この記事では、海老芋栽培に使用する芋の品種について説明します。

おおざっぱに答えると「唐の芋」です、でも・・・
海老芋の種芋を買おうしたとき、商品名が「海老芋」ではなく「海老芋(唐の芋)」と2つの名前が併記して書いてあることが多いです。
賀茂なすや鹿ケ谷南瓜など多くの伝統野菜は「品種が伝統」ですが、海老芋は「栽培技術が伝統」です。つまり、海老芋という品種があるわけではなく、栽培技術により海老芋ができあがるということです。
*参考「きょうたなべのうぎょう委員会だより2024年3月号」京丹後市農業委員会
そして、その栽培技術にいちばん適した品種が「唐の芋」というわけです。ですから、唐の芋を栽培しただけで「自然に曲がった子芋ができる」わけではありません。では、唐の芋ならちゃんと作れば海老芋になるのでしょうか。
「唐の芋」なら何でもいいわけではない
しかし、はなしはそう単純ではありません。里芋は種子ではなく種芋で増殖するため、けっこう変異が起こります。しかも農家の思いがバイアスとなって作用し、長い年月のうちに農家ごとの特徴があらわれてきます。
これは悪い意味ではなく、昔から作っている農家の種芋は「長年の優良系統選抜」により「わしの海老芋が一番良い」状態になっているということです。逆に言うと、適当に採種すると「株ごとにできが違うダメ農家」になってしまいます。
よく「在来品種の唐の芋を使い」と言ったりしますが、系統選抜するとしないとでは大きく違います。そんなわけで京都府による伝統野菜収集では、海老芋農家を訪ねて「これが我が家伝来の芋だ」という種芋をゆずり受けています。
その時注意されたのが、この芋も油断すると化けた株がでてくるので「採種は良い株からおこないなさい」でした。そして「親芋が大きくなりすぎる株はダメ」とか「葉柄が緑色の株はダメダメ」とか色々なコツも教わっています。
こうして、京都府で保存されている唐の芋は「ただの唐の芋」ではなく「海老芋に最適な系統」となっています。
京都産ブランド品は「京都えびいも2号」を使用
では京都府から出荷されるブランド品は、この「とっておきの系統」かというと、これまた少し違います。ややこしいですね。
ブランド品には、京都府の研究機関が開発した「京都えびいも2号」という優良系統を使用しています。
これは、バイオテクノロジーにより作られた、「京都えびいも1号」をバージョンアップした「最新の優良系統」で、収量が1.5t/10a以上、秀品率が50%以上、孫芋増収という特性を持っています。在来品種の唐の芋といっても素性が違うのです。
ただしこの種芋を入手できるのは「ブランド出荷農家だけ」となっており、一般には販売されていません。残念ですね。
*参考「早生多収なエビイモ栽培用サトイモ新品種候補「京都えびいも1号」」京都府生物資源研究センター、京都府農業総合研究所
*参考「」
まとめ
海老芋に使用する品種は「唐の芋」ですが、海老芋作りに最適なのは「株選抜により採種された優良系統」です。
京都府のブランド栽培では、この優良系統から開発された「京都えびいも2号」が使用されています。ただし市販されていません。
Is the variety really “Tang no Imo”?? It’s not that simple. (Ebiimo 04)
The variety used for Ebiimo is “Kara no Imo,” but the optimal choice for Ebiimo cultivation is a “superior strain selected through plant selection.”
In Kyoto’s branded cultivation, “Kyoto Ebiimo No. 2,” developed from this superior strain, is used. However, it is not commercially available.