海老芋

京野菜【海老芋】プロ農家が教える栽培のポイント(7月①採種株の選定)

 プロ農家が実践している時期ごとの栽培管理について紹介します。今回は、7月に行っている作業の第1回で、採種に好適な株の見つけ方です。(海老芋49)

使用している種芋に潜むリスクを理解する

 海老芋に使用する品種は「唐の芋」です。種苗会社から購入した商品としての種芋なら、系統選抜を行っている(いるはず)なので、株ごとの差異は少ないはずです。

 ところが、産地づくりのため公が指定・配布している系統(京都府ではブランド専用品種「京都えびいも2号」)は、もっと良い種芋なのかというと、そう簡単なわけではありません。
 その理由は2つあり、一つは組織培養、もう一つは自家採種です。

●組織培養から来るリスク

 産地づくりに用いられる系統は、大量増殖する必要があるため、往々にして原々種の増殖過程で「カルス経由」の組織培養が用いられています。
 「カルス経由」というのは、生長点を一度カルスという塊に変化(脱分化)させて細かく分割し、その塊一つ一つから植物体を再生(再分化)することで、大量の苗を得る方法です。

 しかし、最後の「再分化」に突然変異のリスクが存在するため、出来上がった全ての苗が同じ性質を持つクローンというわけにはいかないのです。
 中には「親芋だけが大きくなる」とか「子芋の芽が少ない」とか「茎が青い」という、とんでもない役立たずも混ざることがあります。(「京都えびいも1号」は「多芽体増殖」なので変異リスクはとても少ないのですが、諸般の事情で「カルス増殖」の2号に更新されました)

 ところが、産地づくりには大量の苗を一斉に配布する必要があるため、この「爆弾を抱えた」クローン苗を原々種圃や原種圃の苗としてませんか?
 こんなことをしてしまうと、産地では、できの良い株と悪い株が圃場内に混在し、収量や秀品率が想定を下回る原因になります。

●自家採種から来るリスク

 しかし、リスク回避の方法があります。それは、JAや現地の採種圃で「悪い株の抜き取り」を行うことです。意外と多い「個別農家が自分用に実施する採種」も含めてです。
 こうすることで、種芋の性質を良い方向にそろえることができます。

 ところが、この「抜き取り」作業が行われなかったり、行われても農家の「個人の感想」で選別したりすることが多いようです。
 コシヒカリの採種圃では、審査員に叱られながら異形株の抜き取りを真剣に行っているのに、なぜか野菜は適当なことが多い印象です。
 産地での採種時に、ちゃんと系統選抜できていればリスクは回避できますが、できていないと栽培圃場に低収株が混ざり、産地力が低下してしまいます。

 このようなリスクを回避する自衛策はただ一つ、採種を(許可を得て)自前で行い、正しい系統選抜を行い、優良な性質を持つ種芋を確保することです。
 そのためには、どんな株が採種に向いているのかを知り、栽培期間中に優良株にマーキングを行っておくことが大切なのです。

良い性質を現している株を見つけ、採種優先株としてマーキング

●第2回土寄せの前が株選抜の好機

 6月下旬~7月初旬で第2回土寄せが近くなると、親茎のそばから子芋の茎が立ち上がっているのが目視できます。
 採種株の選定とは、子芋の出方が良好な株を見つけるわけですから、この時が好機と言えます。そして、採種に適さない株も判明する時期でもあります。
 ただし、この好機は短期間です。第2回土寄せが終わってしまってからでは、芽の出方が良く分からなくなってしまうので、遅れず行いましょう。(下の写真はギリセーフ)

 この時期には、採種する株だけでなく、採種してはいけない株にも印を付けておきましょう。印にはイボ竹等の長めの棒を使用し、子芋や孫芋に影響が無いよう株元から離れた所に刺しておきます。棒が短いと、茎葉が繁茂した時見つけ難くなるので、長いものを使いましょう。

 そして、収穫期の機械収獲前に、印の着いた株だけ「手掘り」を行います。もちろん、その作業は降霜前に行わなければいけません。

 良い株があるということは悪い株もあります。このような株はどうするのかというと、別のマーキングを行い、間違って採種しないようにしておきましょう。
 ただし、これは採種してはいけないというサインであり、出荷はしてもかまいません。なお、子芋の数が少なかったり、小さかったり、形が悪かったり、孫芋が付いていなかったりしするので、栽植密度を下げておくなど減収要因として想定しておきましょう。

 ここで迷うのは、悪くないけど良いとも言えない株のあつかいです。なにしろ、ほとんどの株がそんな株なのですから。では、どうすれば良いのかというと、マーキングせず普通に栽培・出荷しましょう。
 ただし、種芋が足らなさそうな時には予備の採種株として使用しますが、その種芋は予備とわかるよう貯蔵します。

●採種に好適な株の特徴

①~③を併せ持った株が採種に最適な株
 ①生育が早い株
 ②太い子茎が、5本以上立っている株
 ③太い子茎が、親茎から遠く(15cm以上)離れている株

●採種に不適な株の特徴

悪い株(1) 病気・生理障害が出ているので採種しない
 ①株を抜き取り廃棄する株
  ・モザイク葉(ウイルス病)が出た株は、栽培中に他の株への感染源にもなるので廃棄する
  ・株が大きくなってから感染した場合はモザイク症状が出ないため、廃棄をあきらめ無視する
 ②出荷できるが、採種しないよう印を付けておく株
  ・「疫病」感染株は、病原菌が付着土におり、種子消毒が必用となるので採種しない
  ・「軟腐病」感染株は、病原菌が芋内部に侵入しているので採種しない(秋期に判断)
  ・「葉枯れ」等の乾燥害がひどく出ると、孫芋に芽つぶれ症が発生しやすいので採種しない

悪い株(2) 悪い特性は遺伝するので採種しない
 ①目印を付け採種しない株(出荷は可能)
  ・親がとても大きくなっている株は「子芋が小さくなる」悪い特性を持つ
  ・子茎の数が少ない株は「子芋が少なくなる」悪い特性を持つ(下の写真は子芋はどこ?な株)
  ・親茎の近くから子茎が出ている株は「セミが多くなる」悪い特性を持つ(下の写真の2株目)

Kyoto Vegetables – Ebi‑imo (Taro): Key Cultivation Tips from Professional Farmers (July, Part 1 – Selecting Seed Stocks)

This article introduces the month‑by‑month cultivation management practices carried out by professional growers.
This first installment for July explains how to identify plants that are well‑suited for seed selection.