この記事では、頂芽は動き出すまでに時間がかかるため、育苗前に必須の「催芽処理」について紹介します。これを行わないと健苗育成はできません。(海老芋42)

健苗定植が栽培成功のスタートラインです
育苗のコツは、展葉枚数の確保ではなく老化苗の防止です。「老化苗」とは、育苗鉢内の根(根鉢)がギチギチに詰まってしまった苗です。
根鉢の根量が適正な苗は、定植後すぐに圃場へ根を伸ばし始めます。これが「活着」と呼ばれる状態で、圃場での生育がスタートしたことを示しています。
とろころが、老化苗からは根が根鉢からなかなか圃場に出ていかないため、活着が遅延し、初期生育も遅延してしまいます。これでは、適期管理が行えず収量・秀品率の低下につながりますよね。
では、この老化苗はどうしてできてしまうのでしょうか。理由はただ一つ「長すぎる育苗期間」です。
根の伸長は「頂芽基部が膨らみだしたら」すぐに始まります。種芋の根は、地上部より早くから生育を開始するのです。
そのため、老化苗になるのを未然に防ぐには、苗の地上部の動きを見るのではなく「苗を鉢から抜いて根の状態を観察する」ことが大切です。
しかし、苗を一つずつ見ていくのではとても手間がかかってしまいます。でも長すぎる育苗って何日くらい?
でも大丈夫です。これまでの研究や現地実証により「一般的な10.5cm鉢なら育苗開始から3週間でいい感じの根鉢を形成する」とわかっているから。
言いかえると「長すぎる育苗=3週間以上の育苗を行うと老化苗になる」となります。
つまり「定植日を決めたら育苗開始をその3週間くらい前に設定すれば老化苗を防げる」というわけです。
しかし、そのデータの前提地要件には「鉢の大きさ(10.5cm)」に加え、もう一つ「種芋の頂芽は1cm以上」があります。
しかし、貯蔵している環境のままでは、頂芽が伸びないように設定しています。そこで、貯蔵終了後には「催芽処理」を実施する必要があります。そうです、ここでやっと「催芽処理」が出てきましたね。
以上をまとめると「貯蔵終了後に催芽処理を行い、頂芽を1cm以上伸ばしてから育苗を開始する」となります。海老芋を苗から作る方は、催芽処理の作業が必須というわけです。
では、その催芽処理にはどんな方法があるのでしょうか。お勧めは、京都府の産地で定番の方法となっている2種類です。
次の項目からは、どんな方法にも共通するコツと、方法別の具体的な内容を紹介します。ただし、催芽処理の期間は方法により異なっているので、貯蔵終了の時期も変わってくることに注意してください。
催芽処理の基本は加温と乾燥です
催芽処理にはいくつかの方法がありますが、どの方法も守っている条件があります。それは「乾燥状態を継続しつつ加温する」ことです。
●加温について
まず「種芋の加温」についてです。種芋の頂芽を動かすには「貯蔵環境では頂芽が動くため禁止されていた温度」以上に加温する必要があります。
頂芽は15℃以上になると動き出すため、無加温で行う方もいるようです。しかし、その程度の温度では動きが鈍いので処理期間が長くかかってしまいます。
無加温の方法でよくあるのが「母屋の縁側で処理」ですが、これだと1か月以上かかってしまいます。
タイトな栽培スケジュールを組むと4月下旬定植に苗を間に合わせられなくなるリスクが高くなります。育苗開始が5月にずれ込む原因になりやすいのでお勧めできません。
さらに昔の資料に載っているのが「地床育苗」です。これは「圃場にうねを立て、うね内に種芋を埋めて発芽・発根させ、曇りの日にていねいに掘りあげて定植する」というもの。しかし、この方法は難易度が高いので篤農家のOJTが必須ですから京都市内の先祖から作っている農家以外お勧めしません。(この方法が難しいのでポット育苗技術が開発されました)
常温頼みではまずいわけですね。そのため、京都府のプロ農家では積極的な加温が行われています。
具体的には「水稲の育苗機を使用」や「ハウス内に育苗床を設置」です。詳しくは次の項目で説明します。その前に・・・
ここで忘れてはならないのが、伸ばすだけでなく「頂芽の長さをそろえる」ことです。種芋には個性があるため、同じ処理環境を与えても、全ての芋が同じ動きをするわけではありません。
このバラつきを放置したまま育苗に移ると、当然生育が均一な苗にはなりませんよね。これは問題です。
処理を開始してすぐに動き始める芋だけでなく、少し遅くなってしまう芋も出てくるため、遅い芋が1cmに伸びるまで処理していたら、早い芋の芽は数cmにもなってしまいます。
5cmくらいまでなら育苗に差し支えないですが、1cmの芋と5cmの芋では苗の生育に早い遅いが生まれます。
では、どのように対処するかというと「1cm伸びた種芋は処理をやめ、12℃以下の涼しいところで保管する」です。低温環境に移すことで頂芽の動きを止め、遅れた芋の伸びを待つという作戦です。
また、この方法は、頂芽が予定より早く伸びてしまった時に、育苗まで芽を止めておくことにも応用できます。催芽場所を準備する時には、併せてこの「待機所」も設置しておくことをお勧めします。
●乾燥について
もう一つ大切な条件がありましたね。「乾燥状態の維持」です。これを忘れると大変なことになってしまいます。
貯蔵環境では湿度が70%以下なので発根しません。しかし、種芋の肌が湿ってくるような湿度が高い環境になると発根する可能性が高まります。
さらに、その高湿状態で加温してしまうと、まず間違いなく発根します。育苗前にこれはマズいです。
催芽段階で発根させてしまうと、育苗を始める頃には根が傷んでしまっています。根はデリケートなので、いくら丁寧にあつかったとしてもダメージは出てしまいます。
里芋の根は、傷んだところから太い脇根が出るなんてことはありません。育苗用の根は新しく発生させなければいけなくなるので、健苗に仕上ることが大変困難になってしまいます。

そのため、催芽処理の湿度環境は「貯蔵時のままが良い」わけです。催芽処理で加温する時には、いかに「種芋を乾燥したまま」で行うかという一手間を加える必要があります。
“Before transplanting Kyoto vegetable Ebi‑imo, pre‑sprouting treatment is carried out, with the basic approach being warming and drying.”
This article introduces the pre‑sprouting treatment that is essential before raising seedlings, because the apical bud of Ebi‑imo takes time to begin growing. Without this process, it is impossible to produce healthy seedlings.
