この記事では、「堀川ごぼう」で使用する品種「滝野川」について説明します。

「堀川ごぼう」は伝統栽培法
「京の伝統野菜」のひとつ「堀川ごぼう」は品種名ではありません。「海老芋」と同じ「伝統栽培法」で作られたゴボウのことです。
使用される品種は「滝野川」で、江戸時代の元禄年間(1688年~1704年)に滝野川村(今の東京都北区あたり)で改良されてできた「江戸東京野菜」になります。
しかしここで注意したいのは「海老芋」なら「唐の芋」というように、品種は「滝野川」一択なのかというとそうでもないようです。
真偽のほどは疑問ですが「豊臣家滅亡後の聚楽第がゴミ捨て場となりそこで生まれた」とも伝わっており、大坂夏の陣は1615年で江戸時代より前にので「滝野川」はまだ誕生していないはずです。
また「京の伝統野菜」に関する最古の記録とされる1695年刊行の「本朝食鑑」に載っていますが、「滝野川」が元禄元年にできたとしてもすぐ京都にやってきたとは考えにくいですね。
「滝野川ごぼう」は苗
ではなぜ現代の「堀川ごぼう」は「滝野川」を使っているのかというと「滝野川とその系統は全国シェア9割のド定番品種だから」です。その理由を説明するには「伝統栽培法」を知る必要があります。
「堀川ごぼう」は「滝の川ごぼう」の種をまいて作るのではありません。自分で作ったり店で買ったりした「滝野川ごぼう」を再度圃場に植え付けて作ります。つまり「滝野川ごぼう」は「苗」というわけです。
こうして2回目の栽培を行うと根はまったく異なる生長をします。根の先を切除してから植付けるのですが、こうすると、根はもう長く伸びず、かわりにどんどん太くなっていきます。
このような根の成長の結果が、短くて太く、中に空洞がある「堀川ごぼう」になるわけです。

宮崎産ごぼうが「滝野川」だから
京都府の研究機関が基準となる栽培技術をまとめる前には「滝野川」の他にも好適品種がないか試験が行われ、千葉県の伝統野菜「大浦ごぼう」など「長くなる品種」も検討されました。
なぜ長くなる品種がいいかというと、根の先を切って植え付けますが以後伸びないので「苗の長さは出荷規格の70cm」にしなければいけなかったからです。(今は65cmに変更)
つまり90cmくらいの長さの「苗」ができる品種が必用となります。
ところが品種の検討はすぐに中止となりました。「前年の秋から自分で90cmのゴボウを作って苗にするなんて京都府では無理」なので「中央市場に来ているゴボウを買って苗にする」しかなかったからです。
そこで市場に行ってみると「宮崎産のゴボウが90cm以上あって品質が良い」となりました。そして宮崎産のゴボウの品種はというと「やっぱり滝野川を使っていた」わけです。
京都市内の農家からも「滝野川が良いよ」と言われていたので、これで決まってしまいました。伝統野菜なのにらしくない話ではありますね。
なお「滝野川ごぼう」には2つの系統があります。東京では「赤茎と白茎があるが赤茎が良い」とされ、京都では「赤茎と青茎があり青茎が良い」と異なっていますが、現在ではこれにこだわる農家はいないようです。
まとめ
「堀川ごぼう」は、前年秋に播種し初夏に収穫されたゴボウを苗として作ります。苗は市場から仕入れますが、宮崎産が品質の良いため多く使用されています。この宮崎産ゴボウの品種が「滝野川」だったので好適品種とされました。
Is the “Horikawa burdock” variety actually “Takinogawa”? In reality, it was a retroactive designation. (Horikawa burdock 01)
“Horikawa burdock” is grown using burdock that was sown in the previous autumn and harvested in early summer as seedlings. These seedlings are procured from the market, with Miyazaki-grown burdock being widely used due to its superior quality. The variety of this Miyazaki-grown burdock was “Takinogawa,” making it a preferred variety.