海老芋

京野菜【海老芋】プロ農家が教える栽培のポイント(10月③収穫と調製)

 プロ農家が実践している時期ごとの栽培管理について紹介します。今回は、10月後半から始まる収穫作業と、収穫日に合わせて行う調製作業の具体的な手順を説明します。(海老芋69)

収獲について

 最近では、5aを超えたくらいから堀取機の導入を検討され始めていますから、慣行人力・慣行省力・シン省力の3種類について手順を紹介します。
 なお、具体的なシン省力化については、省力・軽労化技術を別記事で体系的に紹介します。

<慣行人力>
●昭和に行われていた一般的な方法。
①地上部がヘタリ過ぎる前に開始すると、茎を持てるので株を持ち上げやすい。
②管理機で通路を耕耘し、芋着生範囲以外のうねを崩す。
  子芋だけに気をつけて株に近寄り過ぎると、その外側に付く孫芋・ひ孫芋を痛めるので注意。
  片培土等を用いてうねをきれいな凸形に残すと、人力でも掘りやすくなる。
③土を削ったうね側面から、堀取フォークを斜めに刺し込み、テコの原理で株を持ち上げる。
   *参考:ごっそり掘り掘りフォーク(タキイネット通販)
  フォークに支点が付いている機具を使うと軽労化できる。
   *参考:ステンレス製NEW耕すべ~(タキイネット通販)
④子芋の下部を持ち、株の外側に向けて開くように倒して、ていねいに親芋から分離する。
  子芋は細長く湾曲しており、土を抱き込んだ形になっている。
⑤分離した子芋は、孫芋・ひ孫芋が付いたままコンテナに入れ、調製場所に搬入する。

<慣行省力①>
●昭和後期に京都府農業総合研究所で実証試験した方法。かなりの地域で現在も行われている。
①地上部が元気な時は、堀取機の邪魔になるので、刈払い機で切除しておく。
②トラクターに慣行の堀取機(振動式)を装着し、うねをまたぎながら走行する。
  この方式では、株をうね上に持ち上げられないので、③は必須となる。
  作業時の抵抗が大きくなるので、トラクターは20馬力以上が良い。
  深くまで差し込めるので、深く定植する謎技術で栽培した時はこれ一択。
③堀取フォークを斜めに刺し込み、テコの原理で株を持ち上げる。
  子芋の外側の付いている孫芋・ひ孫芋を傷つけないよう、余裕をもって差し込む。
④<慣行人力④⑤>と同様に、子芋を分割し、コンテナに入れて、調製場所に搬入する。

<慣行省力②>
●昭和後期に京都府農業総合研究所で検討した方法。落下時に傷つきやすいが現在でも見かける。
①トラクターにバケットを装着し、うね側面から差し込み、株をうねの土ごとすくい取る。
  フォークを装着し、持ち上げた時にある程度の土を落とす方法もある。
②すくった株をうね上に置く。
  少し上から落すと、土を落としたり芋をはずしたりできるが、子芋の尾が途中で折れやすい。
③<慣行人力④⑤>と同様に、子芋を分割し、コンテナに入れて、調製場所に搬入する。

<シン省力>
●京都府丹後地域から広まった省力軽労化体系のひとつ。導入コストがかかるので大面積向け。
①浅植え定植など最新の暦とセットものなので、慣行を称する謎技術には向かない。
 メーカーにもデータは無いので、普及センターによる講習を受けること。
②地上部が元気な時は、堀取機の邪魔になるので、刈払い機で切除しておく。
③トラクターに「コンベア式堀取機」を装着し、うねをまたぎながら走行する。
  掘り取った株は、うねの上に置かれるので、地中から出す必要はない。
  作業は1株が数秒と超短時間だが、その日の内に調整できる分の株だけを掘り取る。
  海老芋での使用方法は、速度と角度にコツが必要なので、事前に講習を受けておく。
  下の写真はコンベア式堀取機が通った後の、株がうね上に乗った状況。

④「親芋割り具」により親芋を2分割すると、株も付着土ごと2つに割れる。
  この器具は売っていないので、スコップ等をグラインダーで削って自作する。
⑤<慣行人力④⑤>と同様に、子芋を分割し、コンテナに入れて、調製場所に搬入する。
  コンテナを持ち上げる時に「アシストスーツ」を着用すると腰痛防止になる。
   電動式は流通業向けなので、農業用にはバネ・ゴム式の腰痛防止製品が良い。
  コンテナを圃場外に持ち出す時は「電動アシスト一輪車」に乗せれば不整地走行が楽になる。

収獲当日の調製について

 「調製」は、収穫当日と出荷前日の2回行います。収穫当日に実施する作業は大切ですが、時間が無い時は高単価の秀品だけでも行いましょう。(単価の安い芋は冷たくあしらっても、たいして儲けに影響しません)

①全ての芋を1個ずつ分離し、荒選別する。
 ●圃場から持ち帰った芋は、子芋に孫芋・ひ孫芋が付いたままなので、これを分離する。
 ●この時に荒選別を行っておくと、調整する芋の優先順位がはっきりする。
   分けるのは「秀」「丸」「こえびちゃん」「こえびちゃん以下(種芋)」で十分。
   「その他の子芋」は安いので、時間が空いたら実施し、できれば出荷以外の販路を検討する。
  *次の写真は荒選別の例です。
   上左:長っぽいもの、上中:丸っぽいもの、上右:孫芋・ひ孫芋、下:秀候補

②芋の根を取る
 ●根は芋の肌からきれいに外し、途中でちぎれて残ることがないよう丁寧に行う。
   収穫直後は根がしっかりしているのでズルケさせてから取りたくなるが、それは論外。
   なので、汚れたまま肥料袋に入れて貯蔵するのは論外。
 ●この作業は結構労力がかかるため、「根取り機」を共同使用するとよい。
   「こえびちゃん」の根取りは時間がかかるので、積極的に使用する。
   「秀」は傷みやすいので使用せず、収穫後すぐに手で取る。

③芋の土汚れを取る
 ●収獲したらなるべく早く芋の汚れを落としておく。
   土汚れを放置し乾いてしまうと、固着し落とし難くなる。
   早く落とすことが重要で、湿ったまま貯蔵してはいけないことに注意。
 ●④の「縞見せ」は次の手順なので、過度の磨きには注意。
   泥等の汚れは、軍手やタオルや柔らかい歯ブラシなどで、やさしくぬぐい取る。
 ●「こえびちゃん」は、チマチマ磨くため時間がかかりすぎるので、貯蔵中に実施する。
 ●水洗いは絶対しない。
   出荷後に芋が乾燥しやすく、芋表面の見栄えが悪くなる。
   袋内に露が浮くこともあり、見栄えが悪く、カビの原因にもなる。
   京都府の出荷指導では、水洗の有無は記述しなくてもよいので、クレームリスクが高い。

*芋の洗浄について
 近年、京都府では「こえびちゃん」の洗浄が解禁となりましたが、購入後のクレームリスクがあるため、積極的には行わないでください。(評価の高い丹後の産地では全ての芋で不可)
 実証データを見ると「洗浄後に冷蔵庫に入れて1週間は大丈夫」とのことですが、里芋を買ってきて冷蔵庫に入れますか?1週間以内に料理で使いきりますか?私気になります。
 しかも袋に「洗浄済み」の文字を入れることになっていないのは問題だと思いますよ。

④縞をきれいに見せる
 ●縞が際立つように、縞と縞の間の汚れをていねいに落とす。
   この部分を綺麗にすると、縞模様にメリハリが生まれる。
 ●縞模様に付いた汚れは、特に丁寧にぬぐう。
   強くぬぐうと、芋の縞模様が薄くなったり消えたりするため単価が下がる。

⑤子芋の葉柄切除芋
 ●首回り(葉柄の付け根)を整えるため、葉柄を2cm以上残して切除する。
   出荷規格より長く残すのは、箱詰め時に、さらに切り戻すため。

⑥出荷まで仮貯蔵
 ●ここまで作業を行ったら、出荷計画に併せて芋を貯蔵しておく。
 ●保存は「やや乾燥した状態」で行う。
   「口開け米袋」や「毛布くるみ」がよくある方法。
   肥料袋に入れ密封すると、過湿となり「茎がズルケてしまう」ため絶対にしない。

*密封過湿貯蔵について
 仮貯蔵で一番気をつけることは「露が浮くような貯蔵はしない」です。よくあるのが、肥料袋に入れてしまうことで、仮貯蔵中に残した茎がズルズルに腐ったり、芋表面がヌルっと傷んだりします。どう考えても謎と言うよりダメ技術です。(昨年にある産地で出会った名人さんが、ダメだと思うのに指導されて困っている、とぼやいておられました)

Kyoto Vegetables: Ebi-imo (Shrimp Taro)
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