京せり

京野菜【京せり】プロの栽培暦教えます

 この記事では、京ぜり栽培の全体像を実践的に把握できるよう、京野菜のプロが行っている栽培技術を栽培暦の形で紹介します。(京せり01)

基本情報

●作型
  ●苗植付け(3月下旬)⇒本圃定植(9月下旬)⇒収穫(11月下旬~3月中旬)

●品種
  ●「京ぜり」京都在来品種、赤茎で香りが高いが作り難い
  ●「お多福せり」京ぜりの良い点を残し作り易く改良した品種、現在はこの品種が多い
  ●「朝鮮せり」は作りやすいが青茎で品質が劣るので使用しない
  ●「山科せり」は京ぜりと朝鮮せりの中間的品種なのであまり使用されない

●圃場条件
  ●遊水池や地下水などの水利条件が良い水田(せり田)で、湛水し水ぜり栽培する
  ●「せり田」の水質は品質(味、香り)に影響するので、圃場は十分注意して選定する
  ●鉄分を含む水質では根が赤茶けてしまうので、水質調査を行ってから栽培する
  ●生育に応じた水管理(水深管理)を行うので、用水量が常に豊富な圃場が好ましい
   下の写真は、良質で豊富な地下水を一日中かけ流しする伝統的なせり田

栽培管理

●苗床準備(3月中旬)
  ・肥料を全面散布し、耕耘・代かきを行う
  ・本圃10aに必要な苗床圃場は1.5a~2a必要となる

●植付け(3月下旬)
  ・横方向の間隔30cm(いわゆるうね間)、縦方向25cm(いわゆる株間)で植え付ける
   栽植密度は1300株/a程度
  ・前年作の本圃で収穫した株の中から、草丈の短いものを種ぜりとして植え付ける

●水管理(3月下旬~8月下旬)
  ・種ぜりが活着するまでは、浅水の湛水管理を行う
  ・活着後も浅水管理とするが、かけ流し管理を行う
   新鮮な水を圃場中にいきわたらせるよう、水の動きに注意する
  ・活着すると地際部からランナーを伸ばし、ほ場全面を覆うように広がる
  ・真夏は根腐れが発生しやすいので、かけ流し管理は絶対に怠らない

●本圃準備(9月上旬)
  ・肥料を全面散布し、耕耘・代かきを行う
  ・本圃では深水管理を行うので、あぜは30cm湛水できる高さとする

●催芽処理(9月中旬~9月下旬)
  ・ランナーを根付のまま刈り取り、1m程度の高さに積み上げ、ムシロ等で覆い催芽する
   数日で葉や葉柄は腐り根だけが残るが、10日程度で新しい芽と根が発生する
   この作業が重労働なので、栽培が減っている原因
  ・催芽処理は10日程度かかるので、定植日から逆算して開始する

●本圃定植(9月下旬)
  ・定植前に再度代かきを行い、10cm湛水しておく
  ・定植は植え付けるのではなく、湛水した本圃にばらまいて行う
  ・催芽処理したランナーは、まきやすく適度に切り離し苗とする
  ・用意する苗は、1.5kg~2kg/㎡を目安とする

●水管理(9月下旬~3月中旬)
  ・苗が移動すると活着が遅れるので、定植後の潅水は注意して行う
  ・新葉が順調に開きだすと根が十分張っているので、湛水量を増やしていく
  ・湛水深は茎葉の伸長に合わせて徐々に増加させていく
   一気に増やすと茎葉が水没するので良くない
  ・湛水深を徐々に増やすことで、茎が長く伸びた京ぜりに仕上る
  ・地下水の場合は、厳寒期は水温を高めるため、深水状態のままかけ流しを行う

●収穫(11月下旬~3月中旬)
  ・45cm以上に生長したら、1日分だけ根ごと抜き取る
  ・地下水等きれいな水で葉だけでなく根も丁寧に洗浄する
  ・赤葉や下葉を取り除き、200gを結束する(出荷先により異なる)
  ・伝統的な規格は、草丈45cm以上が2L、45cm未満がLとなる

*参考:JA京都市「いっぷく」vol.239
*参考:京都市産業観光局 農林振興室農林企画課 KYOTO Vege Style 野菜図鑑

施肥例

●苗床
  ●速効性も必要なので「有機化成肥料」が適している
  ●成分量は、慣行ではN:P:K=8:6:6だが、入手しやすい8:8:8でも良い
  ●施用量は10kg/10aとし、全面散布する

●本圃
  ●有機質肥料と化成肥料を混用し基肥とする
  ●成分量は、N:P:K=9:5:4を目安とする
  ●「油粕」90kg/10a+「燐加安14号」30kg/10aを全面散布する

病害虫防除

●葉枯病
  ・被害葉がある時は、除去してから定植する
  ・本圃内への感染を防ぐため、圃場周辺に生えているセリは除去する
  ・セリに登録があるチオファネートメチル水和剤は、速効性と残効性が期待できる
   ただし、収穫前日数が長いので、定植後に予防剤として使用する
   なお、使用前に登録情報を再確認すること

●さび病
  ・春と秋に発生しやすいので、育苗時に注意する
  ・肥切れすると多発するので、肥効を絶やさない耕種的防除が必用

●てんぐ巣病
  ・セリでの病原は、ヒメフタテンヨコバイ等が伝搬するファイトプラズマ
  ・発病株は発見次第除去する

●モザイク病
  ・セリでの病原は、アブラムシが伝搬するウイルス
  ・アブラムシからの感染は一瞬で行われるので、ウイルスを持つアブラムシを侵入させない
  ・発病株は発見次第除去する

●ニンジンアブラムシ
  ・盛夏期の高温乾燥気候で多発しやすいので、育苗時に注意する
  ・有翅虫は羽ばたかないが風に乗って飛び込んでくるので、周辺圃場の発生状況に注意する

●キアゲハ●ミツモンキンウワバ
  ・どちらも年3回発生し、特に秋の発生が多い
  ・近くにニンジン圃場がある場合は、そこでの発生状況に注意する