海老芋

京野菜【海老芋】プロ農家が教える栽培のポイント(9月)

 プロ農家が実践している時期ごとの栽培管理について紹介します。今回は、9月の作業ですが、すでに勝敗はついているので、栽培環境の激変を避けるだけです。(海老芋62)

 8月をうまく乗りきったなら、9月に入った段階で圃場は、子芋の茎葉が旺盛に茂っている「はず」です。9月は、この良い状況を継続させることに労力を使ってください。

 もし、生育に何か不都合が見つかったなら・・・今年の豊作はあきらめるしかないです。子芋の肥大停止まであと1.5~2ケ月なので、今から挽回するのは無理です。

大切なのは「肥効」と「葉」

 9月は「子芋の肩張り」と「こえびちゃん作り」を行う時期、言い換えると芋の肥大がラストスパートに入った時期となります。(ゴールは10月下旬~11月上旬)
 この2つに共通する大切なことは、「子芋の葉が順調に光合成を行う」ようにしてやることです。これが、9月の管理作業の目的となります。

①子芋の肩を張らせるには「子芋が根から吸った養分が、葉での光合成を経て、子芋にやってくる」ことが大切です。

②こえびちゃんは「子芋から発生する孫芋」と「その孫芋から発生するひ孫芋」です。しかし、たいていの孫芋は葉を開いていないため、うまく肥大させるには、「子芋が親芋の代わりを務める」必要があります。(活着後の親芋と子芋の関係と同じです)
 そのため、ここでも①と同様に「子芋の根から吸った養分が、葉での光合成を経て、子芋にやってくる」ことが大切なのです。子芋が良好に肥大すれば、孫芋の生育環境も良くなりますからね。

 ということで、9月に気をつける管理作業の目標は、「根から養分を吸わせること」と「光合成を順調に行わせること」の2つになります。
 具体的に言うと、「子芋への肥効を維持する⇒うね間潅水・緊急追肥」と「葉がダメージを受けないようにする⇒病害虫防除」です。

肥効の維持

●適宜のうね間潅水

 9月に入ると、さすがに8月のような連続猛暑は無くなるでしょう、多分。このような季節の変化を感じてしまうと、もう毎日のうね間潅水はいいかな稲刈り忙しいし、と思うかもしれません。
 万願寺とうがらしもそうなのですが、他に忙しい任務が与えられると、こっちの管理がおろそかになりがちです。長期栽培をする品目では、これが豊作との最後の分かれ道になるのです。

 しかし、うね間潅水の目的は、以前の記事に書いたとおり、乾燥障がい防止だけではありません。圃場を湿らせ続けることで、常時肥料を吸収できる状態を保ち、肥効を連続させることも大切な目的です。養分たっぷりの土壌でも、湿っていなければ根が吸えませんからね。

 そのため、9月に入っても、圃場の乾き具合によっては、うね間潅水を行う必要も出てきます。では、その判断はどうやってするかというと「8月と同様に通路が渇いてきたら」となります。

 うねの中は湿っていても、「肥料分がたっぷりあり、活気のある根がたっぷりある、通路近辺」が渇いていたらダメですからね。(必要以上に土寄せしないのは、この大陸棚的な根域ゾーンを残すためでもあります。なので土寄せ後にうね立て時のうね部分が残っていることがママあります)

●緊急の追肥

 うね間潅水で圃場を湿らせたとしても、そもそも「肥料分が抜けてしまっている」場合は、対策になっていません。
 昔からあふれやすい川の近くの圃場は、たくさん砂が混ざっていることが多く、「良好な排水=良好な肥料流出」により肥効が日利用溶出曲線の想定より低下しやすい欠点があります。

 下の写真のように、葉が黄色っぽくなってきていたら要注意です。ただし、株全体・圃場全体での判断が必要なことに注意してください。

 株の中で、下葉(株下部の小さい葉)だけが黄変していたなら、「8月に不都合があったが今は回復している」または「古い葉なので老化により黄変」なので問題はありません。
 しかし、新しい葉(株上部の大きい葉)が黄変していたら、間違いなく肥切れが起こっているでしょう。
 黄変した葉ではまともに光合成しませんし、そもそも光合成に必要な養分がやってきていません。下の写真のように、明らかな肥切れが圃場全体で発生してしまってからでは遅すぎます。

 こんな時は、緊急に追肥を行う必要があります。追肥に使用する肥料は「速効性」を第一に考えてください。「油粕」や「有機入り」や「緩効性」では間に合いません。
 たとえば、海老芋の施肥基準でも推奨されている「オール14」がお勧めです。資材庫に買い置きがありそうですからね。
 施用方法は8月と同じで「通路に散布してからうね間潅水」です。

葉のダメージ防止(病害虫防除)

●汚班病

 8月に肥切れを起こしていなければ、まず発生していません。これからも発生しないので、殺菌剤による予防防除は必要ありません。経費の無駄ですから、栽培暦に載っていたら削除を検討しましょう。

 上の写真のような葉が、株の中の大きな葉全部(下の写真)で、さらに圃場全体で発生していたら、事態は深刻です。
 株の中の1枚程度なら、何かの不都合かもしれませんが、株全体で圃場全体ということは「人為的な肥効低下が均一に起こっていた」ということです。
 こうなると、すでに全ての株の子芋の肥大を抑制してしまっているので、全ての子芋は期待より肩の張りが悪くなるでしょう。つまり「秀」から2ランク落ちの「長」ばかりになります。

 なお「こりゃマズい」と、この病気を殺菌剤で治療しようとするのは経費と労力の無駄です。今さら農薬かけて止まったとしても、もう芋は大きくなりませんから。
 いくら子芋が元気でも、根から吸った養分が直接子芋の肥大に使われるわけではなく、葉で光合成してからなので、もう子芋は肥大しません。

 では、できることはというと、地上部が早くお釈迦になるので、収穫開始が早まるため、収穫スケジュールの前倒しを行いましょう。
 早く出せば単価が高くなりがちなので、「長」でもそこそこの値が付くかもしれません。ただし、「秀」と強弁するのはやめておいた方が良いと思います。気持ちはわかりますが、市場や仲買さんから選別の緩い産地・農家のレッテルを張られかねませんから。

●疫病・軟腐病

 9月は「疫病」が再発する時期です。初発ということは無いでしょうから、初夏に発生した時の悪影響でしょう。
 特に「遅すぎる土寄せ」や「地際部からの摘葉」や「親茎切除」や「親株回り足鎮圧」など、地際部に不必要なダメージを与えてしまった場合に起きがちです。

 発生を認めたら、発生株だけに農薬株元散布を行いましょう。ただし「疫病」は芋を腐敗させないので、経費がかさむのが苦痛なら無視するのもアリです。

 また「疫病」が発生して、地際部がグチグチになると「軟腐病」を併発しやすくなります。「疫病」とは違い「軟腐病」は芋を腐敗させますから、農薬散布はした方が良いでしょう。出荷後のクレームはキツイですし、来年の種芋確保にも影響しますから。

●ハスモンヨトウ

 下の写真のように初発の内なら「白変葉」を犠牲にすれば「まとめてポイ」できますが、3齢幼虫以降になると圃場内に分散していきます。

 こうなると、「ハスモンヨトウ」は大軍勢なので、少数精鋭の「スズメガ」のように「手でつまんでポイ」することは不可能です。
 高いけれど良く効く農薬を緊急散布しましょう。なお、機能性展着剤を使用するのは良く調べてからにしましょう。海老芋で葉がお釈迦になったという事例もありますから。

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