この記事では、夏の発芽不良を引き起こす4つの原因について説明します。最近よく聞かれるのが「夏用の新品種が必要」という課題設定ですが、これは「夏どりの品質向上」のためであり「発芽不良対策」ではありません。うまい農家はちゃんと発芽させていますから。

ゴロゴロは✕、サラサラが○
1つ目は「堆肥の品質」です。マニュアルなどに完熟堆肥を施すと書いてありますが、最近では自作でもしなければこれは無理というもの。
しかし、だからといって考えなしに施すというのは困ります。低品質の堆肥でも、ひと手間加えるだけで「かなりマシ」になるから。夏は発芽が悪いなあという方は、これをしていない場合が多々ありますよ。
そのひと手間とは、堆肥をふるいにかけることです。特に、牛糞とバーク(木の皮)が入っている堆肥では必須の作業と言えます。
理由は、塊状のものを土に混ぜないようにするため。牛糞の塊やバークの欠片が入ると土の物理性が改善されそうな気がしますが、それはかん違いです。
良い物理性を表す言葉の一つに「団粒構造」というのがありますが、これは土に塊を混ぜるとできるものではありません。粉状になった堆肥や堆肥成分の腐植を土に混ぜることでできる塊のことだからです。今回のはなしとは関係ありません。
では、なぜ大きな塊を土に入れるとダメなのでしょうか。乾いた牛糞やバークは水をはじくためなかなか湿りません。大きな塊の場合はもっと湿りません。
そのため、こんなものを土に混ぜてしまうと、ハウスの潅水チューブ程度では湿らせることは困難です。そのため、土中に乾燥材を混ぜ込んでいるのと同じになります。
圃場全体が湿らせにくいだけならまだ対策は可能ですが、この塊には「細根を焼く」効果があるので夏は致命的です。
発芽して根が伸び始めた時、この塊に接触したらどうなるでしょうか。夏に初発の根が損傷するということは、発芽後の地上部を支える水分補給が絶たれることです。そうなれば地上部はすぐに枯れてしまい、それを見た方は発芽不良と思うでしょう。
ですから、品質の悪い堆肥は「大きな塊をふるいにかけてから施す」ことが大切なのです。
ふるう方法としてよく行われるのが「金網を枠に張り、片方に紐を付けて天井から吊り下げる」という仕かけです。この枠の中に堆肥を入れて前後に揺さぶると、大きな塊は枠内に残るというわけ。
なお、枠の両側に紐をつけた方がよいのではと思うかもしれませんが、片側だけの方が枠内に残った塊を捨てやすくなります。
スカスカは✕、フカフカが○
2つ目は「堆肥の種類」です。発芽不良を起こしている方の圃場の土は、フカフカを通り越してスカスカになっていることが多くあります。
スカスカになった土は保水性が極端に低下し、乾きやすい圃場になってしまうのです。こんな圃場で夏に播種しても芽が出るわけないですよね。
これは、土壌の物理性が悪化している結果ですが、その原因はかなりの確率で農家の土づくりミスです。
土壌物理性は化学性に比べ変えることが難しいとされています。これが大きく変わったわけですから、間違った土づくりをものすごい努力をはらって行った結果とも言えます。
その間違った努力とは、籾殻堆肥を無計画に施すことです。つまり、土に籾殻が大量に混ぜられてしまったため発生した人災というわけ。
この実例を以前見たことがあります。水菜栽培を始めた農家で発芽不良が多発していました。調べてみると、山を開いた圃場なので土質は真砂土。このガチガチをフカフカにするため物理性を一気に変える必要がありました。
そこで出た処方箋が「どかんと籾殻堆肥を施す、5t/10aくらい入れてね」です。その結果は劇的なもので、一気にフカフカ欠株率ゼロになりとても喜ばれました。
ところが、隣の地域で水菜栽培が始まった時、あの良い事例をマネしようとなったわけなのですが、指導者が何を間違えたのか「毎年5t/10a入れましょう」ということに。
そのかいあって「見事なスカスカ圃場となり、全員夏は発芽不良」になってしまいました。
では、こんなことになってしまった圃場を改善するにはどうすればよいのでしょうか。腐植補給は必要だけど、変な堆肥を入れてこれ以上スカスカになっては困ります。
大丈夫です、良い資材があります。腐植だけを施せる「アヅミン」を使いましょう。上記の困った例の場合も、堆肥を「アヅミン」に変えることで乗り切ることができました。
ただし「アヅミン」をやり続ければいいのかというと、そういうわけにはいきません。
腐植が補給され団粒構造ができるのは良いことなのですが、透水性や通気性を最適化するには役不足。それには「粗大有機物の入ったいわゆる堆肥(糞主体は厩肥と言い区別することも)」が必要です。
粗大有機物とは何かというと、稲わらや籾殻などのことです。最初に「もみ殻堆肥を無計画に施すとダメ」と書いたのは、こういうことだから。
入手しやすい籾殻堆肥をうまく使いこなすには
①籾殻堆肥を連続施用して発芽不良が出始めたら「現場透水性」などを調べる
②土がスカスカになっていたら堆肥をアヅミンに変更
③スカスカが解消されてきたら腐植量を調べ基準値に達していたらアヅミン施用をやめる
④排水性が衰えてきたら籾殻堆肥の施用を1t/10aで再開
といった計画的な土壌管理が必要です。
②に続きます
Kyoto Vegetables: How to Grow Mizuna — 4 Causes of Poor Summer Germination
Before Blaming the Variety: Part 1 – Lumpy and Hollow
This article explains four key causes of poor germination during summer.
Lately, there’s been growing discussion around the need for “new summer-specific varieties.” However, it’s important to clarify that this demand is primarily aimed at improving the quality of summer harvests—not at solving germination issues.
Skilled farmers are still able to achieve successful germination, even in summer conditions.
