プロ農家が実践している時期ごとの栽培管理について紹介します。今回は、7月に行っている作業の第2回で、梅雨入りで繁茂しつつある雑草の処理と、猛暑でなくても高湿で起こる熱中症の対策についてです。(海老芋50)

後期除草
海老芋専作農家はいないでしょうから、他の作物と管理作業が重なり、海老芋はほったらかし的な状況かもしれません。潅水さえ気をつけておけば、そんなに手のかかる品目ではないですから。
しかし、そんな方の圃場では中期除草がろくにできていないため、梅雨に入ってから雑草がかなりひどいことになっているのではないでしょうか。
そうなると、7月の重要イベント「第3回土寄せ」に影響が出てしまいます。これはさすがにまずいので、除草作業を日程に入れなければいけません。これが、後期除草です。
●雑草の根は無視して除草する
中期除草を怠ったまま梅雨入りすると、雑草が大きく生長し、根もしっかり張ってしまいます。こんな状況を見てしまうと、これから大変な作業が始まると思いがちです。
何が大変かと聞くと「根も抜くから」と帰ってきます。
しかし、実はそんなに大変ではありません。なぜかというと「地上部だけ刈り取ればよい」からです。つまり、根のことは考えなくても良いのです。
後期除草を行う目的は「第3回土寄せのじゃまにならないようにする」ことだから。土寄せとは、土をうねの上に乗せる作業なので、雑草の地上部が繁茂しているとうまく土が乗らないのです。そのため、除草作業は地上部がなくなるように行えば良いというわけ。
「根が残っていたら地上部が再生する」「根が残っていたらせっかく追肥の肥効が吸い取られる」と思う気持ちはわかりますが、一つ忘れていることがあります。それは、春や秋と違い、これから「海老芋が繁茂期を迎える」ということ。
梅雨入り以降は、海老芋の地上部が大きく生長し「うねの上に大きな傘を広げる」ため、雑草が再生してきても生育が抑制され「過去の栄光を取り戻すことはできない」からです。
当然、地上部が貧弱なのに根だけ広がっていくわけはなく、大切な肥効が奪われることはありません。
●地上部を切除する、ただし花が咲く前に
というわけで、後期除草の方法は簡単。刈払い機でうねの上に生えている雑草の地上部を切除するだけです。
ただし、親茎の近くは子芋の茎葉が発生していますからやめておきましょう。ひどく繁茂しているわけではないでしょうから、放置して、第3回土寄せによる生き埋めと、日傘による日照不足で抑え込めますよ。
なお、除草は雑草の開花前に行い、種ができるのを阻止しましょう。種が地面に落ちると次の発生につながるため今後に禍根を残すことになります。
使用する機具は、普通の刈払い機でもいいですが、地面スレスレで処理しようとすると石が飛び跳ねて危ないですし、刃も痛みます。それが嫌な時は、他の記事でも紹介している「畑のシェーバー」がお勧めです。
もともと地表面を攪拌する機具なので、刃が丈夫にできているのと、石よけカバーが付いているので安全です。そして、刃物メーカー製だけあり、切断能力も十分あることが実験してみてわかっています。
*参考:【海老芋】雑草が大きくなってきたら断根しましょう・通路は中耕培土に合わせて
*参考:「除草用アタッチメント畑のシェーバー」三陽金属株式会社
*参考:「除草用アタッチメント畑のシェーバーDX」三陽金属株式会社

熱中症対策
●7月は曇りの日でも注意
熱中症は、厳しい暑さの日だけでなく、曇りや雨で湿度が高い日も危険が高まります。7月は梅雨とも重なるので熱中症リスクが一番高い時期かもしれません。
次の6つの注意を怠らず農作業を行ってください。
①小まめに水分補給する
作業に集中すると渇きを忘れてしまうことがあります。特に高齢者は渇きや高温を感じづらくなります。20分ごとを目安にコップ1杯の水分補給をしましょう。
②水分だけでなく塩分も補給する
大量の汗をかいた時は塩分補給も必要です。水や麦茶よりスポーツ飲料にしましょう。できれば緊急時に備え、吸収に優れた「経口補水液」も用意しておくと安心です。
*参考:経口補水液OS-1(大塚製薬工場)
なお「塩飴」をなめても良いのですが、どうせなら「塩ラムネ」にしましょう。さらに言うなら「カリウム入り」のラムネ菓子が良いと思います。
緊急の時には唾液が出にくいと思うので、ラムネ菓子ならすぐ溶けるからです。また、水があれば、溶かすことで臨時の「経口補水液」にもなります。
*参考:塩飴󠄀・塩熱飴シリーズ(ミドリ安全)
*参考:塩分チャージ(カバヤ食品)
③昼の前後は作業を避ける
お昼の前後2時間は1日の中で最も暑くなります。「お昼までにやってしまおう」と考え無理に作業を続けるのは、とても危険です。少々早めでも昼休みにしましょう。夕方でもいいじゃないですか。
④服装に気をつける
半袖シャツではなく長袖、半ズボンではなく長ズボン、野球帽ではなくツバ広帽にすると、日差しを多く防ぐことができ熱中症リスクを下げます。
また、「いわゆる空調服」もお勧めです。(空調服という名称は株式会社空調服の登録商標です)
⑤黒玉式熱中症指数計の導入
「黒玉式熱中症指数計」は炎天下でも「WBGT値(暑さの指数)」を計測できるので、露地圃場など様々な現場で携帯する取り組みが広がっています。
熱中症リスクが高まると、大きな警告音で注意を促してくれます。三脚などに取り付けると圃場に設置することもできます。
*参考:黒球式熱中症指数計 熱中アラーム TT-562-NGD(タニタ)

⑥体に異常を感じたら無理は禁物
めまい、頭痛、吐き気などを感じたら、直ちに作業を中止し、涼しい場所で体を冷やしましょう。熱中症は急に症状が悪化するため、人を呼ぶことが難しいほ場内で倒れたら大変です。
無理せず、健康な状態で農作業を行いましょう。
●ファン付き作業服は、風ではなく気化熱で冷却
「空調服」等の「ファン付き作業服」は、小さなファン(送風機)が付いた作業服のことで、夏の作業を熱中症対策にとても有効です。
少し前までは、農家に勧めても「何それ」だったのですが、今では夏作業の必須アイテムとなっていますので、少し詳しく説明します。
「ファン付き作業服」の仕組みは、まず、バッテリーで動く小さな送風機を作業着に取り付け、服の中に外気を取り込みます。
そして、服の中で空気が大きく動き「汗を蒸発させる」ことで体から熱を奪います。いわゆる「気化熱」というやつです。
なので「服の中に涼しい風が吹くから涼しい」わけではありません。
屋内などで使用すると、周りの気温が高いから「効果がないのでは」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、安心してください。「風」ではなく「気化熱」で冷やします。
服の中に冷たい空気を取り込むのではなく、汗の蒸発で体を冷やす仕組みなので、外気が暑くても体温を下げることができるのです。
普通の作業服では、「気化熱」を使った冷却は難しいです。服の中に風が通ってこなければ、汗は蒸発し難くいですから。そうなると、体温が急上昇して熱中症の危険が高まってしまいます。
一方、「ファン付き作業服」は、服の中に機械で常に風を送っているため、体温が上昇すること連続して防いでくれます。
そのため、屋外の作業だけでなく、エアコンが無い部屋や、風が吹きこまない部屋などの屋内でも効果があるので、幅広い農作業で役に立ちます。
また、エアコンを使わないことで、コスト削減や冷房病予防にもつながります。(状況によりますが)
「ファン付き作業服」は結構お高く、中でも使用するバッテリーが一番高額です。でも、そのバッテリーは、冬に体を温める「いわゆる電熱服」でも使用できるので、実はコストパフォーマンスの高い商品と言えるでしょう。(海老芋は初冬から収穫・出荷作業がありますから)
また、服が薄手なのと、バッテリーと送風機が取り外せるので、毎日洗濯して清潔に保つことができます。
*参考:空調服とは(株式会社空調服)
*参考:バートルの半袖エアクラフト(ユニフォームネクストの通販サイト)
*私が使っている製品というだけでお勧めではないです。
室内の細かい作業の時は、半袖なら手元に冷風が来ますから。
Kyoto Vegetables – Ebi‑imo (Taro): Key Cultivation Tips from Professional Farmers (July, Part 2 — Late-Season Weeding and Heatstroke Prevention)
This article introduces the month‑by‑month cultivation management practices carried out by professional growers.
This second installment for July covers how to control the weeds that have begun to flourish with the onset of the rainy season, as well as measures to prevent heatstroke, which can occur even without extreme heat when humidity is high.

