海老芋

京野菜【海老芋】プロ農家が教える栽培のポイント(8月⑤親茎切除は必要なし)

 プロ農家が実践している時期ごとの栽培管理について紹介します。今回は、かつて一般的に行われていた管理技術「親茎切除」の効果についてです。(海老芋60)

 2枚⇒0枚とする「摘葉」作業を開始すると、親株には葉がないわけですから光合成ができずにどんどん衰弱していき、9月に入ると地際部まで枯れた状態となります。つまり、親茎を切除しなくても勝手に枯れてなくなってしまいます。

 下の写真は、0枚で管理し続けた親茎の状態です。「摘葉」で親芋の力が衰え、さらに株元が子茎に覆われたため、新葉が生長し難くなっています。
 株元でゴチャっと枯れているものは、葉を切除され続けた親茎のなれの果てですから、見てのとおり「親茎切除」は必要なくなります。

 自動的に「親茎を株元から切った」状態となり「無理して切らなくてもよい=摘葉すれば親茎切除不要」となるので、現在まともな産地、大事なので繰り返し言います、まともな産地で実施されている「省力・軽労化技術」に昇格しています。

 親茎を株元から切らなくても良く、両手いっぱいに抱えて圃場外に持ち出す必要もないので、とても楽ちんになりますよね。
 「海老芋はもうかるけれど労力が大変だ」とかいう、最近よく聞くしたり顔意見の一因です。このような謎技術の積み重ねが、京都府のダメ産地は1000時間/10aとなり最初のご意見につながるわけです。(伝統栽培に省力・軽労化を組み合わせた産地には300時間/10aの農家もいますよ)

「親茎切除」とは

 ところが、「摘葉」の0枚管理について勘違いし、「親茎をスパッと切ってしまった方がもっと良い」と考える方がいるようです。これが謎技術に降格した「親茎切除」です。

 昔は切除している農家も多かったので、全くの間違いとは言えないのですが、3つの理由から現在では「行わないよう指導」されているはずです。その3つとは・・・

①「摘葉」を行っていれば、切除してもしなくても収量・品質は同じ。

 昭和の頃に、研究機関で色々試験されており、その結果は「切らなくても良い」でした。これらの試験では「摘葉後の茎を親の株元にクルクル巻き付ける」「親茎を切って空間を作り子茎を外側へ踏み倒す」などトンデモなものも真面目に検討されてましたが、どれも良い効果は得られませんでした。

②個人の感想レベルの技術なので行ってもかまわないが、盛夏期の重労働は危険

 「かがみこんで株元を鎌で切ることをくり返し、数株分の1m以上ある茎葉を抱えて、うね間潅水で軟弱になった通路を歩き、圃場外に持ち出す」という作業は、書いていてもクラクラする作業です。熱中症の危険さを何だと思っているのでしょう。

③親茎を切ってしまうことを「0枚摘葉」と勘違いし、親の茎葉が再生しても放任してしまう。

 親芋の生育を止めるためには「親芋の茎葉が出てこないように管理し、子芋の茎葉で株の茂りを置き換える」ことが大切です。親茎を切ることで「任務完了」と勘違いしている農家を、納得・説得するのはとても疲れるのでやりません。

「切除後土乗せ」について

 さらに謎技術を付け加えると、指導者によっては追い打ちをかけるように推奨してくるのが「親茎切除した後は上から土を10cm以上たっぷり乗せ、さらに足で踏んでおくとセミにならない技術」ですが、これも必要ないです。
 こんなことを汗をブルブルかいて行っても、売り先がほとんどない親芋を大きくするだけなので何の得にもなりません。

 これを行うと親芋はどう変化するのかというと、前記の「親芋切除後は茎葉が再生しても放置」とセットのことが多いので、9月の残暑で親芋が縦方向に伸び、下の写真のように大きな縦長親芋になります。
 なお、9月が思ったより早く涼しくなると、縦に伸びはするけど横には太らないので、ユニコーン親芋になり、反省会の話題提供になります。

 セミにならないとかいうのは、これを行う農家は「芽ぞろえ」も行うので「遅くに発生するセミ予備軍を付け根から切除している」からでしょう。知らんけど。

 なお、「9月の第4回土寄せは切除した親茎に被せるように行うから切除は必要」だという方もいますが、4回もしないというか、そもそもそんなに遅く土寄せなんかしません。
 そんな指導は根本から間違っています。(この謎技術が生まれた経緯は、説明すると長くなるのでしません)

「軟腐病」リスクも高まる

 嫌なことをもう一つ加えると、茎を地際部で切除してしまうと、「外葉かき」のところでも書きましたが、土壌病害に感染しやすくなります。ただでさえ地際部は感染しやすい場所ですから。

 暑い夏ならすぐ乾くので、「赤ズイキ」が食べられるので切るのを止めはしませんが、秋になってからは絶対やめましょう。
 秋は「疫病」の2回目の発生時期なので、感染すると株がズルケて生育が停止し、9月後半以降の芋肥大も止まってしまいます。

 最悪なのは「疫病にかかってズルけた地際部から軟腐病を併発」してしまうことです。これはとてもとてもマズいです。
 「疫病」は芋を腐らせないですが、「軟腐病」は芋にも感染するため、収穫後なのに減収や出荷後のクレームに留まらず、種芋の腐敗にも連鎖していくからです。
 来年の種芋が足りなくなれば、種芋や苗の購入により栽培前から経費増を確定してしまいます。

*お詫び:土寄せ方法については、これまで具体的に書かないできました。
     様々な事情ですが、読んでもらっても?が多いと思います。
     対面でしか説明しておりません。申し訳ないです。

Kyoto Vegetable Ebi-imo — Professional Growers’ Cultivation Tips
August (⑤ No Need to Remove the Parent Stem)

We will introduce the seasonal cultivation management practices used by professional farmers. This time, we look at the effects of ‘main stem removal’ (primary shoot pruning), a management technique that was once widely practiced.