今年も高い確率で猛暑が予想されているため高温対策は必須です。そこで「猛暑に対応した栽培環境・栽培管理ができているかどうか」を自己診断するためのポイントを数回に分けて紹介します。
今回は、ハウス内の高温な空気を排出するための換気方法についてです。(万願寺とうがらし26)

「長期取り」には「高温対策」が必須
「万願寺とうがらし」を長期栽培するためには、夏の高温を乗りきることが必須となります。そして、ただ乗り切りだけでなく「高温期でも収量・品質を確保」することが重要です。
万願寺とうがらしの本家産地の舞鶴市では、かつて1億円産地を目指す技術として、この高温対策の普及が熱心に行われていました。
その対策の目標というのは、「着花を左右する花粉の活力は20~30℃が適温、33℃を超えると奇形リスクが高まる、35℃を超えると死滅リスクが高まる、ハウス内が33℃以上にならないよう対策する」でした。
この「高温対策」でまずやるべきことは「換気によりハウス内の温度を下げる」ことです。ハウスの天面被覆で「太陽光を遮る、反射する」ことも大切ですが、それだけでは「夜間の温度を下げる」ことはできません。猛暑日は「夜になってもハウス上部が40℃のまま」です。こんな環境では着果してもほとんどが「曲がり果」になってしまいます。
なので、まず行うべきは「昼も夜も温度を下げる」こととされ、その技術が今回紹介する「妻面換気」です。逆に言えば、「妻面換気」を行わないと、高温によるリスクが跳ね上がるということです。
*関連記事:【万願寺とうがらし】高温対策①まず妻面換気から始めよう
「側面換気」とは、ハウスの側面のビニールを巻き上げ「側面から側面へ空気を移動させて換気」を行う換気方法です。この利点は、ハウスの前から奥まで一気に開口部を作り、内部の温度や湿度の環境を短時間で変化させられること、開口部の幅を変えることで細かな調節ができることです。
しかし、巻き上げ上限より上の環境を変化させにくいことに加え、果菜類の栽培では「横方向の空気移動が大きく減る」という弱点が加わります(連棟の場合はさらに悪化)。つまり「側面換気」だけでは夏を乗りきれないということ。ではどうすれば良いのかというと、もう一つ換気方法を追加するのが正解です。
その換気方法が、ハウスの手前と奥の妻面で行う「妻面換気」です。妻面をネット張りにすることで、ハウス前後に大きな開口部が出現します。この方法なら「株の垣根にそって縦方向に空気が動く」ので、ハウス内の高温空気が排出されやすくなります。(春・秋は保温のためネットの上からビニールで2重被覆します)
ここで混同しやすいのが「妻窓換気」と「妻面換気」。「妻窓」は形状記憶合金で開閉する「気温の日変化や空中・土中の過湿」の対策資材で、稼働させるのは「春と秋」になります。常時開けておく夏や常時閉じておく冬には使いません。(下開きなのは降雨時に開けても雨が入らないようにするため)
換気方法から来るリスク
<基本技術>
◎夏期の換気を「側面換気」から「妻面換気」に切り替える。
・梅雨明けには、主枝が上限まで伸長・繁茂し、樹形が垣根状となる。
⇒側面から側面への横方向の空気移動が妨げられ、換気効果が大きく減少する。
⇒夏期は新たな換気効果を作る必要がある。
・妻面をネットとビニールの二重張りとし、夏期の「妻面換気」に備える。
⇒夏期にはビニールを除去し、妻面をネット張りとする。
⇒妻面から妻面へ縦方向に空気を移動させ、新たな換気効果を生み出す。
⇒妻面のネットを、なるべく上まで張ることで、夜間にこもる熱気を排出できる。
◎「妻窓」は「湿度調節」の設備なので「高温対策」に使用しない。
・「妻窓」は、下から開くことでもわかるように、降雨時の過湿解消の設備。
⇒梅雨の長雨に効果を発揮する。
・「妻窓」程度の開口部(しも下開き)では、ハウス上部の熱気を抜く効果は期待できない。
⇒夜蛾の侵入防止ネットを張っているため、さらに換気効果が無くなっている。

<リスクの原因>
●妻面換気を設定していない。
・側面換気では、ハウス上部の熱気を抜くことができない。
「妻窓」は換気効果が低く、高温対策には効果がない。
⇒ハウス内が夜間も高温が続くため、高温障害が加速する。
⇒「尻ぐされ」「花粉死滅」「奇形果」等が多発し、最盛期の収益が大きく低下する。
⇒病害虫がハウス全体で発生しやすくなっている。
<対策>
・「ビニペット」のスプリングは3本入るので、うまく仮止めに利用し、妻面にネットを張る。
なお、9月になったら、気温の変化を観察し、ネットの上にビニールを張り戻す。
・前後のドアをネット張りにし、妻窓を外しネット張りする。
・「うどんこ病」と「ハダニ」のリスクが高まっているので、早急に予防防除を実施する。
・「奇形果」「尻ぐされ果」が増加するので、小さいうちに摘果し、樹勢を低下させない。
<リスクの原因>
●追加の高温対策として「天井被覆」を行っている。
・昼間の高温を軽減できても、夜間の高温には効果がない。
⇒昼間の涼しさに騙されず、夜間の対策も必用。
<対策>
・前項の対策を実施する。
<リスクの原因>
●「平面整枝」を行っているので、横方向の風通しのため「強剪定」している。
・ハウス内に3うね(垣根3つ)立てている。
⇒風通しが良くなるとまでは言えない。
・側面の開口部は、ハウスの肩までで変わらない。
⇒ハウス上部の換気には関係ない話。
・強剪定により、果実への日射が増加している。
⇒日焼け果の発生対策が必要となる。
・強剪定により葉数と着果数のバランスに余裕がない。
⇒夏期は教科書通りにいかず、生理障害リスクが高まる。
<対策>
・前後のドアだけでも「妻面換気」を実施する。
<リスクの原因>
●「切り戻し剪定」を実施した。
・換気状況は改善できても、大きく減収する。
⇒株が「元通りに再生」する9月には、換気の悪化も「元通り」。
・全ての主枝を切り戻すわけではないので、残した主枝の上部の高温リスクは変わらない。
⇒最悪の場合、着果数減に加え奇形果・尻腐れ果の多発で、8月の秀品収量は絶望的になる。
<対策>
・9月までに前後のドアだけでも「妻面換気」を実施する。
Kyoto Vegetables – Manganji Togarashi: Professional Growers’ Self‑Check for Extreme Heat Risks (3) Ventilation Methods
With another extremely hot summer expected this year, implementing effective high‑temperature countermeasures is essential.
In this series, we present several key points to help you self‑diagnose whether your cultivation environment and management practices are adequately prepared for extreme heat.
This installment focuses on ventilation methods for exhausting high‑temperature air from inside the greenhouse.

