堀川ごぼう

京野菜【堀川ごぼうの栽培方法】乾燥後の長雨は白絹病に注意・農薬よりまず消石灰

この記事では、「堀川ごぼう」で発生しやすい「白絹病」を予防するため行う「消石灰施用」について紹介します。(堀川ごぼう04)

この記事では、「堀川ごぼう」でよく発生する「白絹病」の予防方法について紹介します。また付録として、今回の内容に関連した「石灰質資材」の種類や特徴についても説明しています。(堀川ごぼう04)

雑草を大量にすき込むと、発生リスクが高まるので要対策です

 「堀川ごぼう」は、一度栽培したゴボウを苗として定植しますが、傷だらけの状態で埋設するため栽培初期は土壌病害にとても弱くなっています。
 特に、雑草が繁茂していた圃場で栽培する時は、「白絹病」の菌密度が高まっているので対策は必須となります。

 「白絹病」が特に繁殖しやすい条件は、梅雨から夏終わりの高温多湿な時期になります。しかし、繁殖するのはそうかもしれませんが、感染しやすくなるのは乾燥が続いた時といわれています。

 今年(2025年)の梅雨のように猛暑を挟んだ変な気候の時は「乾燥で感染→降雨で繁殖」のパターンが予想されるので可能な限りの対策が必要です。

消石灰で株元をアルカリ寄りへ

 「白絹病」は酸性土壌を好むとされていますから、予防には「石灰質資材」によるアルカリ側への矯正が有効となります。

 「石灰質資材」の施用は「株元へ散布+土寄せ」で行います。土寄せは、管理機による通路除草をラセンずきで行うと、株元まで土が飛び省力化できます。
 なお、施用時期は「感染しやすくなる乾燥時」ですから、梅雨の間に真夏日が続くようなら、その時が効果的なタイミングです。

 使用する「石灰質資材」は「消石灰」がおすすめ。pH矯正に速効性が期待できるからです。土作りではなく病害防除に使用するわけなので速効性が一番大切です。

 なお、よく使用される資材として「苦土石灰」がありますが、遅効性で矯正力も小さいためおすすめできません。

 「株元にまくと根の障害が心配」という方がいるかもしれませんが、「堀川ごぼうの根は苗の切断面から発生」するため根が焼けることはありません。(切断面はうねの中深くに埋まっています)

 また、似たように事例として京都府産落花生の産地では「株元施用で白絹病対策」が定番化しています。(舞鶴市の神崎地区には砂丘があり高品質落花生の産地です)

付録記事:「石灰質資材」について

 日本は雨の多い国ですが、気象庁の報告では、都会だけでなく、全国で降る雨のほとんどが「酸性雨」とされています。
 「酸性雨」とは、空気中の酸性物質が雨に溶け込み、通常の水より強い酸性を示す現象です。この「酸性雨」は、川や湖、土壌を酸性化して、生き物たちに悪影響を与えるほか、コンクリートを溶かしたり、金属に錆を発生させたりして建物や文化財にも被害を与えます。

 露地圃場には、この「酸性雨」が降ってくるわけですから、何もしないでおくと、土壌が強く酸性化してしまい、多くの作物にとって生育しにくい圃場になってしまいます。
 そのため、作物を栽培する前には、酸性化した土壌を改良して、酸性の度合いを弱めてやる必要があります。

 ここで活躍するのが「石灰質資材」です。「石灰質資材」とは、名前のとおり、石灰岩を主体とした土壌改良材のことで、そのアルカリ成分により、酸性を中和する効果を持っています。
 この「石灰質資材」には、いくつかの種類があり、それぞれの特徴を理解して使いこなすと、より良い圃場づくりができます。

 ここでは、よく使用される5つの「石灰質資材」について説明します。

 1つ目は「生石灰(せいせっかい)」です。
 石灰岩を900℃以上の高温で焼いたものを、白い粉末状にしたものが一般的です。
 石灰質資材の中で最も強いアルカリ性の性質を持っているので、酸性を中和する力も最も高く、すぐに効果が現れます。しかし水を加えると激しく発熱するため、取り扱いには十分注意が必要です。
 そのため、散布した後は、すぐに作物の播種や定植はできず、栽培が可能となるには、2週間以上かかります。

 2つ目は「消石灰(しょうせっかい)」です。
 「生石灰」に水を加えて加工したものが「消石灰(しょうせっかい)」で、こちらも白い粉末状をしています。
 「生石灰」に次いで高いアルカリ性の性質を持っているので、酸性を中和する力も十分持っています。水を吸っても「生石灰」のように発熱はしませんが、強い効果のため、種や根に触れると、障害を起こしたり、枯らしてしまったりする場合もあります。
 そのため、「生石灰」同様、散布した後は、すぐに作物の播種や定植はできず、栽培が可能となるには、2週間以上かかります。

 3つ目は「炭酸カルシウム」です。「炭カル」と省略したり、「炭酸石灰」と呼ぶ人もいます。
 「炭酸カルシウム」は、薬品の名前のようですが、農業用語では「石灰岩」を粉砕しただけの資材のことを指します。
 値段が手ごろで、他の石灰質資材に比べ、アルカリ性が弱めで、ゆっくりと効果が出てくるため、安全な使い方ができます。
 粉状の商品が多いですが、より効果が長続きさせるため粒状にしたものもあります。また、運動会などのライン引きには、昔は「消石灰」が使われていましたが、アルカリ性が強いため、現在ではこの「炭酸カルシウム」が使われています。
 「炭酸カルシウム」は、散布した後でも、すぐに播種や定植ができますが、効果がゆっくりと現れるため、作業の2週間以上前に散布し、土になじませておいた方がより効果的です。

 4つ目は「苦土石灰」です。
 この資材も石灰岩を粉砕したものですが、カルシウムの他にマグネシウムを含む石灰岩を原料としています。マグネシウムは「苦土」とも呼ばれることから、「マグネシウムが入った石灰」という意味で「苦土石灰」と名付けられました。
 「炭酸カルシウム」と同じく、「生石灰」や「消石灰」ほどアルカリ性が強くなく、効き方もゆっくりです。さらに、マグネシウムも含むため、植物に必要な微量要素の補給にも役立つことから、野菜づくりでは人気の高い石灰質資材です。
 この資材も、散布した後すぐに播種や定植ができますが、効き方がゆっくりのため、作業の2週間以上前に散布し、土になじませておいた方がより効果的です。

 最後は「有機石灰」です。
 牡蠣やホタテの貝殻や、卵の殻などを粉砕したもので、細かく砕いた粉末状のものから荒く砕いた粒状のものまで様々な形態の商品が作られています。
 「有機石灰」の大きな特徴は「水に溶けにくい」ことです。「牡蠣は水の中で暮らしているので、その殻を砕いた資材は水に溶けにくい」とイメージするとわかりやすいと思います。そのため石灰質資材」の中では、最もゆっくりと効果が現れます。
 酸性を矯正する効果は、すぐには現れませんが、効果が長続きすることや、多様な微量要素を含んでいること、土を柔らかくする力も持っていることなど、他の石灰質資材にはない特徴を持っているため、使い方のコツを理解すると、大変便利な資材と言えます。
 「有機石灰」は、「炭酸カルシウム」や「苦土石灰」と同じように、散布した後すぐに播種や定植ができますが、効き方が特にゆっくりのため、作業の2週間以上前、できれば1か月前に散布し、土になじませておく必要があります。

 ここで、お気づきの方もあると思いますが、どの石灰質資材も、播種や定植の直前に施すのではなく、2週間以上前に散布して、土に混ぜておくことが大切です。

「生石灰」や「消石灰」は作物を傷めないため、「炭酸カルシウム」や「苦土石灰」、「有機石灰」はすぐに効いてこないため、と理由は違いますが、石灰質資材は、栽培を始める2週間以上前に散布して土と混ぜておくことが、使い方のコツと言えます。

 今回は、雨で酸性化した圃場の矯正の面から石灰質資材を紹介しましたが、資材が持つカルシウムの成分は、作物が生育するためには欠かせない養分です。
 カルシウムが欠乏した土で栽培すると、芽や根の発達が抑えられたり、トマトなどの果菜類では「尻腐れ」が発生するなど様々な生理障害の原因となります。
 そのため、露地圃場では、カルシウムの補給も兼ねて、1年に1度、石灰質資材を散布することをお勧めします。

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まとめ

 「堀川ごぼう」の「白絹病」予防には、「消石灰」の株元施用が予防に効果的です。「白絹病」は酸性土壌を好むため、pHを上昇させることで感染を抑えることができます。

“Kyoto vegetable: How to cultivate Horikawa burdock — After dryness, be cautious of Southern blight during prolonged rain; prioritize slaked lime over pesticides.”

To prevent Southern blight in Horikawa burdock, applying slaked lime around the base of the plants is effective. Since Southern blight thrives in acidic soil, raising the pH can help suppress infection.