万願寺とうがらし

大きな穴で「白絹病」予防・発生源は自分(万願寺とうがらし04)

この記事では、万願寺とうがらしで問題になっている「白絹病」の対策について説明します。

注目されだした「白絹病」

 万願寺とうがらしの防除すべき病害として、近年あちこちの産地で「白絹病」が取りあげられるようになりました。ところが舞鶴市だけで作っていた時代には、この病気が問題になることはありませんでした。どうしてでしょう。

 「白絹病」は、圃場にすき込んだ「雑草や未熟な堆肥」が主な感染源とされていますが、健全な株ならそうそう発病しないと思います。
 また、過湿な土壌状態が続くとストレスを抱えた地際部から発病しますが、出たという報告は梅雨に入ってからではなくゴールデンウイークのころから聞くようになりました。まだ乾き気味の時から出てきます。
 こんな早い時期からあちこちで発生するのは、どうやら定植後の初期生育時に問題がありそうです。

*参考「ピーマン・ししとう 白絹病」こうち農業ネット(高知県農業振興部)

原因は小さな穴

 定植後の圃場を観察すると2つの違和感を感じました。特にGIを取った「万願寺甘とう」の中丹地域で「京都こだわり農法」とは違う定植方法が広く行われていたのです。
 その定植方法とは「マルチに小さな穴を開けて定植」し「株の両脇近くに寄せた潅水チューブで積極的にかん水」するというものです。これはマズイ×2でしょう。

 1つ目は「地際部のダメージ」です。
 地温を高めるために黒マルチ被覆をおこないますが「晴れの日はマルチ内の空気が高温」になります。そしてその熱い空気は出口をもとめて定植穴に向かいますが、定植穴が小さいと「すごい勢いで株元から吹き上げる」ことになります。
 これでは地際部に大きなダメージを受け病気に対する抵抗力がいちじるしく低下するでしょう。

 2つ目は「株元の常時過湿」です。
 なぜか潅水チューブを株元に寄せることがはやっています。これは「根鉢が乾かないよう」せっせと潅水しやすいからですが、根鉢程度の根量ではそんなに吸いきれません。
 ここに、1つ目の「地際部ダメージ」が加わると「傷んだ地際部が過湿状態になる」わけですから「白絹病」の発生条件にぴったりです。

 ではどうすれば良いかというと、京都の農家なら「京都こだわり農法」の理解をすすめ励行しましょう、で解決です。
 具体的には「定植穴を大きく」し「手潅水」することです。

対策1は「大きな穴」

 定植穴を大きく開けるのは「大きければ熱風が弱まるから」ではありません。(大面積の紫ずきんなんかではここまででOKとしますが)
 大きな穴なので多量の土がマルチ上に掘りあげられます。その土を「穴の周囲に戻しマルチを押さえる」ことで株元に吹き上げてくる熱風を防止するのが目的です。

 この大きな穴を掘るには「ホーラー」を使いますが「掘った土をマルチ上に置く」ことができる可動式を選びましょう。
 サンエーの「開閉式移植兼植え穴あけH110PまたはH135P」なんかがおすすめです。ただしメーカーが推奨する定植方法は「京都こだわり農法とは違う」ので注意が必要です。

*参考「開閉式移植兼植え穴あけ」株式会社サンエー

対策2は「手潅水」

 「手潅水」とは、ホースの先に軍手をかぶせ1株ずつていねいに潅水していくことですが、反対意見が2つありそうです。「株元潅水なら同じ」「すごくめんどう」です。

 1つ目の答えは「株元には潅水しない」です。
 対策1でマルチ穴の周囲を土で押さえると書きましたが、そのとき「根鉢の外側にドーナツ状の溝」をつけておきます。そして潅水はこのドーナツに行うので株元は過湿になりません。
 さらに良いことに、根鉢の周囲を濡らすことで根をおびき出す効果つまり活着促進効果も期待できます。
 また、ドーナツ溝への潅水は「ホースを1回転」させて行いますが、この時マルチ上なら水がかかってもかまいません。マルチにかかった水は定植穴に向かってすべり落ちていくからです。

 2つ目の答えは「そんなに潅水しない」です。
 潅水はドーナツ溝が乾いたらおこなう程度の回数でかまいません。定植後の潅水の目的は「しおれ防止」ではなく「活着促進」です。
 なお潅水回数や量が少ないからといって、株がひどくしおれることはありません。なぜなら活着するまでは「不織布トンネル被覆」をおこなっているはずですから。

昔に戻しましょう

 以上2つの対策、というより基本に戻すことで「白絹病」の発生を抑制できるでしょう。舞鶴市だけで1億円を達成した技術はもっと尊重すべきだとおもいます。

 最後に、潅水チューブはどう使うのかというと「うねの両肩に設置」し「追肥開始」から使用します。活着するまでは不要ですが、活着してからは根の広がりをおびき寄せて促進するため「わざと離れた所で潅水・施肥」するわけです。

まとめ

 「白絹病」は、定植穴は大きく開け、ドーナツ潅水することで発生を抑えられます。

Prevent “white mold disease” with large holes—the source of infection is yourself. (Manganji tōgarashi 04)

“Southern blight can be suppressed by making large planting holes and using donut irrigation.”