、茎だけでも残しておくと、強風が吹いた時に「茎が多いため株の揺れが緩和」され被害が軽減されるメリットもあります。
「摘葉」作業は次のような順で実施します。
①まず、2枚の管理から始めます。2枚というのは「展葉した茎が2本」という意味です。
親茎の展開葉を、新しい2枚を残し他はすべて切除します。
茎が5本立っていたら、古い茎から3本の葉を切除し、茎だけ3本+葉付き茎2本とします。
②株の中心から新しい茎が立ち上がり展葉したら、一番古い葉付き茎1本を「摘葉」します。
この作業を繰り返すことで、葉付き茎2本の状態を継続します。
③2枚の管理を10日から2週間程度継続したら、次は0枚の管理に移行します。
④0枚というのは「葉を展葉させない」という意味です。
展葉している2本の茎も「摘葉」し、親茎の葉をすべて無くしてしまいます。
⑤株の中心から新しい茎が立ち上がってきたら、展葉する前に「切除」します。
この作業を繰り返すことで、親茎に葉が付いていない状態を継続します。
⑥0枚の管理は、9月前半まで継続します。
ただし、9月に入ると新葉の展葉はほとんど起こらなくなるので作業は楽になります。
下の写真は、親茎の葉を2枚で管理している株です。赤矢印は葉を切除した親茎、2つの黄矢印は葉を残した親茎です。

下の写真は、親茎の葉を0枚にした株です。2つの赤矢印は2枚で管理していた子茎で、0枚管理への移行により葉を切除しています。

「親茎切除」は必要なし
0枚の管理を続けると、親株には葉がないわけですからどんどん衰弱していき、9月に入ると地際部まで枯れた状態となります。つまり、親茎を切除しなくても勝手になくなってしまいます。
なので、自動的に「親茎切除」状態となるわけで、無理して切らなくてもよいわけです。
しかし、「摘葉」の0枚管理を、株元からスパッと切ってしまう「親茎切除」の方が良いと考える方がいるようです。
それはかまわないのですが、「だからこれで任務完了」と考える方には、ひとつ聞きたいと思います。
「摘葉は終わった」という方に、しばらくしてから「切った後から出てきているのは何ですか」と聞くと「切った後から新しい葉が出てきたんだよ」とのこと。
「摘葉」は親芋をいじめ続けることが目的ですから、葉が再生してしまったのでは目的が達成されていませんね。
というわけで、切ってしまってもいいですが、親株が再生しないよう管理を続けてください。
嫌なことをひとつ加えると、茎を地際部で切除してしまうと、「外葉かき」でも言いましたが土壌病害に感染しやすくなります。
暑い夏ならまあいいですが、秋になってからは絶対やめましょう。「疫病」に感染すると、株がズルケて生育停止時期が早まってしまい芋が大きくなりません。
最悪なのは、「疫病」にかかったせいで「軟腐病」を併発してしまうことです。株のズルケがさらに早まるだけでなく、芋にも感染するため、出荷後のクレームや種芋腐敗に連鎖していきます。
なお、「9月の第4回土寄せは切除した親茎に被せるように行うから切除は必要」だという方もいますが、そもそもそんなに遅く土寄せなんかしませんから無視してください。
下の写真は、0枚で管理し続けた親茎の状態です。「摘葉」で親芋の力が衰え、さらに子茎に覆われたため、新葉が生長し難くなっています。株元で枯れているものは、葉を切除され続けた親茎のなれの果てですから、「親茎切除」は必要ないわけです。

これは「摘葉」と関係ありませんが、8月に入っても発生する子茎のあつかいについてです。
「芽ぞろえ」という作業名で、放置すると先に発生した子芋の肥大を阻害するので除去しなさい、という指導があるようです。
しかし、こんなに遅く発生した子芋は大きくなれません。理由は簡単です。「摘葉」により親芋を衰弱させますから、親芋からの補給が絶たれます。
さらに、自立しようにも、先輩子芋の日陰になって養分を作れないからです。
また、「芽ぞろえ」を行っている現場を見た時、なんと孫芋の芽を抜いている方がいました。多分、遅くできた子芋と孫芋の区別がつきにくかったのでしょう。
「芽ぞろえ」は、意味がないだけでなく作業ミスのリスクも高いので行わないようにしましょう。
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まとめ
8月から9月前半まで、子芋の肥大を促進させるため「摘葉」作業を行います。方法は、親芋の茎だけを残し葉を切除します。ただし、いきなり全ての葉を除去するのではなく、まず2枚残し、2週間くらいたってから全ての葉を除去します。こうすることで、親芋地上部は衰弱していき、代わって子芋地上部が急速に成長し、子芋の肥大が促進されます。
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“Kyoto Vegetable: Ebi-imo Taro Cultivation Method — Leaf Removal Reduced from Two to None; No Need to Cut the Main Stem”
From August to early September, leaf pruning is performed to promote the enlargement of the daughter tubers.
The method involves removing all leaves except for the stem of the mother tuber. However, instead of removing all the leaves at once, two leaves are initially left intact. After about two weeks, the remaining leaves are then removed.
This gradual approach weakens the above-ground growth of the mother tuber, allowing the daughter tubers to take over and grow vigorously, thereby accelerating their enlargement.