なかなかお目にかかれない京野菜「うぐいす菜」を紹介します。小松菜にも「うぐいす菜」という別名がありますが、こちらは江戸野菜ではなく京野菜です。
種の入手がほぼ不可能なだけでなく、栽培方法に熟練を要するため、栽培する(伝承する)農家は一人になってしまったとも言われています。

超小型の蕪「うぐいす菜」
京野菜の根菜類の中でも飛びぬけて小型の蕪が「うぐいす菜」です。「うぐいす」と付くのは、早春の鶯の鳴く頃に収穫にされるからでしょう。(後述しますが、これが小松菜と間違われる原因です)
江戸時代中期の文禄年間に「天王寺かぶ」から早生品種を作ろうとした中で生まれたとされているようですが、今一つはっきりしません。
多分その理由は、コカブの早生品種というだけなら話は簡単ですが、その特徴が「葉の長さは6~7cmなのに株元がぷっくり丸く膨らんでいる」からでしょうか。
栽培期間は1カ月半くらいなので、いくら早生品種と言っても、そんな葉が小さい時に収穫して根が膨らんでいるのは不思議なことなのです。
その不思議な特徴は、品種の特性だけでなく、熟練が必要な栽培方法が大きく関わって生まれています。それが、栽培農家がほぼいなくなった原因なのかもしれません。
その栽培方法については、最後の章で紹介します。
種子は、京都市による農家への委託採種か、京都府農林センターが収集・保存しているだけなので、まず市販されることはないでしょう。
どちらの保存系統も品種特性は間違いないのですが、京都市の種子は農家伝承の本物ですが、京都府のものは少々大人の事情があるようです。
「うぐいす菜」を食べてみたい方は、自分で育てるのは非常に困難ですから、京都市内の八百屋さんなどの専門店に聞くしかないですね。
*参考:「万松青果株式会社(まんまつせいか)」のホームページ
京都中央卸売市場内にあり、京都市から認可された青果仲卸業者さんです。
*参考:「京料理くりた」のホームページ
京都市の木屋町にある料亭です。
*参考:「四寅(よんとら)」のホームページ
京都市の錦市場にある老舗の八百屋さんです。
用途としては、その小ささを活かし「澄まし汁の椀だね」が多かったようです。同じ椀だねに用いる京野菜「青味だいこん」は外葉を外して根を細工しますが、「うぐいす菜」はほぼそのまま椀だねとするため、根が小さくても「きれいに丸い」ことが重要なのです。(丸ではなく六角に面取りすることもあります)
なお上掲の写真はあまり良くなくて、葉の大きさはいいのですが、根の尻詰まりが悪く丸くないので、今一つらしさがありません。(京都市さん転載しておいてごめんなさい)
*参考:京都市情報館・うぐいす菜(京都市農林企画課)
種子は、京都市による農家への委託採種か、京都府農林センターが収集・保存しているだけなので、まず市販されることはないでしょう。
どちらの保存系統も品種特性は間違いないのですが、京都市の種子は農家伝承の本物ですが、京都府のものは少々大人の事情があるようです。
小松菜の別名も「うぐいす菜」
「うぐいす菜」は京野菜ですが、小松菜と間違われることが時々あります。小松菜は冬を通して重宝される葉菜です。
そのため、真冬には「冬菜」や「雪菜」と呼ばれますが、春が近くなると「うぐいす菜」と呼ばれることがあります。
同じ鶯の鳴く時期に取れる菜っ葉なので、同じ名前が付けられたのでしょう。
また、小松菜は江戸野菜なので「うぐいす菜」と生まれた時期がかぶり、どちらも蕪から生まれたとされますから、それらのことも混同される原因なのかもしれません。
「うぐいす菜」の種は市販されていませんが、小松菜の方は下の種袋のように種苗会社の通販サイト販売で「うぐいす菜」を見かけることがあります。
この場合、間違いなく小松菜の方なので、間違って購入しないようにしてください。(小松菜の方も早生の良い品種ですが)

栽培のコツは無潅水

品種特性だけでは作れないと書きましたが、ではその栽培方法とはどんなものなのでしょうか。実は単純。「無潅水で栽培する」だけのことです。
冬期なので、無潅水でも生育させることはそんなに難しくありません。
難しいのは「雨に当たらせないこと」と「うねを乾かすこと」です。しかし、昔と違って現代では「雨除けハウス」や「トンネル被覆」という技術があります。
うねの湿りについても、水持ちの良い「平うね」ではなく、水はけの良い「高うね」にすることで対策できます。
「うぐいす菜」を潅水せずに育てると、地上部の生育が抑制されます。そんな状態で栽培日数が1か月を越えると、根の肥大が始まります。
こうすることで「茎葉がこじんまりなのに根が丸く膨らんでいる」という「うぐいす菜」の外観が生まれるわけです。
でも、播種時には潅水しますよね。そうすると、冬の圃場ではいつまでも湿った状態が続いてしまいます。かといって、播種時に潅水しないと発芽しませんよ・・・
ここでかん違いが発生しています。
発芽というのは、展葉することではなく、発根することです。から、種から根が出てくれば良いのです。
この辺のことは、園芸本にはたいてい最初の基本技術のページに書いてあるはずですが、結構勘違いしている人を見かけてしまいます。そして、そのページでは、たいてい播種後の潅水は強調されていません。
強調されているのは「うね立て時の土壌水分」と「播種前の鎮圧」と「覆土後の鎮圧」です。最後に、この3つについて、野菜では基本的なことなのでサクッと説明しておきます。(他の種が小さい野菜にも応用できます)
●うね立て時の土壌水分
聞いたことがあるかもしれませんが、その土の状態とは「湿っていて手で握った時に団子状態になるが、置くと少し崩れる」程度のことです。
この状態の土壌水分は、野菜が育つのに最適というわけではなく、播種後の発根や定植後の活着に最適ということです。つまり、播種する前には、上記の状態の湿りを持ったうねを立てて置くことが大切なのです。
●播種前の鎮圧
「うぐいす菜」の播種方法は、平らなうねの上にパラパラと種を散らして播く「ばら播き」です。ここで2つの注意点があり、これは「うぐいす菜」の種子の小ささが関係します。
1つ目は「うねのひび割れ等のクレバスに種が落ちないこと」です。うねの上をいくらきれいにならしても、多少のヒビや凸凹は残るものです。
「うぐいす菜」の種は小さいですから、ヒビに落下すると全く発芽しないなんてこともあり得ます。
2つ目は、「種がうねの凹みに入ると覆土が厚くなってしまうこと」です。一般的に播種後に行う覆土の厚さは「種の厚みの3倍」が良いとされますから、「うぐいす菜」も播種後には振るいを用いて細かな土で覆土を行います。
しかし、凹みがあるとその上の覆土が厚くなってしまい、発芽に影響してしまいます。
これらを防ぐため、播種前にうねの上面(播種面)を、大きな板などで抑えつけて鎮圧し、ヒビや凸凹を極力無くしておくわけです。
こうすることで、種が均一にうね上に乗った状態で「ばら播き」できます。
●覆土後の鎮圧
種子が発根するためには「種子と土が密着し、種子が水分を感じられるようにすること」が大切です。(特に紫ずきんのような豆では種のヘソが土と密着していることが必須です)
単に覆土しただけでは、乾いた土が種を覆った状態です。そこで潅水が必要と勘違いが起きるわけですが、必要なのは「発芽に最適な水分の土に種を密着させること」です。
密着すれば自然に発芽に向けたスイッチが入り、発根が始まり、根は水分を求めて下降を始めます。
こうなれば、地上部を展開していくための水分供給が可能になり、根の張りが進めば無潅水でもしおれることはなくなります。
そこで必要となるのが、種子を覆土ごとうねの土に密着させる作業「播種後の鎮圧」です。この作業でも、播種前の鎮圧で使用した大きな板などが使用できます。
以上3つのコツを実行すれば、無潅水で「うぐいす菜」を育てることができるかもしれませんね。もっとも、種が手に入らなければ意味のない話ですけど。
“Kyoto Vegetables – Uguisu-na: The Kyoto Heirloom Green, Not Komatsuna.”
Let me introduce Uguisu-na, a rare Kyoto vegetable.
Although komatsuna is sometimes called ‘uguisu-na’ as well, this one is not the Edo variety—it is the Kyoto heirloom vegetable.
Not only is it nearly impossible to obtain the seeds, but its cultivation also requires a high level of skill. It is said that only one farmer remains who still grows—and preserves—the traditional method for this vegetable.
