海老芋

京野菜【海老芋】プロ農家が教える栽培のポイント(6月②第2回土寄せ、病害虫防除、謎技術)

 プロ農家が実践している時期ごとの栽培管理について紹介します。今回は、6月に行っている作業についての第2回です。この時期の作業は秀品率に大きく影響します。(海老芋48)

第2回土寄せ・第2回追肥

 第1回土寄せから1か月たった頃に2回目を行います。1回目が5月下旬なら2回目は6月下旬が目安となります。

 1回目は、「秀・4L」にする子イモの芽を5個出させるための作業でしたが、2回目は「セミになるのを防ぐ」ことが目的です。

●子イモの芽はいつまでも真横に伸びていかない。

 子芋の芽は「始めは真横に伸びる」のですが、よく見てください「すぐに上を向いて伸びる」性質を持っています。なので、ちょっと詳しい訳知り顔の方が「芽は土の重さがなくても横に伸びる、だから土寄せは慣行より遅い方が良い」といっているのは正しくありません。

 7月に入ってから2回目を行うと「すでに子イモの芽が上向きに伸び始めてしまっている」ため、親茎の近くを伸びてしまい、親芋の肥大と子芋の肥大がぶつかり「大きいけれど安物のセミ」のできあがりとなります。

 次の写真は、右下のように親から子を離したいのに、左のように子イモの芽が立ち上がってしまってから2回目を行ってしまったため、右上のようにセミ確定となってしまった様子です。

 なお、「次の土寄せで子茎を倒す」という方もいるようですが、海老芋ができる理屈をかん違いしていませんか。なぜなら伝統技術に「そんな作業はありません」から。

●「第2回土寄せ」はこの「上向きに伸びる」のを邪魔するため「早め&株元」に行います。

 そのコツは「早めに親茎の周辺だけにうず高く土を盛る」ことです。こうすることで子芋の動きを抑えつけ、「真上に曲がり難くして斜め上に軌道をそらす」ことができます。

 ただし「親茎から離れた所にまで土を寄せない」でください。子イモの芽がモグラのように土中を真横へ進んで行くわけがないので、「親茎の横にできる肥大時のひび割れ」を登って行ってしまい、くたびれ損です。

 できの悪い産地の栽培マニュアルでは、昔のマニュアルにある「子芋を土の重さで押さえつける」という記述を、2つ前の写真の「空中を横に伸びていること」だけを根拠に「抑えなくても横に伸びるから間違っている」とするものが多くあります。
 この話をまともに信じ芋は大きくなるのにセミばかりという方は、秀品率の高い産地の現地講習会に参加させてもらい考えを改めましょう。

●実施する時期の目安には「子芋の芽の出方」を判断材料とします。

 開始の合図となるのは「子芋の芽2~3本が横に伸びてきた」状態です。目標とする5本には足りませんが土の中では伸び始めています。(次の写真)

 なお、株元をよく見てもらうと、子芋の芽が葉柄を突き破って出てきているのがわかると思うので「外葉かき」が必要ないことがわかりますね。

 では、これ以降は遅いからダメという合図は「子イモの芽が上向きに曲がってきた」状態です。(次の写真)
 このまま放置してしまうと、せっかくの作業がムダ働きになってしまいます。すぐに作業を行いましょう。

●「第2回土寄せ」の行程は、次の4つの作業からなります。

①追肥
 最新の施肥基準により、通路とうねの肩に追肥を施用します。1回目と同じく、大量の有機質肥料(お勧めは油粕)を施しましょう。

 追肥は、うねの上には行わないでください。通路ならうね間潅水で溶けますが、そんなところにばらまいても「雨が降るまで溶けない」からです。
 なお、株元や株間は、葉が茂っていて「雨が降っても溶けない」ので論外です。

②中耕培土
 管理機に「培土板」をつけて「通路だけを走らせ」中耕培土します。培土板で通路脇に盛り土ができますから、この土を用いて人力で土寄せを行います。
 そのため、2回目は土を飛ばすのは厳禁なので「ラセンずき」は絶対に使用しません。

 また、この作業により追肥を通路周辺に混和し、さらに、うね間潅水との合わせ技で早期に肥効を発生させ、海老芋の根をおびき寄せ7月の生育を支えるための「根域拡大」を図ります。

③土寄せ
 通路脇の盛り土をすくい「親茎めがけて放り投げ」てください。普通のクワだとすくえる土が少ないので「ステンレス製のジョレン」(写真)がおすすめです。
 ジョレンには色々なタイプがあるので、製品選びは重さと柄の角度に気をつけてください。

 しんどい作業ですがひとつ救いがあります。それは「親茎の周りだけ盛ればよい」ことです。ただし、土寄せは、実演を見ないといまひとつ理解しにくいので、専門家にOJTをお願いするのが近道です。

④うね間潅水
 土寄せが終わったら、その日のうちにうね間潅水を行います。せっかく追肥を行ったのですから、一刻も早く溶かして肥効を発生させましょう。

病害虫防除

 海老芋の厄介な病害虫は、トンネル除去後の「ウイルス病」、初夏と秋の「疫病」、夏の「スズメガ」、夏と秋の「ハスモンヨトウ」、盛夏の「ハダニ」、秋の「軟腐病」、秋の「汚班病」といったところでしょうか。

●ウイルス病

 ・苗からの圃場持ち込みは防げなくとも、定植後の抜き取りで対応。
 ・アブラムシは、圃場外からではなく、圃場内の既感染株から周辺株への感染拡大が問題。
  圃場内に感染株がなければ怖くないので、薬剤防除は必要ない。
 ・生育中期以降に感染しても、株が大きいので発症しない。しても生育に影響しない、はず。

●疫病と軟腐病

 ・初夏に発病すると、薬剤防除で抑えても秋に再発しやすい。(高温期はお休み)
  土壌からの感染なので、前作が水田ならまず発生しない。
 ・初夏に発生した場合は、種芋の洗浄不足による苗からの持ち込み。
  あるいは「外葉かき」による地際部からの侵入。
  どちらも人為的なものなので、対策は簡単。反省すること。
 ・秋に発生した時の原因は、初夏に発生したものの再発が多い。
 ・薬剤防除をするとコストがかかるが、行うなら初夏の発生時。

 ・秋に発生した場合は、地際の被害部から「軟腐病」を併発しやすい。
  謎技術により8月末や9月前半に土寄せを行うと、地際部ダメージにより感染することが多い。
  「軟腐病」は芋も犯すので、発病株から採種しない。

●スズメガ

 ・最新版防除指針を参照のこと。
 ・ただし、農薬は高いので捕殺が一番良い。
  大喰らいなので食痕を見つけやすく、一匹狼なので全滅は容易。

●ハスモンヨトウ・ハダニ・汚半病

 ・7月以降の問題なので、別記事で紹介。
  ・ハスモンヨトウは初期に摘葉。
  ・ハダニは物理的効果の農薬を検討。
  ・汚班病は肥効が効いていれば発生しない。

やってはいけない謎技術

●トラクターを使用すると生育停止

 ・根域は5月の後半には通路近くまで張っている。
  ・ラセン鋤等を使用すると激しく断根する。
  ・さらに、タイヤがうねを強く鎮圧するので、耕耘幅以上に激しく断根する。

 ・根の吸水力が高いのではなく、広い根域で多く吸水する。
  ・断根による根域減少は、水分・肥料分の供給が減少し、生育停止に直結する。
  ・省力化のためと称しているが、生育が止まったのでは意味がない。
  ・省力化になるというミスリードは、土寄せの意味(寄せる位置等)を理解していないため。
   本当の省力化は、人力作業の大幅軽労化で達成するもの。

 ・土寄せへの理解が乏しいか間違っている。

●「外葉かき」は不要というより悪い作業

 ・効果のない作業を増やすだけ。
  ・「子イモの芽の横伸びを妨げセミになるので外葉を地際部から切除すると良い」が言い分。
  ・外葉の茎の繊維は縦方向なので、放任でも芽は押し開けて横に出てくるから無駄な作業。

 ・病害の発生リスクを高め、次作にも影響する。
  ・地際部から切除するため「疫病」の感染リスクが高まる。
  ・初夏に発生してしまうと、夏期に沈静化しても秋期に再発し「軟腐病」が併発する。
  ・「疫病」発生株は、種芋の付着土により次作育苗時に増殖し、感染苗を定植することになる。
  ・「軟腐病」併発株は、種芋に感染するため、貯蔵時の腐敗原因となる。

●除草剤の使用はコスト増加

 ・雑草が大きく生長してしまうと茎葉散布除草剤を勧める技術者もいるが、コスト増となる。
  ・ナブは使用できると思うが(要登録確認)、機械除草の方がコストを抑えられる。
   *参考:「ナブ乳剤」の商品ページ(日本曹達)
  ・「刈払い機」や「切除も可能な除草器具」による茎葉切除でも効果がある。
   親株が大きく展葉し始めるので株元は日陰となり、雑草の再生が抑制され生育に影響しない。
   「第3回土寄せ」に影響するくらい再生した時は、再度茎葉切除を行う。
   *参考:除草用アタッチメント「畑のシェーバー」の商品ページ(三陽金属)

 ・土壌処理除草剤を勧める技術者もいるが、薬害の心配がある。
  ・注意書きにある大雨を=うね間潅水と考えれば薬害リスクが高まる。
   *参考:「ゴーゴーサン乳剤」の製品ページ(BASF)

*海老芋の記事をもっと読みたい方は⇒https://qyasai.com/summary-arti

Kyoto Vegetables – Ebi‑imo (Taro): Key Cultivation Tips from Professional Farmers (June-2)

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