この記事では、賀茂なす栽培の初期に発生する「青枯れ」症状について説明します。

「タコつぼ」定植は「塹壕戦」
露地で賀茂なすを定植した後の注意点です。定植はホーラーでマルチに穴を開けて行いますが、その後の管理は「圃場の土質に注意」して行ってください。
危ない土質とは「粘土質」のことです。水田クラスの粘土質圃場なのに、前作が畑作だったからと安心してしまうと「青枯れ」が発生するかもしれません。
ただし、ここで注意したいのは「青枯れ」であって「青枯病」ではないということです。つまり「株全体がしおれる」症状だけれど「青枯病菌」によるものでありません。
では、なぜこのようにしおれるのかというと「ホーラーで開けた穴がタコつぼになった」からです。まわりが粘土なので排水が極端に悪い穴になってしまい、これを称して「タコつぼ」と言ったりします。
この穴には、降雨だけでなく潅水により水が入ってきます。そしてこの水はなかなか排水されず、「タコつぼ」にたまった状態がつづきます。この劣悪さは、第1次世界大戦の塹壕みたいですね。
超過湿でピシウム菌が繁殖
この状況で病気が発生しないわけありませんから、やっぱり出てきます。出てきやすいのは「ピシウム菌による根腐病」です。ピシウム菌は「苗立枯病」の病原菌として知られています。(大根の地際部がくびれて腐るあれです)
この菌は「過湿ストレスを受けた根」で増殖し、根毛などを腐らせるため「根の吸水力を激減」させるため地上部が急にしおれます。これを見た方がよく「青枯病」とまちがえるわけです。
このような失敗は野菜だけでなく果樹でも見かけます。水田に丹波栗を植えたり、赤土圃場にオリーブを植えたりなど乱暴なことを行うと生育停止や枯死につながります。
*「石川県病害虫診断事例集 ナス根腐病」石川県農業試験場
根が抜けだすまで応援が必用
では、粘土質圃場に定植してしまったときはどんな対策があるのでしょうか。
「なすは水で作るというくらいだから大丈夫では」というのは半分まちがっています。まだ根が広がって活着していない状態では、排水不良はとんでもないストレスとなります。
ただし「半分」と言ったのは、活着が完了し根がうね内へ広がってしまえば問題は解決されます。つまり活着するまでの対策が必用というわけです。
しかし、以前は苗立枯病用の農薬があり潅注処理できましたが、近年は登録がおりていないので殺菌剤は使えません。過酸化水素の資材で根に酸素を供給する案もありますがコストがかかりすぎます。
じつは対策は簡単です。降雨で穴に水が入ってくることは「マルチ被覆で浸みこみ防止」「定植後に行う不織布トンネル被覆」「葉による雨除け効果」で軽減できます。
なので、穴に水が入ってくる最大の原因は「農家が行う潅水」です。つまり「活着するまで潅水しない」のが一番の対策となります。
まとめ
粘土質圃場では定植穴が「タコつぼ」になるためピシウム菌が原因の「根腐病」で「青枯れ」が発生します。対策は「活着するまで潅水しない」ことです。
“Octopus pots” lead to wilt—but most cases aren’t actually bacterial wilt. (Kamo eggplant 02)
In clayey fields, planting holes tend to form “octopus pot” shapes, leading to “root rot disease” caused by Pythium fungi, which results in “bacterial wilt.”
To prevent this, avoid irrigation until the seedlings have successfully established themselves.