万願寺とうがらし

京野菜【万願寺とうがらし】プロ農家が教える猛暑リスクの自己診断①うねの形、潅水方法、マルチ被覆

 今年も高い確率で猛暑が予想されているため高温対策は必須です。そこで「猛暑に対応した栽培環境・栽培管理ができているかどうか」を自己診断するためのポイントを数回に分けて紹介します。今回は、小さいうねの持つリスク等についてです。(万願寺とうがらし24)

 「万願寺とうがらし」は出荷を前進化するためハウス栽培が主流となっており、高温対策は必須になっています。
 しかし、もう栽培は始まっていますから「~しておけばよかったのに」というアドバイスは意味がありません。そこで「やってしまったこと」はあきらめ、「どんなリスクが高まっているか」を知ることでリスクを下げる努力をしましょう。
 なお、各項目に付いている<対策>は臨時の提案と思っていただき、次作からは基本技術を励行しましょう。

うねの大きさ・形状から来るリスク

<基本技術>
◎うねの形状は「うね幅1.8m以上、かまぼこ型」が基本。
 ・うねが大きいほど根量が増える。
  ⇒吸水・吸肥の量・効率が良くなる。
   ⇒最小限の潅水量で管理できるので、ハウス内が過湿にならない。
    ⇒液肥入り適量多回数潅水により、肥切れを防ぎ、長期取りの収量が安定する。
    ⇒過乾より過湿が尻腐れ果を多発させるので、適量潅水は効果的。
 ・「万願寺とうがらし」の根は、うね表面近くを広がる。
  ⇒かまぼこ型のうねは、表面積を多くできるだけでなく、株元の排水性が良くなる。
   ⇒「平うね」や「台形うね」より根量が多くなる。
   ⇒「根腐病」「白絹病」の発病リスクを低減できる。
 ・うね幅が広いと、V字整枝で斜め誘引を長く行える。
  ⇒主枝の徒長をなるべく抑えることができ、着果エリアを低くできる。
   ⇒着果エリアが低いと、高温でもハウス上部よりましになり、通気も良くなる。

<リスクの原因>
●うね幅が小さいと、立ち気味の整枝となり、着果エリアが高い位置になる。
 ・主枝の徒長部位が長くなり、節数が減少する。
  ⇒側枝が減少するので、着果数も減少する。
 ・主枝が梅雨頃に誘引上端まで達してしまう。
  ⇒着果エリアが高くなり、高温リスクが高まるので、曲がり果や尻ぐされ果が増加する。
 <対策>
 ・着果エリアをなるべく下げ、主枝の節数を増やすため、ミニトマトのような斜め誘引。


●高うねでも台形だと、かまぼこ型に比べ、うね上面が過湿になりやすい。
 ・うねの過湿は根痛みが起きやすく、梅雨明けに立枯れが起きやすい。
 <対策>
 ・株近くが過湿状態なら、マルチをめくり少し乾かすことも必要。

潅水方法から来るリスク

<基本技術>
◎潅水チューブはうねの肩に設置し、活着まではドーナツ手潅水を行う。
 ・長期取りだけでなく、早期に収穫量を増やすこことも増収への道。
  ⇒活着後は、うねの両端で潅水・追肥を行って根を誘引し、早期の根域拡大を促す。
◎活着後の潅水は、適量他回数とし、定期的に液肥を混入し追肥も行う。
 ・液肥による追肥は、最小限の潅水量で高い肥効をすぐ出せる。
  ⇒ハウス内を過湿にしないので、病害や生理障害のリスクを高めない。
  ⇒液肥は速効性なので、肥効が途切れず、肥切れの心配がない。
◎使用済の潅水チューブは、設置前に中を清掃し、穴やフィルターの詰まりを解消しておく。

<リスクの原因>
●マルチに開けた植穴が小さく、ドーナツ手潅水をしていない。
 ・活着遅延している可能性が高い。
  ⇒盛夏期に耐える根量が不足し、様々な高温障害リスクが高まる。
  ⇒梅雨頃から高まる着果増を支える肥効が供給できず、生育・着花停止などのリスクが高まる。
<対策>
 ・収穫量増加直後から摘果を厳しく行い、着果ストレスを軽減する。

●固形肥料による追肥は、溶かさないと肥効が出ないので、潅水量が多くなりがち。
 ・特に梅雨の時期はハウス内の湿度が高いのに、肥料を溶かすため潅水量を増やしがちになる。
  ⇒うねが過湿になるだけでなく、通路が湛水しやすくなり、ハウス内の湿度も高くなる。
   ⇒根痛みに加え、高湿による病害・生理障害のリスクが高まる。
   ⇒徒長により節間が広がり、早期に誘引限界に達してしまい、側枝数が減り減収につながる。
 <対策>
 ・梅雨の時期だけでも、うすい液肥を潅水チューブで追肥する。

 ・しおれた株近くのマルチをめくり、液肥を散布する。

●株近くに潅水チューブを設置していると、梅雨明けまでの期間に株元が過湿になりやすい。
 ・過湿による病害リスクが高まる。
  ⇒特に「根腐病」による根の褐変が梅雨明けまで続くと、蒸散量急増で突然立枯れが発生する。
   立枯れは「青枯病」より「根腐病」の方が確率が高い。(茎を切っても白い汁は出ない)
 ・活着不良になりやすく、梅雨明けからの猛暑に耐える根域が形成されない。
 <対策>
 ・潅水チューブをうねの端に移動し、うねの端まで根を誘導する。


●潅水チューブの穴が詰まっていても、栽培中はマルチで被覆されているのでで発見が遅れる。
 ・穴が詰まっていると、その近くの株が蒸散量が増える梅雨明けにしおれてしまう。
  ⇒地上部と根部のボリュームが悪化し、猛暑には耐えられず、青枯れしてしまう。
   ⇒潅水量を増やし周りから湿りを増やそうとすると、通路が湛水してハウス内が過湿になる。
 <対策>
 ・マルチをめくって問題場所を特定し、掃除やバイパス路などの対策を行う。


●潅水路をループ状にしていないと、水圧の勾配が発生する。
 ・ハウス奥の潅水量が不足し、乾燥害や肥効不足が発生する。
  ⇒不足解消のため潅水時間を延ばすと、入り口側の通路が湛水してしまう。
   ⇒ハウス内が過湿になり、徒長が助長されたり、尻腐れ果が発生しやすくなる。

<対策>
 ・潅水チューブの終点を連結し、ループ状態にする。

マルチ被覆から来るリスク

<基本技術>
◎マルチの定植開口部を大きく開け、定植後はドーナツ状に土を乗せてふさぐ。

 ・開口部が大きいことで「少し離れた所潅水」ができる。
  ⇒株元の湿害を防ぐだけでなく、根鉢から新根が飛び出しやすいので活着促進につながる。
 ・開口部をふさぐことで、マルチ内にたまった「高温空気の株元噴出」を防げる。
  ⇒株元に高温ストレスが起きない。
◎マルチ被覆は、天井の遮熱資材被覆とセットで計画する。
 ・黒マルチは初期生育時の保温によいが、夏期には地温を高めすぎるため。
  ⇒地上部が繁茂し、うねが日陰になるまでの地温上昇を防ぐため、遮熱被覆は早期から実施。

<リスクの原因>
●マルチの定植開口部をふさいでいない。
 ・マルチ内で熱された高温空気の吹き出し口になる。
  ⇒株元の高温ストレス・火傷は、「白絹病」の発生を著しく助長する。
   ⇒「白絹病」は、登録農薬はあるものの、治癒しても地際部のダメージは深刻。

 <対策>
 ・マルチが膨らまないよう、マルチの所々に土のうを乗せる。


●天井の遮熱資材被覆を行わない。
 ・梅雨入り後の繁茂拡大までに、黒マルチによる地温上昇が防げない。
  ⇒地上部近くに根域があるため、根の障害による様々なリスクが高まる。
 <対策>
 ・マルチを株元から半分めくり、潅水チューブの噴水化を抑えつつ地温を下げる。

Kyoto Vegetables – Manganji Togarashi: A Professional Grower’s Self‑Check Guide for Extreme Heat Risks (1)
Ridge Shape, Irrigation Methods, and Mulch Covering

With another extremely hot summer expected this year, implementing high‑temperature countermeasures is essential.
In this series, we introduce key points—divided across several installments—for self‑diagnosing whether your cultivation environment and management practices are adequately prepared for extreme heat.
In this installment, we focus on the risks associated with low or shallow ridges.