この記事では、丹後地域の重要コンテンツのひとつ「丹後フルーツ」について紹介します。第2回は「苺」についてです。(海の京都04)
第2回からは個別のフルーツについて紹介していきます。その内容は、一般向けパンフからではなく、現場で接客するスタッフ用のハンドブック「丹後のたからもの おもてなし手帳【フルーツ編】」を参考にしています。そのため各項目の最後には、暗記してほしい3つの売り文句が書いてあります。
丹後の苺
丹後で一番早く苺栽培を始めたのは、昭和50年頃の宮津市東部の栗田(くんだ)地域とされ、多い時には50戸の農家が作っていました。
しかし丹後から都市部へ運ぶ手段がない時代なので、地元だけでは売り先が限られることから次第に減っていきました。
なぜ運べなかったかというと、品種の問題が大きかったようです。かつての京都府では、山城園芸研究所(統合され現農林センター)が「宝交早生(ほうこうわせ)」の苗を無料配布していたため、府内の都市近郊で苺栽培が盛んでした。
ところが、この「宝交早生」は美味しいのですが輸送性が最悪でしたから、丹後でたくさん作っても売れなかったわけです。
ところが最近、京丹後市の久美浜町、網野町、丹後町といった地域で苺栽培を始める農家が増えてきており、丹後産苺が勢いを盛り返しつつあります。
これは、広域流通に向く品種が現れたことと、養液栽培により作期を拡大できたことが大きな要因でした。
また、品種変更の時に今でも人気の品種「章姫(あきひめ)」をいち早く取り入れたことから、丹後には美味しい苺があるとの評判も広がりました。
さらに、「海の京都」による観光振興により地元法人が農園部門を活発化させたことで、直売所や摘み取り農園が増加しています。
*ポイント*
・宮津市で始まり、現在は京丹後市で盛ん
・主力品種は「章姫」、酸味より甘みが強く大果
・観光向けの直売や体験農園に力を入れている

*参考:京都いちごプロジェクト(京都府農産課)
京都府内の苺狩りや直売を行っている農園を紹介しています。
丹後産苺が美味しいワケ
実は美味しい苺を食べようと思えば、1~2月頃の寒い時期に食べるのが良いと言われています。収穫までに時間をかけられるため、じっくり完熟させることができるからです。
丹後地域は太平洋側の産地に比べ、冬はもちろん春の温度も低いため「美味しく食べられる時期」が長いのです。
さらに丹後は春まで寒いので、暖かい頃の苺もじっくり完熟しておりコクのある甘さがあります。
*ポイント*
・寒い時の苺は、じっくり完熟して美味しい
・丹後は春まで寒いので、美味しい時期が長い
・春まで寒いので、遅い苺も美味しい
丹後産苺の買い方
丹後の収穫時期は12月中旬~5月中旬頃までが盛んですが、暖かくなると生産量が増え値段も手頃になります。
ただし市場には業務用中心で出荷していますので、苺狩りや直売所・地元スーパーなど丹後のお店でしか手に入りません。
イチゴを買う時のポイントは、とにかく新鮮なものを選んでください。選ぶコツは、ヘタがしおれておらず光沢があることです。色は品種によって違うので、色で見分けるのはオススメしません。
最近交配用にミツバチではなく「ビーフライ」が使われ始めています。これは医療用のハエを農業に転用したものなので、無菌で増殖されており不潔とは無縁です。もちろんハエなので刺しません。
マルハナバチは刺しませんが「ビーフライ」の方がより寒い時期から授粉の仕事をしてくれるので、蟹シーズンから苺狩りをしてもらうためにすごく役立っています。
*ポイント*
・販売期間は12月~5月、特に春がオススメ
・ヘタがしおれておらず光沢あるものが新鮮
・ビーフライは医療用のハエなので安心
*参考:イチゴの新たな花粉媒介昆虫としてのヒロズキンバエ(商品名:ビーフライ)の利用(農林水産省)
*参考:マゴットセラピー・足切断を救うヒロズキンバエ・花粉を媒介(日本マゴットフォーラム)
*参考:「ビーフライ」利⽤マニュアルーイチゴの新たな花粉媒介昆⾍ー(農研機構)
丹後産イチゴの品種紹介
●「章姫」(あきひめ)
丹後の主力品種です。とても大きくなり、1粒50gという巨大なイチゴも獲れます。形は細長い感じで、色は明るい赤です。
甘みが強く「酸味が少ない」ため、かつては「甘いだけ」と言う人もいましたが、女性や子供には大変喜ばれたことから全国的に人気品種となりました。
●「かおり野」
病気に強い品種として導入されましたが、その名のとおりとても甘くて良い香りがすることと、極早生なので苺狩りや直売を早く始められるため、だんだん人気が出てきています。
少しオレンジに近い赤色ですが、果肉は中心部まで真っ白です。酸味が少ないこともあり甘さをしっかり感じることができます。
●京都府オリジナル品種
京都府では「京都いちごプロジェクト」が進められており、その柱の一つが新品種の育成です。
ただし、現在の研究機関はかつての日本初の農業試験場のおもかげはなく、また時間も無いことから、既存品種を「京野菜レベル」で栽培して「ブランド名」を付けることも検討されているようです。(大阪のブランド「ちはや姫」は静岡県育成の「紅ほっぺ」です)
「観光摘み取り」ができる農園の品種構成は次のとおりです。
●マリントピアリゾート(宮津市)
「章姫」「桃薫」「はるひ」「白苺」
●34Garden(京丹後市大宮町)
「章姫」「おいCベリー」「かおり野」「とちおとめ」「天使のいちご」
●Farmおかよし(京丹後市網野町)
「章姫」「かおり野」
●北畿リゾート株式会社(京丹後市網野町)
「章姫」
●岡﨑農園(京丹後市丹後町)
「かおり野」
*ポイント*
・定番は「章姫」、大きく甘い
・「かおり野」も増えている、甘い香りがする
・京都府がブランド苺に動いている
Sea of Kyoto Series Tango Fruits Vol. 2 – Strawberries
This article introduces one of the key features of the Tango region: “Tango Fruits.” In this second installment, we focus on strawberries.