海老芋

京野菜【海老芋】プロ農家が教える栽培のポイント(11月①種芋の採種)

 プロ農家が実践している時期ごとの栽培管理について紹介します。今回は、次作に向けて種芋を自家採種する場合の手順や注意点を説明します。(海老芋72)

栽培中にマーキングした良い株から採種

 「海老芋」の増収や秀品率向上を図るには、収穫と同時に行う、良い種芋の確保が必用です。この「良い種芋」とは、「貯蔵中に傷まない」「育苗に適している」「次作に病気を持ち込まない」ような「孫芋とひ孫芋」のことです。

 しかし、もう一つ大切なことは「良い性質」を持っている種芋を残すことです。そして、これは生育状況により判断するため、栽培中に行う必要があります。

 栽培暦を励行している方なら、良い種芋を得るための作業は「栽培中」にも行っているはずです。そして、採種に「良い株と悪い株」には、それぞれマーキングを行っていると思います。

 このように、栽培中に株を調査し「系統選抜」を行う理由は、最初に提供された種芋が「雑ぱく」な性質を持っていることが多いからです。「雑ぱく」とは、性質が固定されておらず、代を重ねるごとに「性質がばらけてくる」状態のことです。
 そのため、産地が適当に自家採種を行っていると、次第に海老芋づくりに不利な性質(子芋が親芋に密着する等)や海老芋らしくない性質(茎が青い等)を現す株が出てきてしまいます。

 京都府以外では「海老芋作りに適した唐の芋の在来系統の優良株」から採種され配布したものを使用していると思います。
 その「在来系統」がしっかり系統選抜されていたものであれば、良い性質が固定されており、変な性質が出てくるリスクは少ないと思います。

 しかし、全国あちこちの栽培写真をみてみると、どうも「固定されていない」商品を使用しているのではないかと思うこともあります。
 圃場の中で株の様子がマチマチと感じた時は、自分で系統選抜してみてください。とくに、赤茎と青茎が混じっている場合は、赤茎に一本化すべきです。

*参考記事:最近いい加減になってきた赤茎青茎問題・れんげほっかい問題は解決済

 では、京都府のブランド産地なら「京都うびいも2号」を使用しているので、そんなことがないかというと「あれれ」と感じる圃場を見ることがあります。
 さすがに京都府なので「青茎」はありませんが、子茎の出方に良し悪しが見られるのです。子茎の本数が少なかったり、親茎の近くから出ていたり、などと収量・秀品率に影響のある性質が悪い株がちらほら混ざっています。バイオテクノロジーで作られた品種なのに、なぜバラついているのでしょうか。

 その原因は、元の「原原種」や「原種」や「原種を増殖して配布された種芋」にあるのではなく、その配布された種芋から自家採種する段階で「定期的に系統選抜していない」ことだと思いました。

 「京都えびいも2号」は、「京都えびいも1号」から一気に品種転換を図るため、苗を短期間で大量増殖する必要がありました。その培養過程で、本来「苗状原基」経由で増殖するのですが、「カルス」を経由させた大量増殖が行われました。(こちらの増殖法はダメなのではなく、むしろ一般的ですが)
 この時の「再分化」の過程で「悪く変異してしまった苗」が混じることがあったのです。つまり、配布した種芋は、良い性質だけで完全に固定されていなかったのです。

 そのため、自家採種を行う時は、栽培期間中に「変な性質を持った株が出てきていないか」チェックし、良い性質の株だけから採種する必要があります。これが「系統選抜」と呼ばれる作業です。
 「1号」は固定されて品種登録されましたが、「2号」は品種登録されなかった理由かもしれません。

 まあとにかく、栽培期間中に採種する株を選んでおくことは、京都府のブランド出荷農家でも必要というわけです。

*参考記事:自家採種でも系統選抜・優良採種株をマーキング

 上記の参考リンク記事に書いた要点を再掲しておきます。

●採種に良い株とは
  ・生育が早い株
  ・太い子茎が、5本以上立っている株
  ・太い子茎が、親茎から遠く(15cm以上)離れている株

●採種するとダメな株とは
 ・病気・生理障害が出ている株
   ・モザイク葉(ウイルス病)が出た株は廃棄済みのはず
   ・疫病や軟腐病に感染した株は、農薬散布していたとしても選ばない
   ・乾燥害により芋に芽つぶれ症が出ていそうな株は選ばない
 ・悪い特性が見られる株
   ・親がとても大きくなる株は、子芋が小さくなりやすい
   ・子茎の数が少ない株は、子芋数が少なくなりやすい
   ・親茎近くから子茎が出ている株は、セミが多くなりやすい

出荷作業中にも種芋を確保する

 出荷が始まると、わかっていても、ついつい忘れてしまうのが「種芋の確保」です。そのため、「出荷しなかった芋」の中から、良さそうな芋を選んで種芋に回す、ということがよくあります。
 いや、それを当たり前と思っている農家が増えているようにも感じます。これは絶対ダメです。

 このようなやり方では、育苗を開始してから「今年の苗は良くないなあ」という事態になってしまいます。それはそうです、ゴミの中からひろった芋が良いわけありません。
 そんなことにならないよう、「種芋の確保」は「こえびちゃんの出荷中に調整作業と組み合わせて行う」ことをお勧めします。

 出荷の時期は、芋磨きや等級分けなど手間のかかる作業を行うため、種芋の選別作業は単純化して省力化を進めましょう。

 しかし単純化の方法は簡単、「こえびちゃんの3Sと4Sを種芋にする」です。「こえびちゃんは売り物じゃないか」と思う方もいると思いますが、「こえびちゃん」の「3Sは単価が低い」ですし「4Sはブランドではない」ので、種芋に回してもそんなに売上に影響しません。

 では、種芋に回すと良い「こえびちゃん」とは、どんなものでしょうか。次に、その特徴をまとめておきます。各項目は単独ではなく、「全てを満たす」ことが大切です。

●「子芋」ではなく「孫芋」又は「ひ孫芋」
 ・形が「丸い芋」つまり「こえびちゃん」規格を取り分ける
 ・「セミ」規格でも「おしくらまんじゅう型のセミ」は「丸い芋」なので種芋にできる

●傷の無い芋
 ・収穫時の傷がない
 ・付着している土は、塊でなければ掃除しなくてよい
 ・「根取り機」は激しく傷がつくので通してはいけない
 ・洗浄すると傷が付く(特に頂芽)だけでなく、貯蔵性が低下する

●「頂芽」がわかる芋
 ・芽がしっかりしていると、催芽が順調にいくので、指で触って確かめる
 ・芽が痛んでいると、側芽が複数発生しやすい
 ・「芽つぶれ症」の芋は、側芽発生が確実なので使用しない
  この症状は芽が無くなるため、子芋では発生しない(発生していれば地上部は無いはず)
 ・大きな孫芋で、すでに頂芽が動いているものは使用しない
 ・下の写真は、1枚目が「芽がしっかりした孫芋」
  2枚目が「芽がつぶれた孫芋」で、わき芽がすでに発生している

●重さが20g~40gの芋
 ・「こえびちゃん」規格なら「20~30g(4S)」と「30g~40g(3S)」
 ・最も良いのは「4S」
 ・20g未満の芋も良い種芋になる可能性が高いので、足りない時は10g~20gを使用する
  育苗時に必要なのは根なので、小さくても芽がしっかりしていて頂芽基部が膨らめばよい
 ・40g以上は側芽が出やすいので使用せず、上記の小さい芋を選ぶ

 準備する種芋の量は、次作の面積から必要な種芋数を割り出し、少し余裕を見て確保します。必要な種芋数は、10a当たり1200個が目安となります。これは、栽植密度を1000株/10a、ロスを20%としたからです。

*参考記事:種芋の貯蔵①良い芋の条件とは
*参考記事:種芋の貯蔵②選んではいけない悪い芋とは(その1)
*参考記事:種芋の貯蔵②選んではいけない悪い芋とは(その2)
*参考記事:種芋の貯蔵②選んではいけない悪い芋とは(その3)
*参考記事:種芋の貯蔵②選んではいけない悪い芋とは(その4)
*参考記事:種芋の貯蔵②選んではいけない悪い芋とは(その5)

*記事をもっと読みたい方は⇒https://qyasai.com/summary-article/

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