この記事では、堀川ごぼうの苗を定植する時に首をどの方角へ向けるかについて説明します。

苗は購入するのが簡単
「堀川ごぼう」は、種をまいて作るのではなく、ゴボウを植えて作ります。植えるゴボウが「苗」というわけです。
この苗用ゴボウは、自分でいちから栽培(秋に播種)してもかまいませんが、おすすめは店で買った春ゴボウを使うことです。
ここで気をつけたいのは「茎が少し残してあるもの」でないと育たないからです。残された茎の中心には「生長点」という葉ができる組織があり、これがないゴボウからはもう葉が出てきません。
春ゴボウでは「根のところから切ってある」ものをよく見かけるので注意してください。
苗とは関係ありませんが、春ゴボウを食品として買う場合も注意してください。あまり悪口は書きたくないのですが「トウが立ったことをごまかすため」にやっている産地もあるようです。普通に食べられるなら我慢できますが、ひどい商品だと竹を食べているかと思うほど固い繊維の棒です。
春ゴボウはうまく栽培しても花を咲かせる(抽苔する)株が出てくるものです。だからといって花芽を切除して出荷するのはどうかと思います。
なぜ首の向きを気にするのか
苗をうねに定植する時、昔から議論になるのが首(茎側)の向きで、「出てくる葉に朝日を当てると良いので東」や「生育中にたっぷり光を受けるなら南」の2案です。
昭和の頃の研究機関では「南」向きでしたし、現在の京都産地でも「南」で指導されているようです。ところが昭和に発行された研究機関発行の資料「京都の伝統野菜」では「東南」と記されています。意見が3つに増えてしまいましたね。これらを評価してみると次のような感じです。
「東」案は、定植時期が光の弱い春ならわかりますが、初夏なので説得力が低下します。
「南」案は、栽培した方ならわかると思いますが、発根が始まればすごく繁茂します。どの方向からの光でも問題ないため説得力が低下します。
「東南」案は、文献に書いてあるので尊重したいと思いますが、発行した研究機関が「南」向きで栽培しても問題なかったので説得力が低下します。
困りましたね。では、どうすればよいのかというと「そんなこと気にしない」が正解です。
首の向きより、排水対策しましょう
研究機関で実際に栽培されていたのだから「南」が良いように思いますが、それ関係ないです。というのは、研究機関の圃場では排水の都合で「南北うね」しか立てられなかったからで、「南」が良いとかいう理由ではありませんでした。
しかし、その話には聞くべきキーワードが入っています。「排水」です。
「堀川ごぼう」は。根を切り落としたところからおびただしく発根します。しかし発根するまでは吸水できる根を持っていません。
ところが定植は梅雨入り頃ですから圃場は湿潤になりやすく、根をもたない堀川ごぼうは湿害を受けやすい状態です。そのためこの時期には排水対策をしっかり行う必要があります。
定植時に考えなければいけないのは「首の向き=うねの向き」ではなく「排水が良好になるうねの向き=首の向き」なのです。
さらに傾斜圃場では排水は良好かもしれませんが、等高線に対し直角のうねを立てたりしたら「エロージョン」がひどいことになります。
つまり「首の向きは圃場の排水方向によって決まる」わけです。
*参考「京の産品図鑑 堀川ごぼう」JA京都
まとめ
「堀川ごぼう」を定植する方向には、さまざまな意見があります。しかし重要なのは「向き」ではなく「排水」です。定植時期は梅雨ですが、発根するまでは吸水力がなく湿害に弱いため、排水対策が重要となります。
“The direction for planting: East? South? – More importantly, drainage measures! (Horikawa Gobou 02)”
There are various opinions on the direction in which “Horikawa burdock” should be planted. However, what truly matters is not the orientation but the drainage. The planting season falls during the rainy season, but until the roots develop, the plant has low water absorption capacity and is susceptible to water damage, making drainage measures crucial.