プロ農家が実践している時期ごとの栽培管理について紹介します。今回は、6月に行っている作業についての第1回です。この時期の作業は秀品率に大きく影響します。(海老芋47)

生育診断
トンネル被覆を除去し、第1回土寄せが完了したら、株の生育の良し悪しを判断しましょう。うまく活着し根域を増やすことができていれば、「葉数」と「葉の大きさ」に変化が現れています。
これを調べることで、今年の初期生育の良否を判断できます。初期生育の良否は、秀品率・収量・肥大について大きく影響します。
不具合が見られた時は要注意ですが、こんな初期から不具合を生じるというのは「栽培管理の不足や間違い」が原因。海老芋に何が起こったかより、自分が何をしたかを反省しましょう。
調べ方は、圃場内で数株をマーキングし、1週間おきに調査してみてください。

●葉の枚数が一定間隔で増えているか
新しい葉が定期的に次々と展葉してるようならいけば生育良好です。
これは、根も順調に広がっている証拠になります。活着前は育苗培土の肥料を吸っていますが、活着後は局所施肥した基肥を吸いだします。つまり、新根が根鉢から伸びだしているわけです。
●新しい葉ほど大きくなっているか
新葉ほど大きくなっていれば、肥料分を継続して吸収できています。
種芋の養分ではなく、根が局所施用だけでなく全層施用した基肥(第1回土寄せ後ならさらに第1回追肥も)も適切に継続して吸収している証拠です。
葉の展開が滞ったり、葉の大きさが変わらなかったりする時は、根の張りが不十分で基肥をうまく吸えず、種芋や育苗培土の養分をまだ使っていることが多いです。
なお、定植時の葉(2~3枚)は無視したほうがよいです。組織培養で再分化した時の葉と同じで、葉に見えるけれど別物です。定植後に発生した葉(4枚目以降)で判断してください。(上掲の写真を参考に)
定植1か月後の生育目標は「葉の枚数が7枚以上、草丈が50cm以上」としましょう。「トンネル被覆」や「うね間潅水」をしっかり行っていれば難しい目標ではありません。
うね間潅水
活着後は根がうねの中を広がっていくような管理を開始します。それが「うね間潅水」です。うね間潅水を行う場所は「通路」ですから、そこを湿潤に保つことで「株元から通路側へ根を誘引」しようという作戦です。
最近の5月は高温乾燥が発生しやすくなっていますから、すでに5月から「うね間潅水」を始めておられると思います。
していないという方がおられたら、とてもヤバいことです。天気予報は無視して、たっぷり実施してください。明日降るとしても、降水量に関わらず圃場が湿りやすくする作業と考えましょう。
潅水の頻度は「通路が乾いたら行う」ようにします。活着後の根はとても水を欲しがっていますから、しっかり答えてあげましょう。
では、どのくらい水をあげればよいのでしょうか。通路の両端に土のうを置き、たっぷり水を溜めるのはなかなか難しい作業ですね。
水田と違い圃場が均平でないため、やる気はあっても均一に湛水することは難しい。よくあるのが「うねの奥に向かってが高いので、奥までたっぷり溜めようとするとたくさんの水が必用・手前があふれる」などです。
では、うね間潅水は難しいのでしょうか。
●潅水は「量」ではありません
難しいと考えている方の多くが「どのくらい水がたまったか」と「量」を目標にしているようです。
海老芋は水をたくさんほしがるから「たっぷりやらなければ」と思い、水がなかなか行かない場所を基準に潅水量を考え、ものすごい水量が必用と考えていませんか。
さらに一番よくない考えは「これだけたっぷりやっているのだから回数は減らしてもよい」です。
潅水は水分供給の他にも、肥料分や酸素の移動など色々な効果をもたらしています。ですから回数を減らすのは厳禁です。
●「湿りライン」を絶やさないことが大切
では必要な回数とは何回でしょうか。たっぷりやる方の間隔は1~2週間に1回くらいでしょうから、これでは生育が悪化しないまでも促進は無理です。
ここで「少量潅水でも水分は株にとどいている」と考えを変えてください。少量なら作業労力と水量確保の苦労が軽減でき、回数を増やせますね。
では、少量でもほんとうに株に水がとどいているのでしょうか。
うね間潅水をおこなうと「うねの肩に湿りライン」がつきます。このラインは「ここまで水がたまった」という印ですね。
しかしこのラインは、もっと大切な情報をあらわしています。それは「このラインはうねの中まで続いている」です。そして「ちゃんと株まで届いている」証しなのです。
つまり、うねの肩にラインができる程度の潅水でも「その高さまで広いうね全体にしっかり水分が供給された」=「効果的な潅水」ができているわけなのです。
ただし、すぐに乾いてラインが消える程度の水量ではでは足りません。うねの肩にしっかり「湿りライン」が確認できるくらい水をためてください。(下の写真を参照)

さらに、潅水回数を増やし「湿りライン」を絶やさないことも大切です。ラインが残っているうちに次の潅水を行いましょう。(梅雨で降雨が続いた時は別です)
こうすることで、好天が続いても圃場全体の湿りを、海老芋の好む状態で継続することができます。
これなら回数を増やしても労力・水量はそれほどかかりませんね。
では、どのくらいの回数が良いのでしょうか。「晴天が続く」時は「通路が乾いたらラインが消える前に実施」です。
除草
6月になると、初期除草をしていても、雑草が再生したり、新しく発生したりして大きくなっていると思うので、再度除草が必用となります。
この時期には、2つの除草作業「通路除草」と「うね上除草」を行い、初期生育への影響を防ぎましょう。
●「通路除草」は土寄せと同時にできてしまう
5月下旬に「第1回土寄せ」を行っていない場合でも、6月初旬には行うはずです。この時、管理機が通路を耕耘することで、通路とその周辺(うねの肩)の雑草を除去することができます。つまり「通路除草」も「自動的に」行えるわけですね。(必ず管理機を使用し、トラクターの使用は論外)
なので、6月までに通路に生えた雑草は、特に意識しなくてもよいでしょう。
そして、6月に生えてきた雑草に対しては、6月下旬~6月末に行う「第2回土寄せ」が同様の効果をもたらしてくれます。
さらに、7月に生えてきた雑草に対しても「第3回土寄せ」が対応できます。つまり、通路の雑草は放っておいてもかまわないわけですね。
なお「通路除草」を行う時は、通路だけ真っ直ぐに管理機を走らせてください。「うねの上も除草したい」気持ちはわかりますが、絶対にうね本体を耕耘してはいけません。
この時期になると、うね間潅水に引き寄せられたエビイモの根が通路まで伸びてきています。うねの上で管理機を走らせると、せっかく伸びてきた根を切ってしまい、生育が停止してしまいますよ。
●「うね上除草」は動力除草器具が便利
うねの上の雑草を放任してしまうと、梅雨の間に海老芋より大きく生長し大変なことになるかもしれません。
ところが「通路除草」で述べたように、管理機でうねを耕耘することはできません。ではどうするかというと「人力で除草」するしかありません。
しかし、これは大変つらい作業ですす。なんとか機械で省力・軽労化したいですよね。そこでお勧めなのが「刈払い機(草刈り機)」と「除草用アタッチメント」の組合せです。
刈払い機を動力源とし、刃の代わりに「除草に特化した機具」を取り付け駆動させます。取り付ける機具の特徴は「雑草の茎葉を刈る」のではなく、「土の表面を攪拌しつつ雑草の根を掘る・刈る」ところにあります。
この時期は梅雨とも重なるため、茎葉を刈りこんだだけではすぐに再生してしまいます。再生を極力抑え込むためには「根に大きなダメージを与える」ことが大切なのです。
普通の刈払い刃を使用する場合は、刃こぼれを恐れて「少し浮かしぎみ」に作業するため、茎葉切除しかできません。
しかし「根にダメージを与えることに特化した機具」に交換すれば、刃こぼれを恐れることなく土壌表面を攪拌することができ、雑草の再生を防ぐことができます。
参考リンクを張った機具は、三木刃物の実力あるメーカー製なのでお勧めしたいと思います。「2枚刃の無印」より「3枚刃のDX」の方が土壌攪拌力が強いのですが、廉価な「2枚刃の無印」の実力も侮れません。
下の写真は「畑のシェーバー無印」による除草作業ですが、茎葉刈り取りも試してみたところ、なんと「切断力もすごい」ことがわかりました。さすが有名ナイフブランドに協力しているメーカーですね。(上:畑のシェーバーで株元を除草中、中・下:除草終了時の様子)
*参考「除草用アタッチメント畑のシェーバー」三陽金属株式会社
*参考「除草用アタッチメント畑のシェーバーDX」三陽金属株式会社



除草器具を使うことには、意外と忘れてしまう「うねの上を歩かない」対策にもなります。鎌などで除草することは一見丁寧に見えますが、実はとても駄目な方法です。
なぜなら、人がうねの上に乗ってゆっくり移動するわけですから、根がブチブチ切れてしまいますよ。海老芋の根は浅根型なので、上からの圧力にはとても弱いのです。
積極的に「除草アタッチメント」の導入を考えてみてください。
*海老芋の記事をもっと読みたい方は⇒https://qyasai.com/summary-article/
Kyoto Vegetables – Ebi‑imo (Taro): Key Cultivation Tips from Professional Farmers (June)
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