万願寺とうがらし

京野菜【万願寺とうがらし】プロ農家が教える猛暑リスクの自己診断④天井被覆、細霧冷房

 今年も高い確率で猛暑が予想されているため高温対策は必須です。そこで「猛暑に対応した栽培環境・栽培管理ができているかどうか」を自己診断するためのポイントを数回に分けて紹介します。
 今回は、ハウス内に入る赤外線を大きく減少させる被覆資材と、最近はやってきている細霧冷房についてです。(万願寺とうがらし27)

赤外線を防ぐのは遮光率ではなく遮熱率

 京都府の万願寺とうがらしでは「30%遮光ダイオクールホワイト」被覆が推奨されていましたが、この資材では高温対策には不十分だという不満が出ていました。

 そこで、もっと遮光率の高い「45%遮光」の被覆資材に変更する方が増えているようです。でも、ちょっと待ってください。昔はもっと涼しかったから「30%遮光」で良かったのでしょうか。そんなことはありません。

 かつて「30%」とした理由は、「遮光して赤外線の入射量を減らす」被覆資材しかなかったので、万願寺とうがらしを徒長させず健全に生育させるには「30%遮光」が限界だったからです。

 ということは「45%遮光」してしまうとマズいですよね。限界値を上回ってしまいます。「遮光率」を高くするほど「徒長」するため、野菜ごとに上限が設定され、万願寺とうがらしでは30%なのです。

 さらに「遮光」資材には、もう一つ注意点があり、それは「光を遮る割合は、赤外線を遮る割合」なことです。ハウス内を暑くするのは、光ではなく赤外線ですから、できるだけ赤外線を通さない資材が良い資材となります。

 高温対策がまず大事なのだ、徒長より温度を避けることを優先するのだ、と45%遮光資材にしたとしても、赤外線は45%しかカットされません。徒長リスクより高温対策を取ったとしても、対策と呼べるほど涼しくはなりません。65%も通すのですから。

 では、どうすれば良いのかというと、「遮光」ではなく「遮熱」を行うことです。この「遮熱」こそが、高温対策の基本技術なのです。
 そして、昔とは違い、天井被覆資材がものすごく進化しており「遮光はあまりしないのに、赤外線を大きくカットする」資材ができています。こんな資材なら、徒長させずに高温対策を行えますよね。

*関連記事:【万願寺とうがらし】高温対策②遮光と遮熱は別物

強い日差しによるリスク

<基本技術>
◎夏期は、ハウスの天井を「遮熱資材」により被覆する。

 ・被覆資材は「透光率が高く、遮熱率も高い」ものを用いる。
  ⇒徒長や過繁茂の心配がなく、ハウス内の温度を大きく下げることができる。
*参考:可視光線透過型高温対策シート「ワリフ明涼20」(ENEOSテクノマテリアル株式会社)
 ・梅雨明けから被覆を開始し、9月の残暑が終われば終了する。
  ⇒秋も被覆すると、過繁茂になりやすい。
*関連記事:【万願寺とうがらし】高温対策②遮光と遮熱は別物

<リスクの原因>
●「遮光率45%」の資材で被覆している。

 ・赤外線を55%も「通している」ので、あまり温度が下がらない。
  ⇒中途半端な高温対策なので、収益性は向上しにくい。
  ⇒日中の高温蓄積があまり改善されないので、夜間にまで高温状態が継続する。
  ⇒加えて「強剪定」をしていると、果面温度が高温になり、日焼け果が増加する。
 ・遮光率が上限(限界値は30%)を超えているので、徒長や過繁茂になりやすい。
  ⇒徒長すると、着果位置が株上部になるので、高温障害が出やすくなる。
   ⇒過繁茂で日焼け果は減るが、曲がり果等の出荷外品が急増する。
  ⇒上部が過繁茂になると、ハダニなどの巣になりやすい。
 ・秋も被覆を続けると、上部の過繁茂が一気に進む。
  ⇒まともな果実が収穫できなくなり、長期取りが破綻する。
<対策>
 ・買ってしまったものはしょうがないので、「妻面換気」をできる限り上方まで行う。

 ・株上部の生産力は無いものとし、目の高さまで切り戻す。(主枝を減らす切り戻しは厳禁)
 ・遮光率が限界以上なので、9月の残暑が終わったら、すぐに被覆を除去する。

<リスクの原因>
●「空動扇」を付けているので被覆できない。

 ・低価格の空動扇は、風が吹かないと回らず、排気効果が現れない。
  ⇒このタイプは、高温対策より強風対策で有効なので、間違って導入した。
 ・天井の資材が遮熱効果のある「POクール」なら、被覆しなくても、なんとか乗り切れる。
  ⇒ただし「POクール」は、内側放熱で夜温を高めることもある。
*参考:製品情報「空動扇solar」(株式会社クボタ)
*参考:農業用遮熱POフィルム「POクール」が農林水産省の 「みどりの食料システム戦略」に基づく基盤確立事業実施計画に認定されました(オカモト株式会社)
<対策>
 ・太陽光発電パネル付き空動扇なら、風が吹いていなくても回って排気効果がある。
 ・風がなくても動くからと空動扇を過信せず、「妻面換気」は必ず実施する。

細霧冷房から来るリスク

 スプリンクラー等による散水と違い、「細霧冷房」から出てくる水は、その名のとおり細かな霧ですから、万願寺とうがらしの葉がべたつきにくくなっています。が、だからといって出てくるのは水に変わりありません。

 過剰な作動時間や、ハウス内の換気が不十分な場合は、ハウス内を過湿状態にしてしまいます。そうなると、葉の蒸散が抑えられ、根からの水分移動も抑えられ、水分と一緒に移動するカルシウムの動きも抑えられ、「尻腐れ症」が発生しやすくなります。

 「細霧冷房」の効果は「気化熱で温度を下げる」ことで発生します。「葉を濡らして株の温度を下げる」からではありません。

<基本技術>
◎「細霧冷房」は、秒単位で作動させる。
 ・濡らすのではなく、ミストの気化熱で冷やす。
  ⇒1回の作動時間は超短時間とし、湿度を上げ過ぎない量の霧で冷やす。
   ⇒秒単位の噴霧を頻繁に行う。
    超短時間の噴霧を行い気温を下げ、水蒸気が抜けた頃に再度噴霧、これをくり返す。
    必要なら夜間も実施する。
◎「気化熱」により気温を下げるので、良好なハウスの換気に努める。
 ・側面換気だけではハウスの下半分の換気に留まるので、必ず妻面換気も行う。
  ⇒妻面のネットは、できる限り上部まで張る。

*関連記事:【万願寺とうがらし】高温対策⑤細霧冷房は秒単位でコントロール

<リスクの原因>
●細霧冷房の稼働時間を分単位にしている。

 ・「分」では長すぎて、ハウス内が過湿になりやすい。
<対策>
 ・「秒」単位に変更し、頻繁に稼働する。

●ミストを充満させるため、稼働時にはハウスを締めきっている。
 ・葉を濡らすと勘違いしている。
  ⇒ハウス内が過湿になり、ミストサウナ状態になる。
   ⇒ハウス内が高温になっても「蒸し込み」状態なので、葉は焼けないが・・・
    換気を始めた途端、全ての株の「生長点」がとんでもないことになる。
<対策>
 ・締め切らず、熱を持った水蒸気が、ハウスからすぐ出ていくようにする。

●1日に数回稼働している。
 ・数回では、作動間隔が開きすぎていて、対策になっていない。
  ⇒高温障害は止まらない。
<対策>
 ・頻繁に秒単位で稼働させる。

●ハウス上部にチューブを張って潅水している。
 ・停止時に、チューブのたわみ部から水滴がしたたり落ちる。
  ⇒したたった場所が、過湿の温床になりやすい。
 ・チューブは、膨らんでからミストを出すので、短時間のコントロールがしにくい。
  ⇒販売した会社が、現地での実績のともなったマニュアルを提供してくれますか?
<対策>
 ・パイプなどの直管を添えて、チューブがたわまないようにする。
 ・チューブからミストが出る時間などを観察し、稼働間隔などを自前で考える。

●スプリンクラーが細霧冷房専用ではない。
 ・出る水の量が多すぎる。
  ⇒乾くまでの時間がかかり過ぎるので、高温が緩和されだした時に過湿になりやすい。
<対策>
 ・出てくる水の量を少なくする。
 ・できる限りハウスから水蒸気が出ていくようにする。

●秒単位でコントロールできる電磁弁ではない。
 ・出る水の量が多すぎる。
  ⇒乾くまでの時間がかかり過ぎるので、ハウス内がすごく湿気る。
<対策>
 ・電磁弁を買い替える。
 ・今年度の稼働はあきらめ、天井の遮熱被覆に変更する。

Kyoto Vegetables – Manganji Togarashi: Professional Growers’ Self‑Check for Extreme Heat Risks (4) Ceiling Covering and Mist Cooling

Because extremely hot conditions are again highly likely this year, implementing effective high‑temperature countermeasures is essential.
In this series, we introduce several key points—divided across multiple installments—to help you self‑diagnose whether your cultivation environment and management practices are adequately adapted for extreme heat.
This installment covers covering materials that greatly reduce the amount of infrared radiation entering the greenhouse, as well as the fine‑mist cooling systems that have become increasingly popular in recent years.