京のブランド産品

【京のブランド産品】ブランド京野菜が必ずしも特別栽培農産物とは限りません・京野菜は4階建て

この記事では、「京都こだわり農法」と「特別栽培農産物」の違いを、農薬と化学肥料を例に説明します。【京野菜の紹介】ブランド京野菜が必ずしも特別栽培農産物とは限りません・京野菜は4階建て(京のブランド産品01)

特別栽培農産物の基準

 「特栽米」などの「特別栽培農産物」表示を行うとき、「地域の慣行レベル」に比べて「農薬の使用回数が50%以下」「化学肥料の窒素成分量が50%以下」で栽培されていることが必要となります。(「環境保全型農業直接支払交付金」を受けるときにも関係します)

 「農薬の使用回数」というのは、農薬の製品名ではなく成分名でカウントします。そのため、散布作業の省力化がはかれる「混合農薬」に3成分入っていたら「1回」ではなく「3回」とカウントします。

 「化学肥料の窒素成分量」というのは、使用する肥料にどれだけ化学肥料由来の窒素が含まれているかを示す数値です。そのため「100%化成肥料」は「窒素全量kg」、「油粕」などの「有機肥料」は「0kg」と簡単ですが「有機入り化成肥料」になると計算がややこしくなります。

*参考「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」農林水産省

 この表示で重要になるのは「地域の慣行レベル」がどう設定されているかです。というのは、この数値が「都道府県ごとに異なる」ので、京都府でも独自に設定が行われています。京都府版には、もちろん京野菜のレベルも載っています。

*参考「京都府における農作物栽培に係る慣行レベル」京都府農林水産部
*参考「京都府における農作物栽培に係る慣行レベル一覧表」京都府農林水産部

 しかし、ここにかん違いにつながる落とし穴があります。それは京野菜の栽培レベルが4階建て構造になっているからです。

 1階部分が「農薬取締法」の守って当たり前の決まり事です。これを守らず販売すると、とんでもないことになり罰せられます。ただし、困ったことに自家用なら・・・

 2階部分が「京都府の慣行レベル」です。これは京都府内で慣行的に使用されてきた数値になります。ただし「農薬取締法」を守っていれば、京野菜として販売することができます。直売所などで売っているものなんかはこのレベルが多いです。

 1つ飛ばして4階部分が「京都府の慣行レベルの50%」です。これは2階部分の数値をもとに自動的に計算されます。
 この数値を達成すると特別栽培農産物を名乗れるので「特栽米」と同じ位置づけで京野菜を販売することができます。旧エコファーマー農家が直売や通販で販売する京野菜がこれにあたるでしょう。

 ところが、このレベルの京野菜が「京のブランド産品」かというとそうではありません。3階部分の「農薬・化学肥料の使用を減らした環境にやさしい農法(京都こだわり栽培指針)の基準」を達成すれば「京のブランド産品」として出荷できるからです。

 これが、京野菜がとった「ブランド戦略の成果」というわけです。

京都こだわり栽培指針の基準

 3階部分の「京都こだわり栽培指針(京都こだわり農法とも)」とは「京のブランド産品」として認証されるため設けられた「京都こだわり生産認証システム」の認証基準となるもので、農薬や肥料についても数値が設定されています。

 「海老芋」を例に、農薬使用回数と化学肥料由来窒素成分量の違いを紹介してみましょう。

                  農薬使用回数      化学肥料由来窒素成分量
   2階「京都府慣行」         13回            64.4kg
   3階「京のブランド産品」      11回            45.5kg
   4階「特別栽培」          06回            32.2kg

 このように「京都こだわり栽培指針」に載っている目標数値は「特別栽培農産物」より少しゆるめになっています。
 つまり京野菜を「京のブランド産品」として出荷する農家は、京野菜を「ゆるい基準なのに高く売る」ことができるわけです。

 なぜこんなことができるかというと「統一した生産方法で栽培し共販する」ことを都道府県単位で初めて取り組んだのが京都府だったからです。

 ブランド化を始めた当時は、全国を見渡しても「都道府県の中でうちが一番」的なブランドしかありませんでした。しかしブランド京野菜は、全ての栽培農家が「京都こだわり栽培」を厳守して作り「京マーク」を付けて京都府産京野菜として出荷することを行ったのです。

 そしてこの取り組みが流通業界に高く評価され、現在よその産地から京野菜が出できても「京マーク付きの京都府産」の方が高値がつく理由です。(今でも最初にやったのは偉いと言っていただけます)

 また農業県でもない京都府で京野菜の産地が増えているのはこういう理由もあるからです。さらにUターンや移住などで農家になる人が京野菜を作ることが多い理由でもあります。

*参考「京都こだわり生産認証制度とはどんな内容ですか」京都府農林水産部
*参考「京のブランド産品(京マーク)って?」京のふるさと産品協会
*参考「京都こだわり農法の定義」全農京都

まとめ

 ブランド京野菜は「京都こだわり栽培指針」により栽培されていますが、より厳しい「特別栽培農産物」の基準をクリアしていなくても高値で取引されています。これは京野菜ブランド戦略の大きな成果といえます。

Brand-name Kyoto vegetables are not necessarily specially cultivated agricultural products. Kyoto vegetables have a four-tier classification system (Kyoto Brand Products 01).

Brand-name Kyoto vegetables are cultivated according to the “Kyoto Commitment Cultivation Guidelines,” but even if they do not meet the stricter standards of “specially cultivated agricultural products,” they are still traded at high prices. This can be considered a major achievement of the Kyoto vegetable brand strategy.