この記事では、小さなナス「もぎなす」の特徴について紹介します。(もぎなす01)

もぎやすいから「もぎ」
京都の聖護院村(今の左京区聖護院、京都大学の少し南)では、江戸時代天保年間の頃に2つの画期的な育苗技術(わら踏み込みによる「温床育苗」と保温資材「油引きした障子」)が発明され、苗もの産地として知られるようになります。
「温床育苗」の方法は、苗床の下にわらを踏み込み分解したときに出る熱を保温に利用するものです。
「油引きした障子」に使用する油紙は、保温だけでなく「やんわりと光を通す」性質があり、うまく使うと良い資材です。乙訓のトンネル早熟ナスでは平成の頃まで油紙トンネルでしたから。(筍が終わるまで開閉なんてできないため)
そんな聖護院村で幕末のころ「極早生・わい性・小ナス」の変わったなすが誕生しました。それが「もぎなす」です。(わい性とは背が低い性質のことです)
できた当初は苗として売られず、育苗農家が自分で栽培したようです。
その特性は「暖かい育苗床で促成できる、育苗床で栽培できる株の小ささ、収穫労力の少ない小さい果実」とも読み替えることができますから、当時珍重されたミニ野菜「花しばり」として育苗農家の良い副収入になったのではないでしょうか。
でもついた名前は「はやなす」でも「ちびなす」でもありません。「もぎ」って何のことでしょうか?
「もぎ(もぐ)」とは「取り外す」ことを意味しますから「もぎなす」という名前は「取り外しやすいナス」という意味になり、これは収穫方法に由来しています。
「もぎなす」の果実は、ハサミを使わなくても「手で果実を持ち上にクイッと持ち上げただけでポロッとはずれる」ので、その収穫する様子からつけられた名前なのです。八百屋さんで「もぎなす」を見ただけでは「?」となるのは無理ありませんね。
「もぎなす」はあまり宣伝されていない京野菜ですが、収穫体験すると面白い京野菜なので食育や観光に使えるのではないでしょうか。
なお名前の由来にはもう一つ言い伝えがあり「百万遍の茂木さんが作った」というものですが、ここでは「もぎやすい説」をとりました。
ヘタがめくれて日当たり良好
「もぎなす」にはもう一つ大きな特徴があります。それは「ヘタが反り返る」ことです。
ヘタが反ったら何がいいのかというと、ヘタが反ることで「本来ヘタに隠れる部分も紫に色づく」からです。
つまりヘタを取り除くと「ほぼ全体が紫色」なので、料理や漬物で使う時「色が均一な食材」「未熟感がない」など食材としての幅が出てきます。
これが、普通のナスを「若取り」したものだと「ヘタがベロンと果実を覆っているのでヘタを外すと半分くらい白い肌」になってしまいます。

ここまで書いておいて何ですが、「もぎなす」は京料理の食材として「小さくて紫色」という特徴を活かした様々な・・・とまでは言えないでしょう。
できたのが慶応年間から明治初年なので「ぎり伝統の新参もの」ですし、なんといっても「果皮がしっかり(硬いともいう)」しているので、「漬物」以外では「預け鉢」の一品的なあつかいが多かったようです。
しかし、現代の食材として魅力がないかというとそんなことはありません。今は色々な料理法がありますから「今でこそ」の魅力を発見してほしいと思います。
まとめ
「もぎなす」は極早生の小型ナスです。「もぎ」の意味は、ハサミを使わずに「もぐだけで」収穫できる特性に由来します。
また、ヘタが反り返っているのも特徴です。果実がすべて紫に色づくため、きれいな食材として重宝されました。
“Lifted and harvested – a bent calyx with a full-body tan (Moginasu 01)”
Moginasu is an early-ripening, small-sized eggplant. Its name comes from its characteristic of being harvested simply by plucking, without the need for scissors. Another feature is its curled calyx. The fruit turns completely purple, making it a prized ingredient for its beautiful appearance.